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青い月の下で  作者: 由起
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スレシュ国の囚われ人①

異世界ものは本人が主人公ですが、本人ではなく子供の立場なら?と異世界の子供を主人公に恋愛ものを描いてみました。

ちょっとハーレクイン風な甘々ストーリーです。

【スレシュ国の囚われ人①】


ナオミは青い月を見て溜め息をついた。

リンデットは逃げ切れたのかしら…と。


そしてこちらをチラチラ見ている職員に気付き、「ふぅ」と疲れた素振りで誤魔化した。職員はああ、という感じでまた黙々と職務を遂行した。


今ナオミが居るスレシュ国は世界でも大変珍しい専制君主国家。他の諸国は王国ながらもそこまで厳しくはない。商業国家は更に緩やかである。


特に厳しいのは出入国。

何故ならスレシュ国には武器を作るために必要な鉱石等の天然資源が豊富であり、密輸しようとする輩がいるからだ。


我々が見る月より少し小さく、青く光る月を持つこの星の住人達はのどかだったが、それでも国同士のいさかいは発生した。


誰しもが楽して富みたい訳である。これはどの星であろうとも普遍の真理なのかもしれない。


ナオミは仕事を終えた。

小さく青い月が出ても夜は暗くて見えづらい。その為仕事は終了する。


ナオミの仕事は王家の冬の離宮での小間使い的なものだった。小間使いといっても離宮での仕事は厳しくはない。また離宮と言いながらも、この宮殿は皇太子マーシュが日々生活をする宮殿であった。


必然的に皇太子が住まうということで、離宮と言いながらも国境にはなく、国王が住む宮殿から馬車で30分程であった。馬車で30分…現代で言うなれば自転車で30分といったところだろうか。


ナオミは自室へ戻った。


この国では余程貧しい者以外は一人ずつ部屋がある。小間使いといえども狭いながらも個室があてがわれる。


それでもナオミは自室といっても気をゆるめなかった。緩めざるを得ないのは寝るときだけ、と決めている。


ナオミは囚人だ。

一見自由に見えるが、囚われ人なのだ。


コンコン。

「はい」

カナリー小間使い頭補佐だった。


「ナオミさん、明日の朝はいつもの客室ではなく、西棟の客室を清掃することなりましたので、西棟1階へ来てくださいね。ハナサも一緒です。」


予定が変わるのは珍しい。


不思議そうにしつつ「かしこまりました」と答えたところ、相手も察したらしく、

「お客様が南棟の客室がお気に召さず、急遽西棟へご案内したのです」

と説明した。


南棟の方が広くて美しい部屋なのだが、お招きしたお客様同士の仲が良くないために、あえて今回は位が低い方のお客様に西棟の一番豪奢な部屋をあてがい、帳尻を合わせた…というのが真相だ。しかし小間使い頭補佐はそこまで説明しなかった。


ナオミも「西棟ですね。了解致しました」と返答した。基本南棟が客室のメインだが、西棟を使うことも往々にしてあるためだ。


小間使い頭補佐が去るとドアに鍵をかけ、ナオミは頭に被せたシャワーキャップのような小間使い用の帽子を取った。小間使いは髪をきちんと帽子の中に入れるのがマナーとされている為だ。


ナオミの少し茶色がかりつつも黒くて真っ直ぐな髪がこぼれた。


「…」ナオミは黙って自分の髪のこめかみ付近をそっと右手で触り、鏡に映った濃い茶色の瞳でそれをじっと見つめた。


(真っ黒な髪。なんで私だけこんな真っ黒なのだろう?)


スレシュ国民だけでなく、世界の住民は銀髪が多く、時折金髪や茶髪がいる。瞳も薄い青や緑の寒色系、薄いオレンジや茶の暖色系があるが、とにかく色素が薄いため、肌も髪も目も濃い色が羨ましがられる。


「あなたの瞳は本当に素敵ね!肌も健康そうで本当に素敵!」

と台所仕事をするカナサにうっとりして言われたこともある。


ナオミは明日も早いのだから…と身体を拭き、歯を磨くとベッドへ潜り込んだ。

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