涼成と望愛のペアコス
涼成と望愛は、ペアの衣装を着て、一緒になって、コスプレ広場を歩いていた。
「ここで立ってれば、写真を撮らせてください! ってくるだろう?」
「そうなのかな?」
望愛が言うのに、涼成は笑う。
涼成達の地元の山の噴火はまだ続いており、ここにもその影響は広がっている。
空を見ると、どんよりと煙がかかっており、その煙のおかげで、太陽の光は適度に遮られ、過ごしやすいくらいの気温になっているのだ。
「農家の人は冷害とかを心配しているんだろうが……俺達にとってはありがたいことだな」
涼成は言う。
「冷害?」
望愛は、そう聞いてきた。良性は言う。
「気温が下がると、作物の育ちが悪くなるからな。キャベツなんて、最悪らしいぞ。葉が丸まって、灰を中に取り込んでしまうんで、葉っぱ一枚一枚を水で洗浄しなきゃならないらしい」
涼成が言う。
「火山を噴火させるだけのつもりだったのに、私って、結構みんなに迷惑をかけちゃったのかな……?」
「だが、それがお前の仕事だったんだろう?」
そう涼成が言うと、望愛はコクリと頷いた。
「人間は滅亡をさせるべきだって思っている人も、たくさんいると思うぞ……メシアみたいに……」
涼成は言う。
「この世界の裏側なんて、綺麗なものでも何でもない……と、言っても俺は見たわけじゃないがな……」
表の面だけしか見なくても、それは感じることはできる。犯罪はなくならない。むしろ、最近は増えてきている。
「だけど、人ってのはそういうものだよ。悪い奴もいるけど、いい人だって、いっぱいいる。どこの世界でもそういうものじゃない?」
世界が汚れているのは、しょうがない事。こういう正解だからこそ、優しさが尊く思えるし、楽しいことが貴重に思える。
「お前って意外と深いことを言うんだな……」
涼成はそう言った。そう言い、ケラケラと笑ったのを見て、望愛は涼成の耳を掴む。
「涼成……私の事をバカだと思っているでしょう?」
「ああ……バカそうだって思っているな」
耳を掴まれているというのに、果敢にそう言う涼成。涼成は、思いっきり耳を引っ張られた。
「痛い、痛い……」
涼成が楽しそうにしてそう言うのを見て、望愛はまた楽しそうにして笑った。
「私は世界を滅亡させる力を持っているんだぞ。そんな態度をとってもいいのかな?」
望愛は冗談めかして言った。涼成は笑いながら答える。
「そいつは、失礼をいたしましたでごんす。この世界を滅亡させるのは、やめてくんろ」
涼成は、そう言って、クスリと笑った。
二人はそれがおかしくなって、笑い始めた。望愛も、涼成も、この事がおかしくなってきたのだ。
「あのー? 取り込み中ですか?」
その二人に、声がかけられた。カメラを持った人だ。
「いいですよ。ポーズを取りますね」
そう涼成が言う。
「望愛、二巻の表紙で行くぞ」
「うん」
そう言い合い、二人は一緒にポーズをとった。その人は、それを写真に収めると、「ありがとうございました」と言って去っていく。
涼成はそれがたまらなくおかしくなって、望愛と一緒に笑っていた。
「熏晴。そっちはどうだ?」
ひとしきり、遊び終えた涼成達は、普段着に着替えて熏晴が売り子をしているブースにまでやってきた。
「まったく……満さんの才能には驚かされるね。飛ぶように売れていくよ」
山のように積んであった本も、あとわずかになり、熏晴の持っている手提げ金庫にも、お金が溜まっているようである。
「部長? どうだった? 売れてる?」
「ボクのより売れているくらいだよ」
「おー、部長のものより売れているなんて、絶好調ですね」
そう言う満の隣には、本を数冊抱えたメシアがいる。
「この世界に、こんなに素晴らしいものがあったとは……」
そう口から言葉が漏れる。
「この世界の素晴らしさを理解してくれたってことかな?」
望愛が言うと、メシアは、ブンブンと首を縦に振った。
「まったく、この世界のためと考えれば、これくらい安いものだけど……遠慮なく買いすぎじゃない? 財布がもうヤバいって……」
満が言う。一応世界の事を考えてくれていたようであった。メシアに見たい本を買い与え、見事に、メシアをこの世界を存続させる方に持っていくことができたのだ。
「なら、金庫の中の金に手を付けるかい?」
そう言い、熏晴は手提げ金庫を、満の前に出した。
「そういや、そのお金があったっけ……このままじゃ、帰りの電車賃が、足りなくなるところだったよ……」
満はそう言いながら、金庫の中身を見た。
「っていうことは、もっと買えるってことじゃん!」
メシアが嬉しそうにして言うのに、満は顔を引きつらせた。
「お手柔らかに頼むよ……」
メシアは、手提げ金庫をひったくって、人ごみの中に消えていく、それについていく満。
「大丈夫か……? 帰りの電車賃の分まで使ってしまわないか……?」
涼成はすこし不安になりながら言う。
最悪の場合になったら、涼成は、自分の帰りの電車賃の分くらいしか、持っていない。満に貸す分は無いのだ。
「涼成、キミはそんな事まで気にしなくていいよ。電車賃の分は、こうやって、とっておいてあるから……」
そう言い、一枚の封筒を取り出して、涼成に見せつけた。
「お前が、こんな気を回せる人間だとはな……」
涼成が言うと、熏晴はムッとして答えた。
「きみ、ボクの事を馬鹿だと思ってないかい?」
「おお! バレたか? お前って、頭がアニメとゲームで腐っている奴だとばかり思っていたぞ」
「きみだって、頭の中は完全に真っピンクで覗きの事しか、考えていないような奴だと思っていたさ」
涼成と熏晴は、お互いにそう言い合い、にらみ合った。
だが、すぐにお互いに笑いあった。お互いに、こんなバカげた事でケンカしているのがおかしくなったのだ。
「いいよね……男の友情って……」
そう言う望愛。それを聞いて、熏晴は、驚いて望愛の事を見た。
「もしかして、望愛たんはそういう趣味が……」
そこまで言うと、望愛は素早くハンマーで熏晴の事を殴った。
「まだ、何も言っていないのに……」
「不埒な事を言おうとしていたのはお見通しよ!」
望愛はハンマーを肩にかけながら言う。涼成は、このいつもの光景を見て、ほのぼのしたものを見た気分になり、クスリと笑ったのだ。




