人間の素晴らしさ
涼成は、メモを頼りに、熏晴達の事を探した。
「見ればわかるでしょう? あの壁とかに、アルファベットが書いてあって、テーブルにも数字が……」
涼成に、一緒についてきた凛子が言う。それを頼りに、メモに合う場所に行く。
そこには満が座っていた。
「あのセクハラメガネじゃないの? 似ても似つかない上に、あのメガネチビとは比べようもない、美少女が……」
「熏晴の事を、ディスるなぁ……」
熏晴の事を、これでもかとバカにする凛子。良性だが、熏晴に嫌悪感を覚える理由は、身にしみてわかる。ここで凛子に何を言われたところで、涼成が気にするものではない。
「望愛の姿もないな……」
問題の望愛は、この場には居なかった。
涼成は、満に聞いた。
「なあ、望愛はどこに行ったんだ? あと、これはそんなに知りたいわけでもないんだが、熏晴もどこにいったんだ?」
俺の言いように苦笑をした満。
「部長の事をそんな風にいうと言いつけるよ……」
そう始め、満は言う。熏晴は、自分の買い物に行っているらしい。満は、店番をさせられているというのだ。
「あのクズハル……人に店番をやらせて、自分は遊び呆けているのか……」
相変わらず最低の奴だ。そう思う涼成に、後ろに居た凛子も同意する。
「明日は立場が逆転するからいいのよ。明日は、私が描いたマンガを売る売り子を部長がやって、私は買い物に行くから……」
それを聞く涼成。
「まあ、そういう約束か……」
それなら、納得もできる。そこまで考えたところ、熏晴がこの場に戻ってきた。
「満君? 商品は売れているかな?」
「そこそこですよ、はい、今日の売上……」
そう言い、満は熏晴に売上を渡す。
「なかなかじゃないか、前回よりも多くなってる。ボクのサークルも有名になってきた証拠だね、これは……」
そう言う熏晴。熏晴は、それから荷物を置き、お金を持って、去っていってしまった。
「俺達に挨拶もなしかよ?」
涼成は言う。ただ、熏晴は、ずっと涼成の事を見てニヤリと笑っていた。『ボクはこんだけ稼いでいるんだぞ』と、言いたがっているのが、顔に書いてある感じだ。
ここは熏晴のホームグラウンドだ。ここでは、ヒエラルキーはどう考えても涼成の方が下である。
「納得できないな……」
そう考えているところ、凛子が言い出す。
「望愛の事は聞かないの?」
そう言われ、涼成は思い出した。
「望愛ちゃんなら、コスプレに着替えたら、コスプレ広場の方に飛んでいっちゃったよ」
「コスプレ広場って、どこにあるんだ?」
涼成の質問は、満を苛立たせたようだ。
「そんな事も調べずに……」
満はそこまで言うが、続きは言わなかった。
「あっちとあっち。中庭と駐車場がコスプレ広場になってるの。望愛ちゃんがどっちにいるか? は、わからない」
両方行ってみるしかないようだ。涼成は、まずは近くにあるという駐車場の方に向かった。
その頃、望愛は、思いがけずに人に会い、不機嫌な顔をしていた。
ここは、ビッグサイトの中庭。そこに、コスプレをした玲一がいた。
玲一は、『嫌な奴に見つかった……』と、いった感じで、顔を伏せていた。
「おい……チンピラ……」
望愛は、玲一に向けて言う。
「誰がチンピラだ……」
玲一はそう言うが、望愛の事を見たくもないといった顔をしていた。
「何よ、この子……」
玲一の隣にいた女性が言う。
「私の玲一君を、会うなりチンピラとか呼び出して?」
そして、その女性は、望愛に食ってかかっていった。
「まだ学生だっていうのに、年齢を偽ってホストをやっているっていうだけで、充分チンピラでしょう?」
望愛は言う。いままで、言いがかりで玲一につっかかっていたワケでもなかったらしい。
「玲一君は、家の事情で働かなきゃ……」
「政府からの支援をもらってくらせば良かっただけでしょう? わざわざ好き好んでホストなんてやっているから、チンピラだというのよ」
望愛は言う。それを来た玲一は、言葉を失った。
「何よ! あなたは玲一君の事を何も知らないくせに!」
そう言い、望愛とその女性は睨み合う。
「千紗さん、俺の事はいいから……」
玲一がそう言い、玲一の客の女性、千紗の事を止めようとする。
「望愛…さっさとよそに行ってくれないか? そういう話がしたいんなら、後でいくらでもしていいが、今はやめてくれ」
そう言う玲一であった。
望愛は不満がまだ残っているのがわかる感じで、小さく鼻を鳴らしながら玲一の前から去っていこうとした。
「あのー! 一枚撮らせてもらっていいですか?」
そう言う。コミケの参加者がいた。
「みなさんお揃いで!」
そう言うのを聞く望愛。
「私も?」
そう聞くと、その人は、カメラを持ちながら、大きく首を縦に振った。
「ちょうど……そのキャラをやれる人が足りなかったんだけど……」
千紗が言う。このコスプレは、三人集まってこそ真価があるようなものらしい。
望愛はそれを知ると、玲一達の隣に立った。
「はいー! ポーズお願いします!」
何も知らない、参加者の女性は、カメラを構えながらそう言う。
望愛はそれに釣られて、玲一と、千紗と望愛は、三人で、ポーズをとった。
「望愛……ちょっと違うらしいぞ……」
その最中に玲一が言う。それに首をかしげた望愛の手を、千紗がとった。
「こうやって……手を握って……」
言われるままに、望愛は、ポーズをとりなおす。
「あと、笑って……」
千紗が言うと、望愛は不器用ながらも笑顔を作った。
「二巻の表紙ですね! ありがとうございます!」
そう言い、参加者の女性は狂ったようにして、カメラのシャッターを切った。




