呼び出し④
異世界ものは本人が主人公ですが、本人ではなく子供の立場なら?と異世界の子供を主人公に恋愛ものを描いてみました。
この世界は貞操という概念が強い。その為少女達は恋い焦がれた相手とも手を握る位しかしない。今回の王子のような未婚女性を抱き締めるという行為は滅多にない珍しい行為だ。
「ナオミ…父上に許可をいただきにあがるぞ」
抱き締められたまま、ナオミは耳元でその言葉を聞いた。
「国王陛下に…ですか?」
「そうだ。貴族の結婚は国王の許可を得ないといけない」
王子はナオミから離れた。
「ブランド!」
隣の控室から王子の世話役は現れた。
「はい」
「父上の謁見許可をいただいてくれ。早急に、だ」
「どのようなご用件で?」
「私自身のことだ」
「…。かしこまりました」
ブランドはちらりと王子の隣のナオミを見、無表情のまま退出した。
ナオミはまだ今の時点でもやはりまだ信じられなかった。
「さ、座りなさい。義母上の話をしよう」
ナオミは王子に促されて座った。
「リナ様、義母上はこの国の方ではない。16歳の時にある日突然この国に来られたのだ」
「ご本人は神隠しでここに来られたと主張されている。たまたま"ジンジャ"というところで物を落とし、ころがったそれを追いかけて木のウロに入ったそれを取ろうとしたら意識が無くなり、こちらの世界に来られたそうだ。信じがたい話だがな」
「不思議な格好をした黒髪の女性がいると衛兵から連絡があり、伯父上がお会いされた。そしてそこで恋をされた」
ナオミの中で母は育ててくれた母しかイメージがない。生母はどんな人なのだろう、とナオミは思った。
「義母上は貴女よりもっと真っ黒な美しい黒髪をされている。肌ももう少し濃い色をされている。…貴女に少し似ているが、貴女は少し伯父上にも似ているようだ」
「背格好だが…貴女より少し小柄だ。あまり派手なことは好まれず、積極的な方ではない。だから口下手という程ではないが、お喋りはあまりされない」
ナオミは生母のことを考えつつ、呟いた。
「私と王子はいとこということですね」
「うむ。しかし父上と伯父上は母が異なるので、いとことはいえ通常のいとこより血縁関係は薄い」
王子は熱くナオミを見つめ、それから少し目線を横にそらして言った。
「私は皇太子だから22歳迄に結婚しなければならないが、おま…貴女に出会って結婚話を止めていた」
「王子…あの…これまで通り"お前"で結構です…」
王子から自分を好きなのだという言葉が聞こえると、これ以上赤くなれないのではないか…という限界に挑戦しているようだった。
「ナオミ…」
王子はナオミの手を握った。限界は更に更新したようだ。
「父上にお会いして結婚を許していただくぞ。私は皇太子だから沢山子供を持つ必要があるが、側室は持たない。だからお前に頑張って貰うぞ」
ちょっと悪そうな顔をして王子は笑った。
「あ、あの…」
もう意識が遠のきそうだ。




