満の策略
あの攻撃で、満は最高に幸せそうな顔をしてのびていた。
それでも怒りが冷めやらない様子の望愛は、大きく肩で息をしながら、満に向けて手をかざしていた。
「やめろ! それ以上やったら!」
そう言い、涼成は、望愛の事を止めた。望愛は涼成に飛びついていった。
その、魔法少女の衣装は、体のラインにぴっちりした服になっており、豊満な望愛の胸が、薄い布一枚だけで覆われているのだ。
だから、背中に胸を押し付けられると、望愛の胸の感触がダイレクトに涼成に伝わる。
それで、涼成は、顔を赤くして固まっていた。
「下の方も固くなっているかい?」
マンガを書きながらも、そう聞いてくる熏晴。
「聞くな……」
そう涼成は答える。
「何の話をしているの?」
望愛が聞いてくる。望愛には、この言葉の意味が、分からないようだ。分かってしまったら。また「涼成のスケベ!」などと叫んで、電流で涼成を攻撃し始めるはずである。
「なんでもないさ! さぁ! 望愛は制服に着替えたらどうだ?」
ぎこちない顔をして言う涼成。今の話の意味を悟られたら、血を見ることになるので、気付かれないようにしなければならない。
「望愛ちゃんの胸が涼成の背中に当たっている感触で、涼成はボッキしているんだよ」
そこに熏晴が言う。
「このクズハル……」
隠していた事なのに、熏晴は簡単にバラしてしまう。熏晴の言葉を聞いて、望愛は一気に顔を赤くした。
「涼成のスケベ!」
そう言った望愛は電撃を手に発生させた。
「床で寝ていると風邪をひくよ」
熏晴が言う。今、涼成は満と一緒になって、床に倒れていた。満はまだ目を覚ます様子ではないが、涼成は、ムクリと体を起こした
「このクズハル……誰のせいだと思って……」
涼成は熏晴に向けて、抗議の声を出すが、熏晴は、まったく気にしていな様子だ。
「どんなマンガ書いているんだよ……」
望愛はあれから、この部室から逃げ出していった。望愛が居なくなった事で、ほかの部員達は、やる気をなくして帰っていった。
残っているのは、マンガを書いている熏晴と、伸びていて動けない満だけである。
「ボクは将来マンガ屋になりたいと思ってるんだ。だから、みんなに喜ばれるようなものを目指している」
熏晴にしては、マトモな事を言い出したものだと、涼成は思う。
「それで? どんなものを書こうとしているんだ?」
「エロ同人だ……」
「お前……まだ十六歳だろ……」
熏晴は、高校生だというのに、不謹慎なものを描いている。涼成は、熏晴の事を見て、溜息を吐いた。
「マンガ屋はマンガを書くとき、何を考えるべきだと思う?」
熏晴は言う。やはり、人に喜ばれるようなものを書くべきだ。
「その時代で流行り廃りがある。その雑誌ごと、レーベルごとに、合う内容と合わない内容がある。それに合わせて書く事が、マンガ家の考えるべきことだ。すべては読者のために書く事を忘れちゃならない」
「コミケではエロ同人が売れるから、それを描いてるって?」
「そういう事さ。読む人を楽しませる事を考えたら、それは、当然考えることさ。何も問題はない」
「『問題はない』って言葉が出てくる時点で、お前は自分が、問題行動をしているのを自覚しているだろう! 高校生が部活でエロ同人を書くな!?」
涼成がそこまで言ったところで、部室のドアが開けられた。
「コスプレ研究会! 話がある!」
いつもの風紀委員の顧問の教師だ。
「こんなかっこうで、校内をウロウロさせるな!」
その教師は、望愛の手を引いていた。望愛はさっきの魔法少女のコスプレのままだった。
体にピッチリと張り付く服装で、しかも、そこらじゅうで肌を露出させている。
このかっこうで学校をウロつかれたら、当然教師が怒りに来るだろう。
のびている満の事を見た教師は、ギロリと涼成と熏晴の事を見た。
「また、お前が絡んでいるのか……? 当鳥……」
「今回は、俺は何も……」
そう言うが、教師は完全に涼成を疑った顔で見ている。まったく涼成の事を信じていないという顔だ。
「おい……起きろ……」
のびている満の事を起こそうとする教師。
「ん……」
そう言い目を覚ます満。
「誰にやられた?」
教師が聞く。
「涼成と熏晴部長……」
「ちょっと待て! 何を言ってる!」
涼成と熏晴の二人は、同時にそう言った。満を倒したのは望愛のはずなのに、そう言い出した。
そして、ギロリとした目で、熏晴と涼成の事を見た教師。
そして、涼成は見た。満の顔は、ニヤリと笑って口の端を釣り上げていた。
「当鳥、熏晴……二人共職員室に来い……高天原にこの衣装を無理やり着せたのもお前らだな?」
教師はそう言い出した。それを聞き、顔をニヤつかせてこちらの事をうかがう満。
涼成達が連行されるのを確認した満は、小さく涼成達に手を振っていた。
「満ちゃんめ……今度会ったら絶対調教してやる……」
「アホか……まだ職員室前だぞ……」
そう言う涼成。
「熏晴! 聞こえたぞ! 今度は何をやる気だ!」
「ひえええぇえ! 何でもありません!」
教師の声に怯えた熏晴。
「すぐに部室に戻るぞ……」
満は、涼成と、熏晴の二人を締め出した。理由は単純。満は、望愛と二人きりになりたかったのだ。
「望愛が心配だ。また満さんに、セクハラでもされてなきゃいいが……」
「そうだな! そんないい絵が見られそうなら、すぐに行かなきゃな!」
熏晴はそう言う。
「本音がダダ漏れだ……」
涼成はそう言うが、それよりも望愛の事が大事だ。涼成は、すぐに部室に向かっていった。




