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世界滅亡少女  作者: 岩戸 勇太
素晴らしい世界
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占い師のサラ

 サラは、涼成達のところに戻っていった。

「サラたん……ボクに会いに来てくれたんだね」

 そう嬉しそうにして言う熏晴に、サラは体を硬直させた。

「熏晴……今日は相手をしているヒマはない……」

「なんだよ! こんな言い方無いだろう!」

 そう熏晴が泣きながら言うが、サラはそれを無視した。

『サラも、熏晴のあしらい方がわかってきたようだな……』

 そう考え、それを見て、『うんうん……』と頷く涼成。

 熏晴は、本気で泣いていたが、熏晴と付き合うのなら、いつかは通らなければならない道だ。無視する所は無視し、突き放すところは、突き放さないと、精神的にまいってくる。涼成だって、その熏晴を見ても同情も何もわかない。

「サラ……よくやった……」

 涼成がラサにそう言うと、サラは、コクリと頷いた。

「みんなに聞いてもらいたい事があるの……」

 サラは言い出す。ここには、涼成と熏晴の他に、満も望愛もメシアもいる。

「私、こんな事を言われてるの」

 サラはその事を全部話した。

 上層部は、望愛にスイッチを押させようとしている事。そして、サラには病気の妹がいて、その指示に従わざるをえない事。

「官僚の考える事って、昔から変わらないね。『やらせてみたら、結構簡単にできたじゃないか……なら、もっとキツい事もやらせてみよう……』って、現場の人間から見たら、無茶としか言えないような指示だって平気でするんだ」

「断る事ができないってのが……また……」

 熏晴と涼成が言う。

「二人の意見だけ聞くと、二次世界大戦の特攻の話でもしているようね……」

 呆れ顔の満が言う。

「望愛……スイッチを押そうなんて、考えてないわよね?」

 メシアが言う。

 望愛は首を横に振る。

「メシア……あなたみたいに、ちょっと人間の黒い面を見たくらいで、絶望なんかしないよ?」

「とりあえず、望愛の機嫌が悪いのはわかった」

 メシアは、自分に向けられた嫌味に、そう返した。

「サラ……どうしたい……?」

 望愛はサラに向けて聞く。

「スイッチを押して欲しくない……」

 サラの言葉は複雑な意味がある。この世界を、崩壊させないように、いままでがんばってきた。望愛にはただの友人以上の意識を感じていた。

 その子は間接的といえど、人殺しになるのだ。そんな事になって欲しくないのだ。

「でも、教えてしまってよかったの?」

 凛子が言う。あの騒ぎで帰ってしまったと思ったが、まだ国際展示場に残っていたらしい

「帰ったんじゃなかったのかい?」

 熏晴が凛子に言う。そういえば、熏晴が誰かに嫌味を言うのを聞くのは初めてだ。

 自分と、どっこいどっこいのクズの凛子を見て、涼成達の気持ちを、少しでも理解して欲しいものであると、涼成は思った。

 凛子は、熏晴の言葉など無視した。

「そんな事を教えちゃったら、望愛がそれこそ、この世界の醜さを見せつけられちゃうんじゃない?」

「でも、私は、望愛に教えたい。だからそうした……」

 望愛はこの話を聞いて、唸った。

「サラのためを想うと、押してあげたいような気がするけど……」

 望愛が言う。だが、それを聞いて血相を変えて言う。

「そんな事しちゃダメ! それを押すと、人殺しになる!」

 スイッチを取り出して、今にも押しそうな様子の望愛を見て、サラが言う。望愛はそれを見ると、スイッチをしまった。

「ならいいの? 妹さんの事は諦めるの?」

「そこなんだ……」

 サラはそこで頭を抱えた。

「妹の事は……」

 サラはそう言い出す。それに、熏晴はなにかもったいぶってメガネを直しながら言う。

「入院費が必要なら、稼げばいいじゃないか……」

 熏晴は言う。

 ペンをサラの眼前に突き出す。

「マンガを描けって事?」

 サラは熏晴の事を訝しげにして見ながら言う。

「ボクが熱烈に指導をしてあげよう! そうすれば、すぐにでも壁サークルに!」

 サラは生唾を飲み込んだ。

「さぁ……このペンを持つんだ。君はすぐにでも売れっ子になる……」

 熏晴がそう言うと、サラは熏晴の差し出してきたペンを持ちそうになる。

「まてまて! 確か、サラは占い師なんだろう!?」

 血迷った事を考えそうになっていたサラを、涼成は止めた。

「だけど、私の占いはみんな聞きたがらない……」

「当たるのか?」

 涼成が聞く。

「当たるに決まってる。私が涼成の町に望愛がやってくる事を言い当てたんだから」

 サラは、自信有りげにして言った。

「占いってのは、悪い事を聞きたいんじゃないのよ。みんな、この先に希望が持てるような話を聞きたいのよ」

「占いだから、当てないと……」

 凛子の意見を受けて、サラは言う。凛子は、それに溜息を吐いて答えた。

「みんなね……お金払ってまで嫌な事を聞きたいなんて思う人はいないの。いい内容を聞いて、いい気分になれれば、それで満足できて、『また来よう』って思うものなの……」

 凛子が言うのはもっともな事だ。誰だって、お金を払って嫌な話を聞こうなんて思わない。

「いい内容が一つも無いって事はないんじゃない? その事を言えばいいの」

 凛子はそう言う。サラは、それで唸った。

「予行練習をしてみるのがいいんじゃない?」

 凛子がそう言い出す。

 サラはそれに合わせて頷いた。

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