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青い月の下で  作者: 由起
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スレシュ国の囚われ人③

囚われ人のナオミだが、職員と同じように休みはある。休みの日は1日あり、その前日は14時で終わる。家に帰り、家族とお茶を楽しむところから休みが始まるのだ。


宮殿の職員ということで、シフトを組んで一定数の職員が常に居る。


14時に上がったナオミは自室へ戻る前に洗濯室へ自分の洗濯物を受け取りに行った。


実はナオミは自分の洗濯物を洗濯しない。

スレシュ国では『泉』の水に汚れ物を浸けておくだけで綺麗になる。水分を絞って干すだけなのだが、みんな濡れたまま吊るして干してしまう。


宮殿では洗濯係がいて、浸けておいて干すという仕事をするものがいる。泉の水は井戸水のように水温が一定なので、濡れた洗濯物を干す時に少し重いものの、辛い仕事ではない。


畳むまではしてくれないので、ナオミは自室で洗濯物を畳んで仕舞い込んだ。


(毎回お休みの時は暇だなぁ。今日と明日は何しよう…)


お出かけ出来る訳ではない。

各自の部屋にはキッチンが無いので、キッチンで何か作ることも出来ない。

手作りの服や小物を作るにも、材料を買いに行くことも出来ない。

そもそもお給料が出るわけではないためにお金もない。

そう、自由もお金もないのだ。


(部屋に居てもなんだし…お散歩でもしようかな)


休みでも晩御飯は職員用の食堂でとる。

通勤?は便利だけれども、公私の区別が付きにくいので、職員には部屋をあてがって貰わず、あえて家から通っている者もいる。


ナオミはキャスケットのような帽子を取りだし、髪をきっちりと仕舞い込むと、職員宿舎のそばの庭へ向かった。


「ナオミ!丁度良かったわ!」


宿舎から出ようとした時にナオミは隣の部屋のキャンベルに声をかけられた。


「え?」


キャンベルはナオミとは休みが違うので、普段宿舎で会うことは無い。


「キャンベルさん、どうしたんですか?」

「ナオミ、ちょっと王子のところへ行って欲しいの。王子がナオミをお呼びなのよ」


それはお休みなど取っているところではない、この国では。


「じゃあすぐに制服に着替えて来ますね!」


慌てて自室へ戻ろうとするナオミの腕をキャンベルはつかまえた。


「お急ぎだからそのままでいいわ」

「え、でも…」

「王子がそう仰っているの。すぐ向かって」

「…わかりました」


ナオミは小走りで王子のお住まいになる東棟へ向かった。


「ナオミ、参りました。このような格好で失礼致します」


帽子をとり、王子の側用人の控室に入る。控室というよりはドアもないので広間のようなところだけれど。そもそも東棟自体が王子の居室だ。


「ナオミ、すぐ王子のお部屋に」

「はい」


王子のおられる部屋のドアをノックする。


「ナオミでございます。お呼びとお伺い致しました」

「入れ」


低めの声がし、ナオミは出来るだけ丁寧に音を立てないように、でも素早くドアを開けた。


「ナオミ、そこへ座れ」


机で執務をしていた王子がソファーへ座るように促す。


「はい。失礼致します」


王子はゆっくり筆を置くとナオミを見た。


「昨夜のことだが」

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