ガチャシステムを導入したVRMMOで強キャラ引いてPKKやりました。 ~とあるクソゲープレイヤーの初日~
『ネバーワールドオンライン』とは糞ゲーである。
なんとか大百科の様な書き出しだが、これは事実だ。
世界初のフルダイブ型VRMMOを日本技術者の維持で世界に先駆けて作ったはいいが、運営するのはガチャ大好きな某企業。
当然の如くキャラメイクの種族からガチャシステムを導入し、世界中のゲーマーから○○潰れろと呪われたが、呪いなど実在しないためゲームは正式サービス開始を迎えた。
で、俺も糞ゲーと呪いながら始めた訳だが、激レア種族引きました。
【種族】竜人
【レア度】☆☆☆☆☆☆☆☆
STR:100
VIT:100
INT:100
RES:100
DEX:100
AGI:100
スキル:
【孤高】……パーティーを組んでいない間全ステータス2倍
【飛行】……空中飛行が可能
【ブレス】……超ダメージ範囲攻撃
上から順に説明すると、☆8は確率0.0001%とそろそろ規制されろと言わざるを得ない超低確率であり、各ステータスはβプレイヤー平均値の5倍(スキル発動中は10倍)、【飛行】スキルはこれまでレア度7の種族でしか確認されておらず、その種族もステータス全てを犠牲にしている。
つまり、運営がこのゲームをMMOだと忘れている可能性が浮上する程の壊れっぷりである。
あまり目立ちたくないと思っていた俺だが、同時に貧乏性でもあるため、引いた以上は使うかと思いゲームを開始し中世ファンタジー世界の街に降り立ったが。
「おい、あれ」
「あの翼、まさか☆8?」
「アリスさん、あっちに行きましょう」
「だね。ごめん、さっきまでのは無しで」
イケメン竜人……まぁ、容姿のデータ弄りまくって出来た産物だが……は当然の如く目立ち、周囲には人だかりができ、姫プレイを狙う女キャラ達に滅茶苦茶媚を売られた。
……別のネトゲで外から姫プレイヤーを見ていた時は浅ましいと思っていたけど、適格にこちらを褒め称えられると普通に嬉しい。世の中から姫プレイや女と飲む店が無くならない理由が分かった気がする。
「引くまでにいくら使ったんだか、たかがゲームに馬鹿じゅねぇの」
☆7さん(仮名)の陰口が聞こえたが、ごめん、これ無課金一発ツモなんで。
お宅こそおいくら万円使ったんですかねぇ……。
で、流石にうっとおしくなって来たので【飛行】を使って街の真上へと飛ぶ。
遮蔽物の無い高い所から見る街並みは結構新鮮だ。
そのまま街を出て平原まで移動。
最初の雑魚相手だとオーバーキルが目に見えているので、パーティーでも苦戦する様な相手を探す……見つけた。
それは全長3メートル程の一つ目の巨人だった。
確か一定確率でフィールドに現れるレアモンスターで、名前はサイクロプスだったか。
このゲームのレアモンスターはその時点では殆ど太刀打ちできないモンスターで、レア種族のパーティーで固める以外に対抗策が無い。
ちなみに挑戦権があるのは☆7種族からで、下で戦っている☆6(選択確率1%)で組んだパーティーはあっと言う間に壊滅した。
ここまで強ければ良い戦いになるだろうと思い、最初から【ブレス】スキルを放つ。
俺が思い切り吐き出した火の息はサイクロプスを一撃で黒焦げにし、周囲に居た雑魚モンスターを根こそぎ焼き尽くした。
「……強すぎぃ!」
その後も圧倒的な戦力で敵を倒し続け、大量の経験値とレアアイテム、ついでに周囲の羨望と美少女とのフラグを立てている内に夜となり、森エリア(平原の次のマップ)が暗闇に包まれる。
同時に鐘の音が響いた。
この音は今いるマップがPK可能エリアに選ばれた合図だ。
「あー……悪いけど俺を囲んでるの分かってるから」
鐘が鳴るまで待っていたPK達に呼びかける。
「は、流石は☆8の竜人様。【気配察知】のスキルも当然の如くお持ちですか」
そう言って木陰から出てきたのは街で見た☆7のプレイヤーだった。
尖った耳に赤い瞳……ハイエルフの整った顔は嫉妬に染まっている。
「いや、お前らの嫉妬の視線が凄かったから分かっただけだ」
「随分と調子に乗っている様だが、状況理解しているのか?」
俺の周囲を取り囲む気配は20人以上、面倒なのでそれ以上数えては居ないが、気配からして倍以上は居そうだ。
「いくら☆8とは言え、こっちにはβ組かつ☆7プレイヤーも数人居る。勝ち目があると思うなよ」
「……余りにも綺麗な負けフラグっぷりに絶句するんだが。まぁいい、行くぞ」
俺は敵の集団へ突撃し……さしたる苦戦も無く勝利した。
☆7と☆8で差がありすぎだろこのゲーム。
「何だよこの糞ゲー、バランス考えろよ」
地面に倒れたハイエルフの愚痴には全面的に同意だ。
「なぁ、楽しいか? たかがゲームに金かけてチートキャラ引いてガキみたいに無双して本当に楽しいのか?」
「そうだな……楽しい。超楽しい。アンタが金かけて☆7引いた気持ちが分かる」
圧倒的な力で敵を蹂躙して周囲からは羨望の視線を浴びる。
周りの雑魚プレイヤー達は負け犬の遠吠えか陰口しか言う事は出来ず、俺は女の子と仲良くなれる。
男として楽しくない訳がない。
「……同情とかすんなウゼェ」
その言葉を最後に、ハイエルフの体が消える。
死亡したのでリスポーン地点まで移動した様だ。
「俺もログアウトするか」
この1年後、運営チームのトップが公式アカウントで最強キャラを作りPKを行う。
だが、その暴挙は竜人とハイエルフのコンビにより阻止されたと言う。