母との再会②
ナオミは王妃を真っ直ぐに見て言い切った。
「私は本当の王族とはどういうものか、を王子に見せていただきました。育ち・教育もあるでしょうが、私はそうしたものを持っておりません。現皇太子が跡を継がれるのが一番だと思います」
「どうすればいいのかしら…」
王妃は苦悩した。それを見てナオミはためらいながらもぽつりと言った。
「…王子が私と一緒になろうと仰ってくださいました」
王妃は驚いて隣にいるナオミをじっと見つめた。
「王子の妃として王子を支え…亡くなられた皇太子様…お父上様の血縁を皇太子様の次の王にします。現国王陛下の血縁でもあり、一番よい方法かと存じます」
王妃がナオミが無理にそうした解決法を取るのかといぶかしんだ。その表情を見て、ナオミは優しく微笑み、続けた。
自分がマール国からこの国に来た時のこと、この国での生活と王子の優しい気配りのこと、王子を片思いした経緯、そして王子の求婚について王妃に話した。
「マーシュ様に感謝申し上げねば…」
王妃は顔を手で覆った。
「先ほど国王陛下に謁見させていただき、結婚の許可を頂戴致しました」
王妃は喜び、ナオミを抱き締めた。
母と娘は色んな話をした。日頃どんな生活をしているか、好きなことは何か…など。スポンジが水を吸うように、14年間の空白を埋めるかのようだった。
「ニホン…はどういうところなんでしょう?」
王妃は日本での日々の生活をナオミに話した。ナオミからすれば、スイッチ1つで灯りが灯ったり、火がついたり…という日常生活ですら魔法の国のようだった。
高いビル群、子供達が通う学校のこと、自動車に飛行機…信じられない世界だった。
「お母様、もし今ニホンに帰れるなら、帰りたいですか?」
夢のような世界の話を聞いて沸々と沸いた疑問をおずおずとナオミは聞いた。
王妃はじっと考えた。
「多分まだ私が20代前半だったら…帰りたいと即答したと思います。でももう私も36歳…今更日本へ戻っても高校中退で働いたこともないし…こんな年齢で生活していけないと思います。だから…帰らないわ」
「…家族には会いたいけれど」
王妃は付け加えた。
ナオミは高校中退とか難しい言葉で意味がわからなかったが、こちらの世界での生活の方が長くなってしまい、保守的な母はきっとそう答えるだろうと予測していたので、やはりと思った。
お茶の時間になり、王子を思い切り待たせてしまっていたことを思いだし、王妃からお茶を勧められつつも辞退し、また来る約束をして退出した。




