↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3394/3437

未来変

 未来は、あらかじめ定められている。

 そう聞いたら、どう思いますか先輩? いかにも生きる気力がそがれそうな感じがしますね。頑張っても、さぼっても結果が変わらないように思えますから。自分が力を入れて取り組んでいることがあったとしたら、それをばかばかしく考えてしまうかもしれません。

 手にしたボウルを、空へほうればいずれは落ちてきますし、目の前の壁にぶつければ跳ね返ってくるわけです。世界のルールががらっと変わりでもしない限り、確実におとずれること。自分の生きている間に、ルールが変わる可能性はとてつもなく低い。


 しかし、それは受け身で物事を見た場合のこと。能動的に動いたのならば、いかようにでも結果は変わりうる。

 先のボールもひとつだけだったなら、そのまま。しかし、たくさんボールを投げたのであれば異なってくる。ボール同士でぶつかりあい、思わぬ軌道を見せることもあるでしょう。

 あらかじめ定められているのは、あくまで今の手数、今の方法を変えないでいたら……の話。自分から何かしら行動を起こす方が、変化の起こる確率もまた高いのは自明かもしれませんね。

 私の昔にあった、未来に関する話なんですけれど聞いてみませんか?


 小学校にあがって、間もないころでしたねえ。

 クラスメートに未来が見える、と豪語している子がいたんです。当時は、魔法にせよロボットにせよその他にせよ、非現実的なパワーに心惹かれるお年頃。未来視などもポピュラーな能力として、歓迎されたものですよ。

 で、その子の場合ですと遠い未来のことは、まず話してくれないんです。どうとでも変わりやすいから、信じてもらいづらいだろう、とね。

 その代わり、近い未来であるなら高い的中率をほこりました。教室へ、いつ先生がやってくるのか、誰が次にトイレへ立つか……などといったところですね。

 結果を聞いて、あえて行動を変えるなどひねくれたことをしない限り、見ていて感心してしまうほどの正確さ。その秘訣について、私を含めた複数人が尋ねてみたのですが、どうにも教えようがないとのことで。

 今の空間を見渡してみて、ぴんと頭にひらめかないようなら、まずセンスがないとみていい。より先のことも時間や力をかければ、どうにか分からないこともないけれど、極端に正確じゃなくなるし、めちゃくちゃ疲れるとも。

 直近の数分程度であれば、まぐれとは思えないほど。事前にとても示し合わせができないような、突拍子もない質問でも彼女は答えてくれるから、どんどん私たちの間で信用度が高まっていきましたよ。


 極めつけは、お昼前の算数の時間でしたね。

 授業のなかばくらいに、ふと彼女が席から立ちあがったんです。先生に差されることなく、自発的に。

 何をするのかと思っていると、教室後ろのロッカー前へ。その上には運動関係のクラブのグッズが置かれていまして、そのうちのソフトボールたちを手に取ったのですね。

 誰がとがめるより先に、彼女はびゅっと手にしたボールのひとつを教室と廊下を隔てるドアへ放り投げたんです。

 そのままでしたら、ドアに当たって跳ね返るか、窓の部分を破って大惨事といったところでしょう。しかし、彼女の投球とほぼ同時に教室のドアが開いたんですね。

 開いたすき間へ飲み込まれたボールは、ほどなく鈍い音とともに跳ね返って、教室内へ転がってきます。そのボールの表面には、はっきりと見える緑色の液体をたたえながら。


 私たちが眼を見張っている間に、彼女はなおも他のボールを投げつけていきます。私の角度からでは、何に彼女がボールをぶつけていたかはわかりませんでした。けれど、あのときに見ていた子によると、虚空へ投げているように思えたそうですよ。

 しかし、ボールが当たって跳ね返る瞬間だけ、その空中には灰色のノイズというか、ひび割れみたいなものが走ったらしくて。何かがいたらしいのは、まず確かだったとか。

 そして、そのボールについた緑色の物体は、ボールそのものは平気でも、接触した教室の床の木材部分がみるみる湯気を吐き出しましてね。おさまったときには深さ数ミリ程度の穴が開いてしまったんです。

 廊下のリノリウム部分も、このドアの前と東側の階段へ向けて、点々と小さな足跡の形に剥げてしまったところができてしまっていました。

 彼女いわく、この不可解なやつの正体は知れないけれども、もしそのままにしていたら教室へ入ってきて、自分たちを溶かしにかかってきているのが察知できたとのことで。

 確信が持てたときには、もうドアの近くまで来ていたらしく、その未来を変えるには許可を得るより早く、あのボールたちを投げつけるくらいしか思いつかなかったのだとか。


 案外、手近にあるものだけでも、未来は簡単に変えられるのかもしれませんね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。