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世界滅亡少女  作者: 岩戸 勇太
人間の素晴らしさ
35/40

涼成と望愛のペアコス

 涼成と望愛は、ペアの衣装を着て、一緒になって、コスプレ広場を歩いていた。

「ここで立ってれば、写真を撮らせてください! ってくるだろう?」

「そうなのかな?」

 望愛が言うのに、涼成は笑う。

 涼成達の地元の山の噴火はまだ続いており、ここにもその影響は広がっている。

 空を見ると、どんよりと煙がかかっており、その煙のおかげで、太陽の光は適度に遮られ、過ごしやすいくらいの気温になっているのだ。

「農家の人は冷害とかを心配しているんだろうが……俺達にとってはありがたいことだな」

 涼成は言う。

「冷害?」

 望愛は、そう聞いてきた。良性は言う。

「気温が下がると、作物の育ちが悪くなるからな。キャベツなんて、最悪らしいぞ。葉が丸まって、灰を中に取り込んでしまうんで、葉っぱ一枚一枚を水で洗浄しなきゃならないらしい」

 涼成が言う。

「火山を噴火させるだけのつもりだったのに、私って、結構みんなに迷惑をかけちゃったのかな……?」

「だが、それがお前の仕事だったんだろう?」

 そう涼成が言うと、望愛はコクリと頷いた。

「人間は滅亡をさせるべきだって思っている人も、たくさんいると思うぞ……メシアみたいに……」

 涼成は言う。

「この世界の裏側なんて、綺麗なものでも何でもない……と、言っても俺は見たわけじゃないがな……」

 表の面だけしか見なくても、それは感じることはできる。犯罪はなくならない。むしろ、最近は増えてきている。

「だけど、人ってのはそういうものだよ。悪い奴もいるけど、いい人だって、いっぱいいる。どこの世界でもそういうものじゃない?」

 世界が汚れているのは、しょうがない事。こういう正解だからこそ、優しさが尊く思えるし、楽しいことが貴重に思える。

「お前って意外と深いことを言うんだな……」

 涼成はそう言った。そう言い、ケラケラと笑ったのを見て、望愛は涼成の耳を掴む。

「涼成……私の事をバカだと思っているでしょう?」

「ああ……バカそうだって思っているな」

 耳を掴まれているというのに、果敢にそう言う涼成。涼成は、思いっきり耳を引っ張られた。

「痛い、痛い……」

 涼成が楽しそうにしてそう言うのを見て、望愛はまた楽しそうにして笑った。

「私は世界を滅亡させる力を持っているんだぞ。そんな態度をとってもいいのかな?」

 望愛は冗談めかして言った。涼成は笑いながら答える。

「そいつは、失礼をいたしましたでごんす。この世界を滅亡させるのは、やめてくんろ」

 涼成は、そう言って、クスリと笑った。

 二人はそれがおかしくなって、笑い始めた。望愛も、涼成も、この事がおかしくなってきたのだ。

「あのー? 取り込み中ですか?」

 その二人に、声がかけられた。カメラを持った人だ。

「いいですよ。ポーズを取りますね」

 そう涼成が言う。

「望愛、二巻の表紙で行くぞ」

「うん」

 そう言い合い、二人は一緒にポーズをとった。その人は、それを写真に収めると、「ありがとうございました」と言って去っていく。

 涼成はそれがたまらなくおかしくなって、望愛と一緒に笑っていた。


「熏晴。そっちはどうだ?」

 ひとしきり、遊び終えた涼成達は、普段着に着替えて熏晴が売り子をしているブースにまでやってきた。

「まったく……満さんの才能には驚かされるね。飛ぶように売れていくよ」

 山のように積んであった本も、あとわずかになり、熏晴の持っている手提げ金庫にも、お金が溜まっているようである。

「部長? どうだった? 売れてる?」

「ボクのより売れているくらいだよ」

「おー、部長のものより売れているなんて、絶好調ですね」

 そう言う満の隣には、本を数冊抱えたメシアがいる。

「この世界に、こんなに素晴らしいものがあったとは……」

 そう口から言葉が漏れる。

「この世界の素晴らしさを理解してくれたってことかな?」

 望愛が言うと、メシアは、ブンブンと首を縦に振った。

「まったく、この世界のためと考えれば、これくらい安いものだけど……遠慮なく買いすぎじゃない? 財布がもうヤバいって……」

 満が言う。一応世界の事を考えてくれていたようであった。メシアに見たい本を買い与え、見事に、メシアをこの世界を存続させる方に持っていくことができたのだ。

「なら、金庫の中の金に手を付けるかい?」

 そう言い、熏晴は手提げ金庫を、満の前に出した。

「そういや、そのお金があったっけ……このままじゃ、帰りの電車賃が、足りなくなるところだったよ……」

 満はそう言いながら、金庫の中身を見た。

「っていうことは、もっと買えるってことじゃん!」

 メシアが嬉しそうにして言うのに、満は顔を引きつらせた。

「お手柔らかに頼むよ……」

 メシアは、手提げ金庫をひったくって、人ごみの中に消えていく、それについていく満。

「大丈夫か……? 帰りの電車賃の分まで使ってしまわないか……?」

 涼成はすこし不安になりながら言う。

 最悪の場合になったら、涼成は、自分の帰りの電車賃の分くらいしか、持っていない。満に貸す分は無いのだ。

「涼成、キミはそんな事まで気にしなくていいよ。電車賃の分は、こうやって、とっておいてあるから……」

 そう言い、一枚の封筒を取り出して、涼成に見せつけた。

「お前が、こんな気を回せる人間だとはな……」

 涼成が言うと、熏晴はムッとして答えた。

「きみ、ボクの事を馬鹿だと思ってないかい?」

「おお! バレたか? お前って、頭がアニメとゲームで腐っている奴だとばかり思っていたぞ」

「きみだって、頭の中は完全に真っピンクで覗きの事しか、考えていないような奴だと思っていたさ」

 涼成と熏晴は、お互いにそう言い合い、にらみ合った。

 だが、すぐにお互いに笑いあった。お互いに、こんなバカげた事でケンカしているのがおかしくなったのだ。

「いいよね……男の友情って……」

 そう言う望愛。それを聞いて、熏晴は、驚いて望愛の事を見た。

「もしかして、望愛たんはそういう趣味が……」

 そこまで言うと、望愛は素早くハンマーで熏晴の事を殴った。

「まだ、何も言っていないのに……」

「不埒な事を言おうとしていたのはお見通しよ!」

 望愛はハンマーを肩にかけながら言う。涼成は、このいつもの光景を見て、ほのぼのしたものを見た気分になり、クスリと笑ったのだ。

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