表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あなたのそばにある道具  作者: blanker
夢半ばの万年筆
3/7

三話・万年筆について

万年筆って作家の道具っぽいよね

ちなみに作者は、いつも何かを書くときはシャーペンです。

あの雑貨屋を出て、僕は近くの書店で原稿用紙を買ったあと、夕食を買って帰宅した。

いつもはPCのワープロで書いているが、たまには手書きをやってみようということで、主人からおすすめされた万年筆を購入した。値段はあまり高くはなかったし、けっこういい買い物だったと思う。

この万年筆を買ったのは、まあちょっとした気分転換だ。

正直、PCか手書きかで作品の質はそこまで変わらないと思う。手書きの方がPCより書きやすい作家もいるようだが、僕はどっちでもいい方だ。

だからと言って、ずっと同じもので書くのは飽きてしまうこともある。最後の推理小説を書くんだし、気分変えというよりもちょっとした願掛けをする、みたいな感じだ。まあ、ほとんど信じちゃいないけど。

それでも、少しでも変化が欲しかった。今までみたいにあんなレベルのトリックじゃなくて、もっとだませるようなトリックを考え出したかった。

だから、ほんのちょっとでも変われるようにと、この万年筆を買ったのかもしれない。

ほんの少しでも、自分を変えられるようにって……



僕は、住んでいるアパートに帰って来たと同時に、執筆の準備を始めた。

準備をすぐに済ませ、夕食もいつもより早く食べ終わる。

お風呂も入り、体をふき終わった後。僕はすぐに執筆用のテーブルへと向かった。

「よいしょ……っと」

あの雑貨屋と打って変わって、あまり装飾品のない部屋。その中のにある二つのテーブルのうち、中央にあるテーブルの前に足を組んで座る。

暗い方が集中できるため、部屋の電灯は消していた。

ほとんど真っ暗な部屋の中、唯一明るく照らされているテーブルには照明、原稿用紙やPCでは使わない厚い辞書。そして、ついさきほど買った万年筆が規則正しく並んでいる。

これで執筆の準備はできた。後は書くだけだ。

さて、まずはプロットの考え出しなんだが……うん、万年筆に慣れたいし原稿用紙に書こう。

そう決め、書くために姿勢を整え、目を閉じる。

これで最後……その考えを振り払うように、大きく息を吸って……吐く。

……やるか。

自分で作った緊張の中、僕は慎重に万年筆を手に取って、原稿用紙の右上のマスに……置いた。




 その瞬間、持っていた万年筆が少しばかり輝きだした。

最初は青くぼや……っと光っていたが、僕が疑問を抱くより先に、突如、万年筆から一瞬で部屋を青く照らすほどの光があふれだす。

それと同時に、その光に持っていかれるように意識が離れていく。

視界がぼやけてくる。暗黒が迫ってくる。

それに反比例し、わずかな視界の中で万年筆の光が大きくなっていくのが見えた。

 そして、意識が消える直前。

『よし、じゃあ事件を起こそうか』

最後に、そんな声が、聞こえた気がした……





「……ん?」

……なにがあった?

ゆっくりと目を開ける。

すると、いつもの見慣れた部屋の天井が僕の目に映っていた。

ということは、ここは僕の部屋だ。

横にあるベット近くの机にに置いてある時計を見てと、執筆開始から約30分しかたっていなかった。

それを確認すると同時に、意識が徐々に浮上してくる。

僕は今、部屋の中央で大の字にあおむけで寝ていた。

どうやら、さっきまで僕は寝ていたらしい。

そうか。小説を書く直前に寝てしまったのか。

まったく、なぜあのタイミングで眠気が来てしまったんだ。これじゃあ、せっかく入れた気合が消えてしまったじゃないか。

「いてて……」

どうやら、寝るときに床に後頭部をぶつけてしまったようだ。

頭に手を添えながら起き上がりつつ、最後に見た夢を思い出す。

買ったばかりの万年筆が光りだすなんて、どんな夢なんだ。

少しばかり苦笑しながら完全に起き上がり、テーブルの上にある原稿用紙を見ようとする。

「はは、変な夢……だった……なあ……」

だけど、部屋には僕以外に動いているものがもう一つあった。

〈それ〉を見ると同時に、尻すぼみに声が小さくなっていく。

〈それ〉は……


原稿用紙の上で、文字を書いている、空中に浮いた万年筆だった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ