おしろい花④
ナオミは毎日悩んでいた。花嫁支度に妃教育…と多忙ながらも悩みが尽きることはなかった。
王妃はナオミの様子がおかしいことに気付いた。そしてそれが自分のせいであることにも気付いた。
幸せなはずの花嫁支度の時。
なのに何故自分のことで悩ませている?
自分は娘に何をした?
王位継承者の教育が出来ないという自分の事情で、母が恋しい年頃の幼子を手放したのはだれ?
王妃は36にもなって何をしているのかとふと我に返った。
「トマス…」
王妃は王の部屋へ行った。
「今度の満月の時に1つお願いがあります」
翻って王子の部屋。
ナオミは王子と式典の打ち合わせをしていた。
でも式典のことに集中出来ないナオミ。
「ナオミ?」
「あ…申し訳ございません、王子!」
「また…義母上のことか?」
「申し訳ございません…つい考えてしまって…」
王子は申し訳なさそうにうなだれるナオミの肩を抱き締めた。そして封印していたことをついにナオミに言った。
「もし義母上が元の世界に帰りたいと仰ったら…それはそれで尊重すべきだと私は思うが」
ナオミはハッとした。
そうだ、そうかもしれない。
自分はこの世界で生まれ育っているが、母は僅か16歳の時に一人で来たのだ。
言葉も生活習慣も全てが異なる世界に。
家族に別れを言えるならまだいい。
でも別れを言えぬまま家族と別れたのだ。
かつての私のように。
でも私は式典に兄と妹を呼んで会うことが出来る。
母は家族に会うことが不可能なのだ。
「そうですね、王子。私…自分のことしか考えていませんでした。ありがとうございます、王子」
ナオミは吹っ切れた顔をし、王子が大好きな笑顔を向けた。
次、最終話です。




