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堂々巡りをしている気がする

 女性をエスコートするだけなら、男性が誘導してあげて何でも女性を先にしてあげればいいだけで簡単だと教わったが、今の今までは違うと思っていた。


 クロは伊達に社交歴が長いわけではないようである。エスコートされ馴れている。


 腕を組んでも先に歩くし、レストランで店員さんが椅子を引いても僕よりも先に座る。当然のように、メニューも先にみている。


 僕は道で馬車道側を歩いたり、ショッピングをする店の扉を開けたり、買い物をした荷物を持ったり、レストランでワインをついだりしただけで格好がついた。


 あとはレストランで食事のマナーを間違えなければいいだけ、そこは小さい時にお祖母さまに厳しくしつけられたから大丈夫だ。


 こういったレストランでは、ワインのことは知ったかぶりせずソムリエに聞けばいいし、ソムリエがいなければ、食前酒ならシャンパンかシェリー酒、女性ならシャンパンのカクテルを薦める。


 それから音を立てたり、皿を持ち上げたり、食べながらしゃべったりしなければ問題ないはずだ。


「凄いわね。エスコートもなかなかだったけど、食事のマナーも完璧なのね。流石は皇族の一員というところかしら。私なんてクロノワール様の育ちはいいはずだからか、エスコートされることに馴れてしまってエスコート出来ないのよね。テーブルマナーなんて忘れてしまったわ。」


 クロノワール様の育ちの所為なのか、クロはどんな仕草も優雅に見える。やはり美女っていうだけで絵になるというか特別なんだよね。


「クロはそれでいいんだよ。美しい女性は何をしても優雅に見えるからね。それに僕は、普段のクロを見れて楽しいよ。」


「まあテーブルマナーなんて、どれだけ意識してやっているかの違いなのよね。そうやって考えてみると、エッチなんかも食事に似ていると思わない?」


 来たよ。また来た。突然、エッチの話題が堂々と入り込んでくる。こういったことは真似出来ないな。全くクロノワール様らしい。


「食事はしないと死んでしまうよ。」


 エッチはしなくても死にはしない。心は荒むけど。


「でも食べ過ぎると身体に悪いわ。」


 身体に悪いほどエッチしたことがないから、そこはわからないがクロノワール様ならありそうだ。


「いい男を好みのタイプに仕立てて、自分の好きな時に身体が欲しがる分だけエッチするのが一番健康的だわね。」


 もうやだ。この人。給仕が料理を運んできた瞬間話を切り換えてきた。


 多分客の話なんか聞いていないと思うけど、もし聞こえたならどう思われるんだろう。有閑マダムに遊ばれているツバメがセイゼイかな。どちらにしても、恋人同士には見えなさそうである。


 恋愛経験値の差がここまではっきりと出るとへこむなあ。


 でもこれがクロノワール様の手段なんだ。どうにでもしてくれと思ったら負けだ。


 そう言ったが最後こちらの気持ちを考えてゆっくりなんて進んでくれないだろう。クロどころか、クロノワール様にもぱっくりと食われてしまいそうだ。


 きっと赤面してしまっているだろう。ここは気持ちを落ち着けるためにも、会話を無理に続ける必要はない。


 やっぱり、綺麗だなあ。黙っていると凄く上品に見えて、下ネタを口にしてもそれほど下劣にならない。


 商会を切り盛りしているんだから当たり前だが、話も上手いし頭も良さそうだ。絶対、男が放っておかないタイプだよな。


「どうしたの? ジッと私を見つめて。あんまり、見つめられると溶けちゃいそうだわ。」


 本当に僕の恋人になってくれるのかな。やっぱり、自信がなくなってきた。


 ダメだダメだダメだ。彼女は言ったじゃないか。自分自身ではエッチもままならないんだと。クロノワール様が僕をエッチの相手としたことでクロは僕の恋人になったんだ。


 ここはクロの言ったことを信じるべきだ。























 楽しい時間はあっという間に過ぎ去った。


「本当にこのまま、送っていってくれるつもりなの?」


「もちろんだとも。」


「そこの連れ込み宿は、物凄く綺麗だという噂だし、何処かの一軒家を貸してくれるところも手配できるわ。」


 これがやせ我慢だということもわかっているが、相手の話に乗るわけにいかないのだ。


「それでクロノワール様に報告するのかい? エッチをしてクロノワール様に報告しないという選択肢はクロに無いよね。きっと報告も義務づけているはずだ。それで僕たちの関係も終わりだよね。僕はそんなのは嫌だ。嫌だよ。」


「仕方無いじゃない。貴方はクロノワール様のお相手なんだもの。私なんて仮初めの女に過ぎないのよ。」


「だったら、ゆっくり進もうよ。エッチなんか一生しなくてもいいじゃないか。クロノワール様には、もう少しでエッチ出来ると報告しておけばいいんだよ。そうすれば、少なくともあと20年間は傍にいられるよ。」


「本当にそんなに上手くいくと思っているの?」


「思っているさ。クロはクロで僕のいいところや気付いたところなんかを毎回報告しなきゃいけないけどね。」


「それは大丈夫。貴方のいいところなんて沢山ありすぎて20年かけても報告しきれないわ。それよりも、怖いのは、クロノワール様が貴方を諦めるときのことかな。」


「それなら大丈夫じゃないかな。そのときはクロノワール様の気持ちが誰かに移っているわけだし、あのクロノワール様にのめり込まない男性が僕以外にいるはずがないさ。」


「そうね。そうよね。でも、私の欲望はどうしてくれるのよ。」


 まただ。なんだか結局は堂々巡りをしている気分になってくる。


「エッチしなくても解消してあげるよ。何も繋がることだけが、欲望の解消法じゃないだろ。」


 お互いに手を使ってもいいし、口を使ってもいいんだから。こんなことをいうと、また連れ込み宿に行こうとかいいだすだろうから言わないけどね。

クロのターンはこれで終わりです。

クロノワール様のターンよりも長いのは内緒です。

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