呼び出し①
夕食後も休みの日もレース編みという余暇が出来たことで、ナオミは幸せだった。
一目一目…あの方を大切にしてくださるお姫様のために…と心を込めて編んでいた。
ナオミの休日の昼下がりにコンコンとノックがした。小間使い頭だった。
「こんな天気のいい日に部屋にこもっているなんて!もうお出かけして良いのですよ?」
「はい、そうなんですが…レース編みの続きをしたくて…」
「レース編み?どんなの?」
「あ、これです。もう少しでハンカチが仕上がります」
小間使い頭はナオミのレースを見て驚いた。
「すごく綺麗じゃないの!」
「ありがとうございます …ところでどのような御用で?」
「ああ…そうそう!王子があなたをお呼びなのよ」
王子が?なんだろう?
「私服でお伺いして良いそうよ」
ナオミはレース編み道具を片付けると、王子の執務室へ向かった。秘書が入ってきたナオミを見た。いつもより更に丁寧にナオミに王子の部屋へ行くように伝えた。
「ナオミです。失礼致します」
「入れ」
王子の声がし、ナオミは入った。
「お呼びとお伺い致しました」
「うむ…まぁ座れ、ナオミ」
王子はナオミにソファーへ座るように促し、ナオミが座ると執務机から移動してナオミの隣に座った。
(王子が隣に…)
またナオミの頬は真っ赤になった。
王子はその様を微笑んで見つめると、真剣な顔になり、ふぅとため息をついた。
「ナオミ、お前の妹は捕らえられた後、すぐにマール国へ送還されている。何故お前だけが囚われ人となったのか、わかるか?」
ふいに言われてナオミは戸惑った。
「私が珍しい黒髪だからでしょうか…?」
「いや、それも理由だが…もうひとつ…おしろい花を知っていたこともある」
「?」
「おしろい花は王妃の庭にしか咲かない」
「それを私が知っていた、と」
捕まえた時に植物の本を見せられた。知っているものを列挙させられ、ナオミはおしろい花も指差した。それが原因というのか。
「今日呼び出したのは他でもない…」
王子はソファーから立ち上がり、続けた。
主が立ち上がったので、ナオミも続いて立ち上がった。




