帰り道で会ったのは
今は、帰りの道を歩いているところ。隣は車の通る道になり、その道を挟んでいくつかの店が並ぶ、商店街に涼成達はいた。
いつも、六十円のコロッケを買う精肉店を通り過ぎ、涼成達は望愛の事を話し合っていた。
「ばっかじゃねぇの? 俺たちがあいつの事を神の使徒だとか信じるとか……」
口の悪い熏晴は、不機嫌そうにして言った。
「とりあえず、話は合わせろ、あいつが機嫌を悪くしたら、火山がドカンなんだろう? 不機嫌にさせないためにもな」
玲一は言う。その時、熏晴の事を、ギロリと睨みながら言ったのであった。
「別に、俺不機嫌にさせるような事言ってねぇし」
熏晴は言う。それを聞いた涼成と玲一は顔を見合わせた。
「よし、分かった。望愛の前では、お前は何も言うな」
涼成は言う。
「なんだよ! 俺が悪いような言い方を、なんでされなきゃ!?」
あんのじょう、熏晴は全く気づいていない。こうなったら説明をしてやる必要がありそうだ。玲一が「ちょっとこいつと一緒に話してくる」と、言って路地裏に熏晴を連れて行っていた。
知らない人がそれを見ると、チビのオタクが、不良に人のいないところに連れ込まれている光景に見えるだろう。
それを感じた涼成だが、それを口にするのははばかられた。玲一に向けて、「お前、不良みたいだな」とは、言ってはいけないのである。
それを気にして、玲一は、部活にも入って、学校でも何も問題を起こさないようにしている。生徒指導の教師からも、品行方正であると、太鼓判を押されているくらいだ。
「キミ、涼成君でいいよね?」
そう、涼成は声をかけられた。
「おお! おっぱい!」
いきなりそう言い出す涼成に、涼成に声をかけた女性は答えた。
「誰がおっぱいですか!」
その女性は、胸が大きく、スーツが胸を収めきれておらず、大きく突き出している。涼成はそれに一気に反応を示した。
「おおっと、失礼、俺としたことが取り乱してしまった……」
「君は、常に取り乱しまくりでしょう。学校での君の噂は聞いているわよ。やっぱりこんな奴か……」
そう小さく言い、肩を落とすその女性。
「私は凛子。留都 凛子です。当鳥 涼成君に話があって来ました」
凛子が名刺を取り出す。その中身を見ると、名前が書いてあるだけだった。
「名刺って、こういうもんなんですか?」
涼成は言う。普通は、会社の名前とか、所属とかも書いているはずなのだ。
「私達の行動には、秘匿性が大きく、むやみに名前を晒すことができないの……」
その凛子の言葉に、涼成は、凛子の事を疑うような目で見た。
「それで、そんな隠さなきゃならない仕事をしている人が、一体何の用です?」
涼成は言う。
「さすがに疑われるね。まあ、ホイホイいう事聞くような奴だったら、それはそれで信用できないけど……」
それから、凛子は続けた。
「キミにまとわりついている望愛って子は、本物の神の使徒よ」
そう言い出す凛子。涼成は、驚ろかなかった。
「続けてください……」
涼成が言う。この話を聞き、凛子は続けた。
「その神の使徒に、君は好かれています。だから、彼女に人間の素晴らしさを教えてあげて欲しいの」
「人間の素晴らしさ……? あいつが神の使徒である事と、どう関係が?」
こう言われ、凛子は言う。どうも、こうやって、真面目な話をしたほうが、凛子もやりやすそうだ。
「あの子は、神からの命を受けていて、人間の素晴らしさを実感してこないと、世界を滅ぼすように言われているのです」
「世界を蝕む、ウイルスでしかない、人間に価値があるか? どうか? を調べるために、彼女はこの世界に降り立った」
そう言い、凛子の後ろから女の子が出てきた。涼成よりも小柄で、小学生くらいに見えるその子は、フードにマントという、日本には似つかわしくない格好をしていた。
「ふむ、不思議系ロリ少女とは、なかなかコアな属性を選んでくる」
その後ろから、熏晴が出てきた。余計な事を口走るのに、涼成は、イラついて振り返った。
『ちくしょう、このクズハル。今は、大事な時だっていうのに』
涼成は、空気を読まない熏晴の言葉に嫌気がさしながらも、その子の言葉の続きを聞いた。
「私はサラ……有り体に言えば占い師って事になる」
短く自己紹介をしたサラ。熏晴の事は完全に無視である。
「この巨乳ビッチのお姉さんもいいね。サドっけがありそうなところがまた……」
熏晴が言う。こういう事を言うから、熏晴は嫌われるのだということに、本人は気づいていない。玲一が熏晴の首に、腕を回した。
「また、説教をする必要があるか?」
玲一が熏晴の耳元で言う。そう言うと、熏晴も少しは堪えたようであった。
「わかったって……黙るよ……」
凛子も腹の虫が動き出したところであったようで、手を思いっきり強く握っていた。
「だから、私だけで行くって言ったけど……」
サラが凛子の事を見上げながら言う。
「いいえ……私にも、彼らに伝える義務があるから……」
凛子は忌々しげに言う。
サラは、その凛子の事を手で制して前に出てきた。
「最初から話すよ」
サラはそう言う。それで、涼成は黙って聞き、玲一が熏晴の首に手を回しながら聞いた。
あの、望愛は、神から遣わされた使徒である。彼女は、人間を裁くためにこの世界に遣わされた。望愛は、人間が素晴らしいものであるかどうか? 調べるために地球に降り立ったのだという。
「そのため、君らは、望愛に人間の素晴らしさを教える役をやってほしい」
サラが言う。
「素晴らしさって言っても……」
涼成は言う。そんな漠然とした言い方ではよく分からない。何をすればいいか? 見当もつかないのだ。
「深く考えなくてもいい。とにかく、望愛を楽しませればいいの。何か、楽しいことを教えてあげるくらいのつもりでやればいい」
サラは淡々と言う。
「私の占いでは、君たちは成功する事になっている。私も、ちょくちょくアドバイスに来るから心配しなくてもいい」
そう言い切るサラ。そうすると、サラは携帯を取り出した。
「私、名刺は持ってないの、携帯の番号を交換しよう」
そう言い、サラは涼成と玲一の二人と、番号の交換をした。
「俺は……?」
そう言い、寂しげにする熏晴。
熏晴の様子を、じっ……と見たサラ。熏晴は、それに威圧感を感じて、後退りをする。
「いや……なんでもありません……」
熏晴はたまらずにそう言う。だが、サラは「ふう……」と小さく溜息を吐いて、携帯を熏晴に向けて出した。
「番号の交換をしよう」
そう言うサラ。涼成と玲一は、それを見て、同時に言った。
「優しい子だ、サラちゃん……」
涼成と玲一の、サラに対する好感は上がったところで、サラは涼成達の前から姿を消していった。




