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世界滅亡少女  作者: 岩戸 勇太
人間の素晴らしさ
36/40

サラの困惑

「待った……まず世界の滅亡を止めるのが至難なのに、そんな難しい要求まで……」

 サラは深刻そうな顔をして、電話をしていた。

 ここは、国際展示場の休憩所だ。ベンチには人が隙間なく座っており、座ることすらできない状況である。

 その休憩所の隅っこにサラがいた。サラは電話をしている所だった。相手は、サラに、世界の滅亡を止めるように指示をしている、この国お偉いさんである。

 そのお偉いさんは、今のサラと望愛の状況もわからずに、サラに指示を出してきたのだ。

『天使との仲は良好だと言うじゃないか。ここで一つお願いをしてみるだけだ……』

「確かに、世界の滅亡を止めるのは上手くいきそうな状況ですが……そんな事をやらせたら……第一、天使に向けて、何と言えばいいのですか?」

『言い訳の内容は、そっちが上手く考えてくれ。それくらい給料は出しているだろう?』

「天使の接待役の涼成はお金をもらっていません」

『不満があるなら、いつでも代金の請求をしてくれればいい。元々、こっちは払うつもりだったんだし、いいだろう?』

「涼成は純粋に善意で協力をしてくれているんです。そんな事を指示されてしまうと、彼の気持ちを踏みにじる事に……」

『彼のご機嫌を取る必要がどこにある? 天使のご機嫌さえ取ればいい話じゃないのか? 彼が参加してくれるか? は、大した問題じゃない』

「天使は涼成の事を信頼しきっています。涼成の機嫌を損ねることは、天使の機嫌を……」

『もう、そんな話はいい! これは、決定事項だ。全力で使命を完遂してくれ』

 その言葉を最後に、電話は切られた。

「これはマズい事になった……」

 サラは苦い顔をしてそう言った。

 これを涼成に伝えても、望愛に伝えても、いけない事だ。本部は、サラ達が、簡単に事を運んだように見えていることだろう。だが、事はそんなに簡単じゃない。

 電話を置いたサラは考えた。こんなバカげた事なんて、何と言って涼成や望愛に伝えればいいのだろうか? と、考える。

「ここで黙っていたら……私が……」

 サラは、あいつらに人質を取られているようなものだ。だから逆らうことはできない。この事を、どう処理すればいいだろうか?

 そう考えて、サラは頭を抱えた。


 サラは涼成達のいるところに向かった。

 そこには、望愛と涼成、熏晴に満がいた。四人は仲良くしており、まるで旧知の親友達のように見えるほど仲がよさそうだった。

「よう、サラ」

 声をかけてくる涼成。サラは涼成の顔を、まともに見る事ができなくて、頭を下げた。

「望愛……」

 重い口を無理やり開きながら、サラは言った。

「この世界の火山がそこらじゅうで爆発を始めたら、この世界はどうなると思う?」

 望愛はそれを聞いて、キョトンとした。

「農家さんが困っちゃう?」

 望愛は言う。そもそも、サラがそんな質問をしてきた理由さえ分からないのだ。こんな返事になるのは仕方がないだろう。

「もしかして、私がムカ着火ファイヤースイッチを押した時の話をしようとしている?」

 望愛がそう聞いてくる。そう、それが気になるのだ。

 望愛がもしムカ着火ファイヤースイッチを押したらどうなるか? それを望愛が理解しているか? を、まず知りたかったのだ。

 サラ達の見立てではこうだ。

 世界各地の火山が爆発をしたら、噴煙が空に上がり、世界の空は、噴煙で覆われる。その噴煙は十年でも二十年でも空を漂うような軽い、小さな埃のようなものである。

 その小さな埃が空に舞い上がり、空を漂い続けると、地球全体の温度が下がる。

 その温度がニ、三度下がっただけで、この世界は激変するだろう。

 世界の海の海流は、停滞をして、海の水の掻き回される速度は遅くなってしまう事から、世界に異変は始まる。

「そう……だよね。それだけ大それた事なんだよね……」

 サラが言う。

 とにかく、この世界で食糧不足が深刻になってくるだろう。

 まず野菜が採れなくなる。そうすれば、野菜の値段が高騰してしまう。そうすると、牛を育てる飼料だって高くなる。

 そうなれば、牛乳や牛肉の値段にも影響が出る。

「日本ではこんなところかな……」

 サラは考えながら言う。そう、これは日本の話だ。ほかの国、外国では世界の気温が下がるというのは、そんな悠長は話では、済まされない。

 作物の育ちが悪くなると、多くの国で、飢餓が起こる。

 多くの貧しい家の子供たちが餓死をするだろう。

 農学をまったく知らぬ者達が、作物を作っているのである。作物の育ちが悪ければ、畑を広げる事を考えて、野山を焼いて、畑を作るだろう。

 そのようにして作られた畑は、数年でダメになってしまうため、ダメになったら、野山を焼いて新しい畑を作る。

 これが繰り返され、捨てられた土地は砂漠化をする事もある。

 砂漠になってしまえば、もう、草が生える事はなくなり、緑化をしようとすれば、何倍も苦労をすることになるだろう。そのうえ、野山を焼き続けると、場所が足りなくなり、土地の奪い合いが始まる。

 お互いに土地を手に入れる事ができなければ、飢えて死ぬことになるのだ。殺し合いになることだって当然ある。

「貧しい国々では、間違いなく、多くの人が死ぬことになる。

 飢えで死ぬか? それとも殺し合いで死ぬか? その差くらいのものだ。

 この国のお偉いさんは、サラにこう指示を出した。

『望愛にムカ着火ファイヤースイッチを押させるように』

 今は、工場で農産物を生産することが可能だ。

 水栽培のように、特殊な液体に、作物の根を浸らせて、光を当てる。そして、二酸化炭素を多く含んだ風を当て続けるのだ。

 植物が育つために必要なものは、水、二酸化炭素、温度の三つである。その三っつを高水準で揃えれば、グングンと農作物は育っていくのだ。

 虫や、作物の病気の事を考えなくてもいい、画期的な方法である。

 だが、これは、まだ普及をしていない。だが、土に農作物を植えても育たなくなったのなら、この方法が、必ず脚光を浴びる事になるだろう。

 もっと低コストで作物を育てる方法だって確立をされるかもしれない。世界の気温が下がることは、工場で作られる作物達を、一般に認知させる事ができるようになるだろう。

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