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第1話 転生はしたものの…。

異世界編の始まりです!

 こんにちは、透哉です。


 神とやらのおかげで無事に異世界に転生出来ました。


 そして今年も春が来て、無事に七歳となりました、拍手!!


 とはいうものの…。


「はぁ…今日も村は平和だね」


「何言ってんです、トウヤ坊ちゃん。平和なのが一番良いに決まっているじゃない

ですか」


 生まれてからこれまで、これといった事件もなく、子供が働く必要が無い程度に

は村の大人の人数は揃っているそうなので、子供は子供らしく友達と遊ぶ位しか

無いのであった。


 ちなみに西洋ファンタジー風の世界に転生したはずなのに、俺の名前はトウヤだ

ったりする…絶対、神の野郎が手抜きしたからに違いない。


 ちなみに父親の名前はソーヤという。これも俺の『トウヤ』と名前ありきで神の

野郎が付けたに違いない。(あくまでもトウヤの個人的見解です)


 さて、何時までも愚痴っていても仕方がない。此処で今の俺がどういう存在なの

か説明しておこう。


 まず、俺のフルネームは『トウヤ・ヴァルデシオン』


 何だか偉そうな名字が付いているが、俺の家は村の名主である。

 本来、こちらの世界では名主程度で名字を持っている家はほとんどいないらしい

のだが、どうやら俺の家は元をたどれば貴族であるらしい…というか、父の弟にあ

たる人はこの地を治める男爵様であったりする。


 何故、男爵の兄が名主なんかやってるのかというと、父は先代男爵の側室の子で

あり、父の母…つまり俺の祖母は遠方の騎士爵の五女という血筋的にいうと貴族と

しては端の方の存在だかららしい。ちなみに父の弟である男爵様の母親は、近隣の

子爵の次女である。

 そんなわけで、我が父は早々に貴族として身を立てる事を諦め、名主となったの

だそうだ。

 

 そして、この俺はその名主の跡継ぎとして…という事だったら、まだ良かったの

かもしれないが、残念ながら俺の母であるリィナは父の妾であり、正妻のミリアと

の間にはガイヤという俺からすると腹違いの兄がちゃんといるので、俺が名主にな

る事などほぼあり得ない話なのであった。まあ、村の人も一応は名主の息子として

それなりな扱いはしてくれるし、幸いな事に我が母と正妻様との仲も良好で、父も

兄も母二人も俺の事をちゃんと家族として接してくれているので、今の生活にこれ

といった不満があるわけではないのであった。


「トウヤ~、もうすぐお昼ご飯だから帰っていらっしゃ~い!」

「トウヤ坊ちゃん、ミリア様がお呼びになられてますよ」

「そうだね、ミリア母様が呼んでるって事は、今日のお昼は母様が当番のようだし

 楽しみだ」

「確かにリィナ様の作る料理は絶品ですからな~。ミリア様も村の女性の中では料

理上手な方ではございますが」

 俺は話相手になってくれていた近所のおじいさんのそんなうらやましそうな声を

聞きながらミリア母様と共に家に帰ったのであった。


 ・・・・・・・・・・・・・・・


「「「「「ごちそうさまでした!」」」」」

 昼食も終わり、父が開墾作業に出るまでの間、家族は何時も誰からともなく歓談

を始める。


「いや~、何時食べてもリィナの飯はうまいな。ミリアの飯もうまいけどな!」

「はいはい、ありがとうございます。私のより、リィナのご飯の方が美味しいのは

分かってますけど」

「いえいえ、昨日のミリア姉様のシチューの味はとても素晴らしかったですよ!」

「あら、そう?リィナにそう言ってもらえるなら、味の研究をした甲斐もあったと

いうものね」

 父は何時もご飯の後は妻の料理を褒めている。基本『どっちの飯もうまい!』と

言うだけではあるが。そして、それにミリア母様は若干むくれたような顔で言葉を

返し、母がフォローを入れるという何時もの光景である。

「トウヤは昼から何をするんだ?俺は海に釣りに行こうと思ってるのだけど、何も

無いなら一緒に行かないか?」

 そして、六つ上の兄ガイヤは何かと俺の事を気にかけてくれる頼れる兄である。


「ありがとう、ガイヤ兄さん。でも、今日は書斎の本を読もうと思ってるんだ」

「そうか、お前は本当に本が好きだな」

「ガイヤもトウヤを見習ってもう少し本を読んだらどうだ?」

「父上がトウヤの半分位、本を読むようになったら考える」

「…せめてそこは二割位にして欲しいなぁ」

「あなた…せめて、そこは半分って言ってください」

「そうです、ソーヤ様もガイヤさんも、今よりもっと立派な名主になる為にはもう

少し勉強をですね……」

「おっと、そういえばまだ開墾作業が途中だった!ガイヤ、釣りに行く前に少し手

を貸してくれ!」

「了解でありま~す!」

 ミリア母様と母上のツイン説教をくらうのを避けるかのように、父と兄は疾風の

如く家を出て行った。これもまた我が家で良く見かける光景であった。


 ・・・・・・・・・・・・・・・


「さて、今日は何の本を…今日こそこの本だな」

父の書斎に入り、本棚から一冊の本を引っ張り出す。それには『アーシアンの地理

と歴史について』と書いてある。

 ちなみに『アーシアン』というのは、俺が転生して来たこの世界の名前である。

やはり自分の住む世界がどのような物であるのか知っておくのは重要だと、物心が

つき神が約束通りに前世の記憶を甦らせてくれてからずっと思っていたのだが、俺

自身がこの世界の字を読めるようになってから、ちゃんと本を読んで理解しようと

も思っていたので、今日まで詳しい事は何も知らなかったりする。

 最初は、親とか村の大人に聞けばと思ったのだが…父や村の大人達にとって、自

分が住んでいる村が自分の世界の全てに近いところがあり、母親達が自分の故郷に

ついて、多少知識があるご老人達で精々この地の領主である男爵家と男爵様が住む

領都の事を知っている程度だったので、字が読めるようになってから本を読めば良

いとひたすら字の読み書きの習得に力を入れていたのであった。


「さてと…まずはこの世界の地理から『アーシアンの地は北のローラシアンナ大陸

・南のコンドワンナ大陸の二つに分かれ、その二つの大陸と大陸の間の海にある百

を超える島々とで構成されている』か…」

 そして読み進めていくと、ローラシアンナ大陸はラックセント王国、コンドワン

ナ大陸はガイザンヌ帝国という大国の領土であり(一部の辺境近くには少数の独立

民族が存在しているようだが)、二つの国は千年以上前から何度も戦争を繰り返し

ているとの事らしいが、この三百年余りは戦争にはなっていないらしい。というの

も、二つの大陸の間にある島々の七割程は『ローファンス諸島連合』という船乗り

と商人の自由連合によって統治されていて、諸島連合の許可無しにはどちらも容易

に海を越える事は出来ないからとの事だからだ。大国である両国も、海の上の戦い

となると諸島連合にはまったくかなわないので、諸島連合がある限り二国間の戦争

が起きる事はこの先も無いであろうと今から十年程前に書かれたらしいこの本には

記されている。うん、戦争が無いのは良い事だ。


「そういえば、神が『こっちには魔王はいない』とか言ってたけど、その辺はどう

なんだろう?何か書いてあるかな?」

 一応ファンタジー風の世界で魔物は出るみたいなので、それを率いた魔王的な存

在とかあったら…実際に遭遇したら嫌だけどね。

「ええっと……おおっ、魔王はいたんだ!」

 どうやら伝説の中で二千年前に勇者によって封じられた魔王がいて、それが二百

年前に復活して、二千年前の勇者の子孫 ――此処では『二代目勇者』と記されて

いるが―― によって滅ぼされたとなっている。しかも、その二百年前に復活した

魔王によって、当時再戦の機運が高まりつつあった両大国もそれどころではなくな

って今に至るらしい。そして二代目勇者は当時のローファンス諸島連合の長であっ

た女性と結婚し、子供が産まれてしばらく後に姿を消したとある。なので、諸島連

合の長はその勇者の子孫の家系が代々受け継ぎ、諸島連合は『何かあれば勇者の子

孫たる我らが長の力が解放される』と、まるで厨二病みたいな事を言っているとの

事である。


「ふ~ん、勇者の子孫ねぇ。まあ、連合の長なんぞ一生会う機会も無いだろうから

良いんだけどね」

 ちなみに我が村はローラシアンナ大陸の東方の端にある男爵領のさらに東の端に

ある海に近い…まあ、田舎だな。とりあえず俺はこの村とその周辺でのんびりとし

た一生を過ごすだけだし…とはいえ、何かしら自分で金を稼ぐ手段を得た方が良い

だろう。農作業的な所はガイヤ兄さんに任せるとして…此処はやはり狩りの腕を磨

くべきか。でも、狩りってやっぱり弓とか使うんだよな…弓は当然の事ながら前世

で使う事など無かったしな…とか思っていると。

「えっ…剣でも狩りをするの?」

「ああ、射程が短いから初心者向けではないけどな。熟練者だったら剣一本で熊位

は狩ってくるぞ」

 よっしゃ!父の言葉に俺は心の中でガッツポーズを取る。弓は自信がないが剣な

らいける!伊達にずっと剣道をしていたわけではない!一応、こっちに来てからも

トレーニング的な事はしてきたんだ!後は剣さえ貰えれば…。

「そうか、トウヤは剣で狩人になるつもりか。なら、明日から剣を教えてやろう。

ちなみに俺が良いっていうまで狩りはダメだからな」

 むう…剣なら自信があるのに。まあ、仕方ない。此処は俺の実力を見せて皆の度

肝を抜いてやる!そして、華麗なる期待の新人デビューを果たすぞ!

 後で思うと僅か七歳で何言ってるんだという事を、俺はこの時は本気で思ってい

たのであった。



次は狩人デビューまでの道のり(?)です!

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