謁見①
国王陛下との謁見は翌日の昼食後となった。ナオミは休みではなかったが、王子が責任者に伝えた結果、急遽休みになった。
「明日父上が許可されたら、もうお前は仕事をせず、妃としての教育を受けるのだ」
ナオミの手を握り締め、王子は言った。
ナオミは自分の部屋へ戻った。
夢の中にいるようだった。
恋した相手から何度も自分に好意があることを話され、抱き締められたり手を握り締められたり…もう思い出すだけで真っ赤になった。
丁度夕食の鐘が鳴った。
とても食事等喉を通らない…と思った。でも囚われ人だったナオミは食堂へ行かないと大騒ぎになる。職員となった今がどうなのかわからず、仕方なくナオミは食堂へ出向いた。
「ね、ナオミ…王子のご用はなんだったの?」
またみんなに聞かれた。
「あ…マール国のことで…それ以上はちょっと…」
嘘じゃない。
「じゃあ話せないわねぇ」
会話は他の話題となった。
ナオミの後ろのテーブルの衛兵達は休みのナオミを王子がわざわざ呼び出したということは…ナオミが主になるかもしれないと心密かに思っていた。
ナオミは食事が喉を通らなかった。
少し豆のシチューを食べたものの、味が全くわからなかった。観念して食べるのを止め、席を立った。
「ナオミ…殆ど食べてないじゃないの」
「…なんだか食欲がなくて…」
「具合でも悪いの?」
「いえ、そういう訳ではないんですけど…でも早く寝ます」
「そうね、最初が肝心だから、早く寝て明日にそなえなさいよ!」
明日…謁見の日…。
ナオミはめまいがしそうになり、少しよろけた。
「大丈夫?ナオミ」
「大丈夫です。ありがとうございます。ではお先に…」
衛兵達は自分達の推測がかなり正しいのではないか、と一連の流れを見て思った。
ナオミは寝間着に着替え、ベッドに潜り込んだ。
しかし…眠れない。
極度の緊張で目がぱっちりと覚め、眠れない。
そうっと起きて、王子のお相手に差し上げるつもりだった編みかけのレースのハンカチを取りだし、編み始めた。
(まさか自分が相手になるなんて)
集中して編んでいると落ち着いて来て、少しお腹が空いてきた。パンを一つ持って部屋に戻りなさいと言われて持ち帰っていたので、水とパンをいただいた。
少し落ち着いた。
また少しレース編みをし、少し落ち着いた時にもう一度ベッドに潜り込んで目を瞑った。
いつの間にか寝られたようだが、寝が浅く、すっきりとはしなかった。午後からの謁見なら午前は仕事が出来るからと小間使いの格好になり、食堂へ出向いた。
「あら、ナオミ…今日は特別休暇だと聞いていたわよ?」
「用事は午後からなので…午前は仕事が出来るかと思いまして」
「そうなの?」
ナオミの姿を見た侍女長が驚き、慌ててやって来た。
「ナオミさん、午前は色々とご用意がございますので、お仕事は控えて侍女控室へお越し下さい」
皆びっくりして侍女長を見た。




