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主導権を奪われてしまいました

 僕のために用意された部屋に戻った途端、急に恥ずかしくなってきた。


 なんてことをしてしまったんだ。


 しかもシロヴェーヌ様にバッチリ見られてしまった。きっと呆れられてしまったに違いない。


 僕がベッドの上で悶えていると扉がノックされる。


 誰だろう。露天風呂で、はしゃぎ過ぎた所為で深夜に差し掛かっている。


 夜這いかな。クロノワール様がリベンジだろうか。


 流石にもう眠いんだけど、適当にいい訳して追い返そう。


「はーい。今、開けますよ。」


 扉を開けてみるとシロヴェーヌ様が立っていた。


「・・・シロさん?」


「よかった 居た 」


 起きてた・・・じゃなくて、居た?


「夢じゃ なかった 」


 シロヴェーヌ様は目の前で急に、もじもじし始めた。なるほど。自分の部屋のベッドに横になったら、急に心配になってきたんだな。今までの出来事が全て自分の都合のいい夢と勘違いしたんだな。そして会いにきたけど、僕を見たことで満足してしまったんだ。


「はいはい。僕はここに居ますよ。」


 僕はそっと近付き軽く抱き締めて直ぐに離す。よしこれで安心するはずだ。


「ではおやすみ・・・。」


 就寝の挨拶をして扉を閉めようとしたが、部屋の中にスルりと入ってきた。


「いっしょ 寝たい ダメ?」


 その手に『枕』を抱えているのに気付く。


「えっ・・・。」


 顔を真っ赤にして、俯き加減にそう告げてくる姿や声にある種の覚悟を決めて挑むような感覚を得て、顔に熱が集まってくるのを感じた。


 一緒に寝る? え、えっ、そそ、それって、つつつ、つまり、ここここ、これは、そそそそそ、そういうこと?


 イヤイヤイヤ。幾らなんでも、早すぎでしょ。プロポーズされたけど。ま、まあ。い、いつかは通る道だし、はは、はやくて、わわわ、わるいわけじゃないんだけどね。


 思いのほか動揺しているのか。思考が上手く纏まらない。


 そのままシロヴェーヌ様はベッドの僕の隣に枕を置き、潜り込んでいる。


 この辺りの感覚は魔族だと違うのだろうか。クロノワール様が言ったように友達のエッチというのがアリなのだろうか。僕のほうにも心の準備というものが・・・。


 僕も健全な男だし、そういったことに興味が無いかと言われると・・・無いとは言えない。それに今のシロヴェーヌ様、目を離したら消えてしまいそうなくらい儚げでドキドキしてしまう。


「モーちゃん?」


 シロヴェーヌ様がベッドの上で首を傾けている。


「ど、どうしたの? 急に。」


「寂しいの 隣 いい?」


 その言葉で僕の勘違いだったことが判明する。彼女はただ寂しくて一緒に寝たいだけなのだと。


 うわぁ。恥ずかしすぎる・・・。なんていう勘違いをしているんだ僕は。シロヴェーヌ様はそんな人じゃないことはわかっていたことじゃないか。


 何を勝手に焦って何を勝手に思い込んでいるんだ。恥ずかしいよ。もう僕のバカ。


「迷惑・・・?」


「いや、大丈夫だ。問題無い。」


 ベッドに入り、布団を捲るとそこには小さく丸まったシロヴェーヌ様の姿があった。今まで1人寂しい夜を送るために常にそうやって自分で自分を暖めてきたのだろう。なんだがとっても愛おしくなってきた。


 そっとシロヴェーヌ様の隣に入るとピタリと僕の胸に顔をくっつけてくる。可愛い。なんて可愛い生き物なんだ。


 シロヴェーヌ様の顔を出すように布団をかけ直す。


「ありが とう 寒く無い?」


 布団はお腹辺りにしか掛かってないが、いつもより熱いくらいだ。シロヴェーヌ様の体温は決して高くない。どちらかと言えば冷たいのに凄くポカポカとする。


「大丈夫? 顔 赤いよ 」


 うわぁぁ。声にならない。シロヴェーヌ様の手が伸びてきて僕のオデコに触れる。頭が沸騰しそうだ。


「これじゃぁ 風邪 引いちゃうね 」


 シロヴェーヌ様が布団を上げて、移動してきた。僕の目の前に顔がある。うわぁぁ。うわっ。うわぁぁぁ。


 声にならない叫びを連発してしまう。


「幸せっ こんなに いいの かなぁ 」


 このままじゃダメだ。上手く会話ができずに不安に思わせているみたいだ。ちゃんと会話。会話をしなくちゃ。


「いいに決まっているじゃないか。僕も幸せだよ。」


「好きっ。大好きっ!」


「僕も大好きだよ。」


 ついついオウム返しをしてしまう。会話になっているからいいけど。僕の恋愛スキル低過ぎだろ。


「キス いい?」


 えっ。ダメダメ。止まってはダメだ。


「いいに決まっているだろ。」


「・・・ん・・・。」


 シロヴェーヌ様が目を閉じる。


 僕は彼女を優しく抱きしめ、そっとその唇に触れた。そして、ゆっくりと離していく。


 えっ。えっ。えええっ。


 離れてくれない。そのままシロさんの唇がついてくる。僕の頭が枕についてもそのままついてきた。


 もしかして、これって押し倒されてる?


 しかも重ねた唇から歯の上を舌がなぞってくる。


「ん・・・ん・んん。」


 これって『開けて』と言っているのか?


 少しだけ顎の力を抜くとシロさんの細く長い舌が強引に口をこじ開けてくる。なんかマジで長いんですけど・・・僕の口腔がシロさんの舌で翻弄されていく。


 まるで生き物のようにシロさんの冷たい舌は自由自在に這い回っている。完全に主導権を奪われてしまったじゃないか。何をやっているんだ僕は。

シロさんはメドゥーサの上位種の設定です。

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