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世界滅亡少女  作者: 岩戸 勇太
人間の素晴らしさ
33/40

片付け中

 望愛は、ひとしきり熏晴の首を絞めると、とりあえずは気が済んだようだ。

 もう今は、コミケの終わりの時。満と熏晴の二人は片付けをしているところであった。

 その二人の様子を見ながら、望愛は言う。

「あいつは何だったんだ?」

 涼成が望愛に向けて言う。

「逃げられたって言っているでしょう?」

 望愛はいろんな会話を、すっとばして言う。

 望愛の様子は、あれからとてもおかしい。いつもは天真爛漫で、むしろバカッっぽく見えるくらいだが、今の望愛は明らかに沈んでいる。

「言いたくないならいいが……」

 涼成が言う。望愛は涼成から顔を外した。

「メシア……三百年前にこの世界を調査するためにこの世界にやってきた」

 望愛は言う。

「その頃に富士山が爆発をしたらしいね。宝永大噴火……って言うらしい……」

 サラが言う。

「その噴火が、また起こらないとも分からないのよ。今のままだと……」

 凛子が言う。望愛は首を振った。そんなつもりは無いというのを示したのだが、それでも凛子は納得をしていないようだ。

「メシアは、人間の闇の部分を多く見ているの。前にこの世界に降り立ったとき、殺されそうになったって……」

 まだ治安の良くなかった時代だ。かどかわしなどの犯罪も多く、それに、巻き込まれたのだろう。

「この世の地獄だったって……」

 それを聞くと、涼成も頷く。

「それで……何をしに現れたんだ?」

 涼成が聞く。望愛はさらに沈んだ顔をした。

「多分、今度こそ世界を滅亡させるために……」

 望愛は言う。メシアは、望愛の持つスイッチを取り上げて、押そうとしたらしい。

 今回は免れたが、これから先もある。今度は、スイッチを押されてしまうかもしれいない。

「だけど、お前以外の人間がスイッチを持つと、砂に変わって手元に戻ってくるって……」

「普通にスイッチを奪われただけじゃそうなるけど、それだって完璧じゃないの。他に押す方法があるかもしれない」

 望愛は言う。そう言い、さらに沈んでいた望愛は、思案をするようにして、頭を下げた。

「このスイッチは押されるわけにはいかない……」

 そう言いながら、望愛は、自分の持っているスイッチを撫でた。

 まるで、自分の子供を撫でているような優しい手つきであるように、涼成には思えた。

「しかし、なんであいつは覗きなんかやったんだ?」

 空を飛べる人間なんて、望愛とメシアの二人しかいない。望愛は違う。この状況を見るに、覗きの犯人はメシアしか居なくなる。

「別に不思議なことじゃないよ。メシアって、昔から女の子が好きで、男を嫌っているところがあるから」

 望愛が言う。

「そうなのか……」

 こんな返事は、望んでいなかった。

 あまりにも、救われない返事でがっかりした涼成。女の着替えを覗いたのは、単純にメシアの性癖であったのだ。

「わかるわぁ……」

 その話を聞いて、「じーん……」といった感じで恍惚の顔をしている満。

「エサをあげちまった……」

 涼成は言う。満は、自分の世界に、完全に浸ってしまっている。その妄想の中身は、涼成は、正直聞きたくない。

「いったいどのような妄想をしているんだい?」

 涼成がそう思っているところに、熏晴は聞く。

『こいつは……俺がいらないと思っている事ばかりを次々と……』

 涼成はそ考えて熏晴の事を睨むが、熏晴はいつも通り、まったく聞いていない。

「そ、れ、は……あの子のちっぱいお胸を揉んであげて……」

 これから妄想を話し出す満。

「ちょっと嫌がるけど、大きな抵抗はしないメシアちゃん。『良くなっているんじゃないの?』と優しく語りかけてあげると、小さく頷いてくれるメシアちゃん。そこからフルブースト! 『どう? 優しいでしょう?』そう聞くと、メシアちゃんは黙って頷いてくれるの! そう、そのまま私達はこの世の天国へ!」

 それを、聞いた望愛は、耳をふさいで震えていた。

「何よ、きしょい……」

 そう、思わず口から言葉が漏れる望愛。

 それを、ジトリとした目で眺めている涼成。

「もう気は済みましたかね……?」

 涼成がそう聞いてくるが、満はそれを無視して話し続ける。

「それから、メシアちゃんも気を許し始めてくれて、『ねぇ……キスしよっか』って私が聞くと、目を閉じて顔を近づけてくれるの。それから、私も目を閉じて……禁断の愛の始まりよ……」

 そう言う満。満から目を逸らし、しゃがんで耳をふさぐ望愛。

「俺がホモの妄想を聞かされているようなもんかな……」

 涼成も、その話を聞いて面白いと思うわけもない。満が語るのに顔を逸らし、涼成は望愛と一緒になって望愛の耳をふさいでやった。

「いいねぇ……最高の妄想だよ思わず……」

「それ以上言わせるか!」

 熏晴に後ろから掴みかかり、続きの言葉を止めたサラ。

 望愛の耳を一緒になって抑えている涼成と望愛。熏晴の次の言葉を止めるために熏晴に掴みかかっていくサラ

この様子は、衆人監視の元に晒されているというのに気づいた凛子。

 周囲を見回した凛子は、彼らの行動を必死になってとめるかと思えたが……

「私、関係ないし……」

 そう小さく言葉を話した後、他人のふりをして、その場から離れていった。

 それに気づき、この場を収めようとしたのは、『こんな目立ったことをしていては、明日の満のブースを立てるのに支障が出るかも知れない』と、考えた熏晴であった。

「何やってるの! 満を止めないと!」

 熏晴は、そこで真面目モードになり、涼成と望愛を正気に戻した後、満の事を正気に戻すために肩を揺さぶった。

「満君……やめないか……」

 そう熏晴が言い出したのに、涼成も乗っていく。

「満! その妄想は明日にとっておけ!」

 涼成も一緒になって言う。

「こうなったら、さっさと眠らせたほうが……」

 望愛が言って、ハンマーを出そうとする。

「それも使うな! 下手したら警察ざただぞ!」

 こんな周りに人が多い場所で、ハンマーなんかを振り回したら、えらい事になる。涼成がそう言って止めたら、望愛はハンマーをしまった。

 熏晴は業を煮やして、満の口を塞いだ。

「やめなって言っているだろう!」

 熏晴がそうすると、周りからブーイングが起きた。

「なんだ! もっと聞かせろ!」「ここで寸止めなんて、鬼畜すぎる!」「そうだそうだ! 聞かせろ!」

 それから、周囲の人らは、「きーかせろ! きーかせろ!」と言って、コールを初めていった。

「そうだった! こういう場所だった!」

 そう言った熏晴は、満から手を離した。

「お好きになさってください。満様……どうぞ続きを……」

 そう言うと、満はテーブルの上に座った。

「どうだい、あんたたち、続きを聞きたいかい?」

 なんか、どっかの女王様と言わんばかりのポーズをとった満。

「聞きたくねぇよ!」

「言わなくていい!」

 涼成と、望愛は、そう言った。だが周りから一斉に声が聞こえた。

「続きをどうぞ!」

 その声に押された涼成と望愛。

 これを止めるべきだった熏晴は、今望愛の前で四つん這いになり、望愛に背中を踏みつけられていた。

「こういう場所なのか……」

 涼成が言う。望愛は人垣を掻き分けて、ここから逃げていき、涼成も、それに続く。

 後ろから、歓声が聞こえてくるのを聞きながら、涼成達は、その場から逃げていった。

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