メシアに人間の素晴らしさを伝える。
「こうなったら、あのメシアってのにも、『人間の素晴らしさ』を知ってもらわないとな……」
涼成はそう、隣を歩いている望愛に向けて言う。
あれから、望愛は普通の服に着替え、涼成と一緒になって帰り道を歩いていた。
「メシアにも……難しそう……」
望愛は考えた。メシアは、この世界を嫌っている。そこから、この世界の素晴らしさを教えようというのは、難しいのものように思える。
「多分……そんな懸念は必要ないと思う……」
涼成には考えがあった。それは完全に短絡的な考えだ。成功するかしないか? は分からない。
「多分うまくいくんじゃないか?」
涼成は言う。
「私は何をすればいい? 手伝えることがあるなら言って……」
そう、言ってくれる望愛に、涼成は、頭をポンポンと叩いた。
「お前は上手くメシアの事を連れ出してくれないか?」
そう言う涼成。望愛はそれを了承した。
「俺の作戦は……」
涼成が言う。望愛はその作戦に首をかしげた。
「熏晴が言っていたんだよあの子には、オタクの素質があるって……」
熏晴のそういう勘は、面白いように当たるらしい。 望愛は、その作戦を聞き、乗り気ではない感じで言った。
「まあ、やるだけやってみましょ」
次の日、涼成は、熏晴のところに集まった。
「あれ? 望愛ちゃんは?」
そう言った熏晴。
「俺の事は眼中になしかよ……」
そういう涼成。熏晴はそういう奴だというのは、身にしみてわかっている。いまさら気にするようなものではない。
涼成は熏晴にかまうのは止め、周りを見回した。
「ちょっとついてきなさい」
「何があるって言うのよ!」
その声を聞いた涼成は、大きく手を振った。
「こっちだ! こっち!」
涼成が手を振るのを見つけた望愛は、涼成のところに向かってきた。
「あの子も一緒かい?」
熏晴が言う。今、望愛は、あのメシアも一緒にここまでやってきていたのだ。
「ここだよ……ここにある本を読んでみな」
そう言う望愛。メシアは一冊の本を手にとった。中身を見ると、どんどん顔つきが変わっていく。
「こ……これは……」
そう言い、望愛の事を見たメシア。
「ここまで反応があるとは思っていなかったよ」
望愛は、引き気味で言った。
「おや? 私のマンガを気に入ってくれたんですか?」
そう言う満。涼成は、満の描くマンガの内容は涼成は分かっている。
「こういう、女同士のチョメチョメものを、気に入ってくれると思ったよ」
涼成は頷きながら言う。満はそれを見て、メシアの手を取った。
「私のマンガはそんなに面白いですか?」
鼻息を荒くしてメシアの手を取る満。そして、メシアも、満の手を思いっきり強く握り返した。
「あなたが書いたんですか……」
満はそれを聞き、メシアの手を思いっきりつよく握った。
「ほらな……熏晴の見立てはよく当たるだろう……」
涼成は、望愛に向けて言った。望愛はまったく納得できないといった感じだった。
「現実でできない事を、虚構の世界で疑似体験し、性欲を抑えるなんて、みんなしている事さ」
「途中で、言葉を止めるのを忘れてた……」
「今の言葉までなら、ギリギリセーフじゃないか?」
望愛と涼成は言う。
二人は体の力が抜けきっている感じであった。メシアはこの世界を滅亡させようとしていたが、これで、そんな気持ちも無くなるだろう。
「そんで、後で聞いてみればいい。この世界の素晴らしさを、体感できましたか? ってな」
「笑顔で、肯定する、メシアの姿が、容易に想像できる……」
涼成は、望愛がそう言うのを聞いて、頷いた。
「次はお前の番だぞ」
そう言い、涼成は、一つのカバンを望愛に渡した。
「これは?」
「俺とお前の分のコスプレ衣装だよ」
そう言い、涼成はニヤリと笑った。




