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【回想】皇女マルクリット・ティル・ブレイズの過去

※サイドストーリーとして、一人称で書きます。ご了承ください。

 私が生を受けたのは、とある帝国の片隅。華やかで豊かな国の、美しい花々が咲き誇る麗らかな春の日に私は産まれた。

 そこで、父親であるはずの男に、産まれた私が初めてかけてもらえた言葉は……たった一言だけだったそうだ。


「なんだ、女か」


 愛情のかけらも感じられないそのたった一言は、いままで父の非道に耐えてきた母の精神を壊すのには十分だった。



「お前など産まれなければよかったのに」


 幼い頃、私がなにか失敗したり気に入らないことをしたりしたときに、母は決まってそう言った。

 私を見ていると、どうしても父を思い出すと言って母は泣いた。

 母親は弱い人ではなかった。

 ……だが、強い人でもなかった。


 二人の間に生じた綻びは、いつのまにか繕えないほど大きいものになってしまった。

 母にそっくりの顔立ちに父と同じ色彩を持った私の存在は、成長するにつれ二人の間に和ではなく諍いをもたらした。


 両親が愛し合って産まれたはずの私が、なぜ二人に愛されないのだろう。

 私の問いに答えてくれる存在はいなかった。





――――――――――――――――――――――――




 数十年前まで、この国と隣国との間には戦が絶えなかった。

 この国は広い肥沃な大地に恵まれた、実り豊かな農業国。隣国は国土は狭かったが、鉱物資源に恵まれた技術の国であった。


 対照的な二つの国は、自国にない隣国のモノに憧れ、欲した。

 ――そして百年以上も続く、長い長い戦が始まった。

 戦が終わったのは、戦の始まりを知る民が一人もいなくなってから十年以上が経過してから。

 残忍なことで有名な、ある王国に攻め込まれたことで、二つの国の戦は終わった。

 二つの国の王たちは、残忍な王の部下たちに、守るべき国と民を蹂躙された。

 王の首が刎ねられ、晒された屍を見て、皆は惰性で続いていた戦の無意味さに気が付いた。


 戦は、幸せを生み出さないのだと、憎しみと悲しみしか生まれないのだと、ようやく解ったのだろう。


 そこから、二つの国は新しい一歩を踏み出そうとした。

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