サラの苦悩
「結局、聞けなかった……」
サラは一人になって言った。
今は国際展示場の外に出て、うどん屋で買ったうどんをすすっている。
「なんだ? 不景気な面をして、何を考えているんだ?」
そこに玲一がやってくる。
「やっぱりサラだったか……」
「玲一……君も昼食?」
後ろに見たことのない女性を連れている玲一は、サラのテーブルに座った。
「こいつはサラ。日本語もできる」
そう、後ろの女性に声をかける玲一。その女性も、玲一の隣に座る。
「涼成達と、一緒にいないのか?」
玲一は聞いてきた。サラはそれに頭を抱えた。
「今、涼成達にいいにくい事を伝えるか? どうか? で悩んでて……」
サラは言う。玲一はそれを見てサラに向けて言う。
「悩みがあるなら聞いてやろうか?」
サラはそれ聞いて、唸った。
「この事を望愛には黙っておいてくれるなら……」
「まあ、そう言うなら望愛には言わないぜ」
サラはそれを聞いて、話し始めた。
「私は、望愛にスイッチを押させるように指示を受けた……」
それから説明をする望愛。そのスイッチが押されたら、世界がどうなるのか? そして、そんな事をする理由は何か?
それを玲一に伝えると、玲一は唸った。
「そんな指示、無視するわけにはいかないのか?」
そう聞く玲一。だが、サラは首を横に振る。
「実は、私には病気の妹がいて……」
サラは言う。元々、病気の妹を入院させるには、お金が必要で、サラが、今の仕事をする事を条件に、病院に入れてもらっているのだという。
「だから、無視するわけにも……」
サラはさらに続ける。
望愛はムカ着火ファイヤースイッチを押すという事はどういう事か? を、理解していた。地球の温度は下がり、農作物の生産は落ち、食糧難の世界になる。
つまり、そのスイッチ一つで、多くの人間が死ぬのだ。
「私は、望愛に『人殺し』になれなんて言えない……」
だが言わなければ、病気の妹は、病院から放り出される。そうなってしまえば、薬を買う金にすら難儀をする事になるだろう。
「妹は死ぬかも知れない……」
サラはそこまで、玲一に説明をする。玲一はそれを聞いて、唸った。
「俺だったら、そんな状況になったら、押してもらうだろうな……」
玲一の返事に、サラは玲一の事を「ぎょっ……」とした顔で見つめる。
「俺は見ず知らずの人間より、一人の肉親の事が大事だぜ……」
それを聞いたサラ。そうしてしまえばいいのではないか? と、いう考えがサラの頭をよぎった。だが、くびを横に振る。
「できない、人を殺してまで生きる事なんて、妹は望んでいない」
サラは言う。
「玲一らしい答え……私がもっとお金を稼げるようなら……」
サラは言う。
「稼げばいいんじゃないか? お前は占い師なんだろう?」
玲一は言う。
「そんな簡単にはいかない……」
「そりゃ簡単じゃねぇよ。どんな事だってそうだ。俺は簡単に無責任な事を言ったつもりはねぇよ」
玲一の言葉に、顔を上げたサラ。
「占い師でやっていくのはそりゃ簡単じゃねぇよ。だけど、それでもやらなきゃならないんだったら、やるしかねぇだろう……」
そう言う玲一。その言葉にサラは、さらに考え込んだ。




