サラに会いに来た熏晴
「りょりょりょ……涼……涼成! なんでサラたんと一緒にいるんだ!?」
『熏晴が余計な時になてやってきた』そう考えながら、熏晴の方を見る涼成。そして、サラはすごく嫌そうな顔をしていた。
「こんにちは、熏晴」
とりあえずは、挨拶をするサラ。涼成のいる場所からは、サラが思いっきり拳を握っているのが見えた。
だが、熏晴には、全く見えていないのだろう。
サラの顔を、ニヤついた顔でじっ……と、見つめる熏晴。
そこまで顔を見ているなら、サラが嫌がっている事も察してやればいいというものだが、熏晴は、そんな事はつゆにも思っていないのだろう。
その熏晴は、涼成の背中に、洗剤を塗っているところを見たようだ。
「まったく、涼成がサボっていないか? 監視をするために来たんだけど、こんなラッキーな状況になっているなんて、なんて羨ましいんだ! ボクもサラちゃんに、背中にサンオイル塗ってもらいたい!」
自分の願望に素直な奴である。そういうものは心の声として、自分の胸にしまっておくべきであるのに……
「涼成、変われ! やはり、着ぐるみは、コスプレ研究会の備品だ! 部長のボク自らが、洗ってやる!」
「本音を言った後に、建前を言うとか、斬新だな……」
そして、服を脱いで、サラに背中を突き出してくる熏晴。サラは涼成の事を一度見たが、首を振って熏晴の背中に目を戻した。
サラは、熏晴の背中に洗剤を塗っていった。
「ああ! いいよ!その小さくて短い指で触られると、体全体に電流が走る。冷たくて柔らかい手が、たまらなく気持ちいいよ!」
熏晴がそう言う。すると、サラは、涼成の方を向いた。
『無理……もう無理……』と、言わんばかりに、ひきつった顔で首を横に振っていた。
「熏晴、俺に交代だ」
俺はそう言い、熏晴の背中に洗剤を塗る係を変わる。
「たくましい手! 小さくて細い指も良かったけど。大きくて無骨な手もいい!」
熏晴の発言に、涼成は身を引いた。
「キショイ……そういえば……もうサラはいないぞ。部室に戻ったらどうだ?」
涼成が言うと、熏晴はいきなりメガネを直した。
「着ぐるみを洗うのは君の役目だろう? なんでボクに手伝わせているんだい?」
「うぜぇ……こいつ」
小さく唸った涼成は、うんざりしながら言う。
「着ぐるみを洗うのに戻るさ……」
いまさら、こいつのクズさを気にしてもしょうがないと思った涼成は、体に洗剤を塗りつけた。
その間、いつの間にか熏晴はいなくなっていた。サラがいなくなったので、ここにもう用はなくなったのだ。
ここに残っているのは、もう凛子だけだ。涼成はそれを見て、面倒に思った。
『と、いうか、なんで凛子は帰らない……?』
凛子一人で、ここに残って、やれる事などないはずだ。その凛子は、涼成の事を「じー……」と見ていた。
「やっぱり貧弱ね……」
そう言って、ひとしきり満足をした感じの凛子は帰っていった。
「あの人もけっこうクズだな……」
涼成は、あの熏晴と凛子の二人のクズの事を見て溜息を吐いたのだった。
二つ目の着ぐるみも洗い終え、涼成は、校舎の裏側にその着ぐるみを置いてきた。
携帯で調べたところ、雨は当分降らないとの事なので、着ぐるみに『触らないでください』と、いう張り紙をつけて、涼成は部室に戻っていった。
涼成が、部室に戻ると、望愛の事を探した。
「望愛はどこなんだ?」
俺は、本気になってマンガを書いている熏晴に言う。
「うるさいね、今取り込み中なのがわからないのかい?」
熏晴は言う。さっきまで、ペンを走らせていた手を止められたのが、不機嫌の理由だろう。執筆中に声をかけられると、
そう考えるが、熏晴は、更衣室の方を向いた。
「男子禁制らしい。せっかく望愛たんのコスプレが見れると思ったのに……」
それを聞くと、涼成は、更衣室の中から、携帯のシャッター音が聞こえてくるのに気がついた。
「はうぅ……涼成、早く来て……」
そう声が聞こえてくる。涼成は、望愛の言葉を聞いて、中の様子がどうなっているか? なんとなく分かった。
女子たちが望愛を囲んで記念撮影をしているのだ。そして、その中心にはこの状況に慣れずにいる望愛がモジモジしている。
「俺はここにいるぞ……」
更衣室の前に立ち、そう言う涼成。望愛はそれを聞くと、すぐに飛び出してきた。
「涼成! みんな怖いよ!」
そう言い、涼成の後ろに隠れる望愛。
「おいおい……君ら、望愛ちゃんが、世界を崩壊させる神の使いだっていうのを忘れてないか?」
熏晴が言う。みんなからハブにされたので、イラついているのだろう。
「その設定の事は、今はいいでしょう? 今はこの子は、悪を倒す、正義の魔女っ子レリカちゃんよ!」
そういう設定の衣装であるようだ。だが、高校生に魔女っ子なんて、無理があると思われる。
「高校生が魔女っ子に憧れたっていいじゃない! 女の子はいつまでも、幼い幼女のままよ! 魔女っ子を目指す権利はだれでも持っているわ」
「わからん……全く分からん……」
満がそういうのを聞いて、涼成はそう思った。
「やるなら、自分でやったらどうです? あなたもなかなかいい線いっていると思いますよ」
満の事を見て言う涼成。満は喋らなければ、そして、コスプレ研究会に近づかなければ、モテる事だろう。
満は、望愛と比べても遜色ないくらい、胸も大きいし、顔だっていい。
涼成は、満の事を見ながら言うが、満は「プイッ……」とそっぽを向きながら言う。
「嫌よ、そんなかっこう恥ずかしいじゃない」
それを聞くと、涼成の後ろにいる望愛は怒った。
「なぁぁぁあ! 自分じゃ恥ずかしいことを、私にやらせてるんかい!」
そう言い、望愛は満に飛びかかっていった。
その望愛を止める涼成。望愛は満の目と鼻の先にまで、手を伸ばしているところだった。
「やめろ! 冷静になれ!」
涼成が望愛の事を止める。そこに満は、顔を期待で輝かせた。
「私を攻撃する時は、『レリカスプラッシュウウウウゥゥ』って叫んで攻撃してね」
「やっぱ、攻撃してもいい。ボッコボコにしてしまえ」
そう涼成が言うが早いか、望愛は手元に電撃を発生させた。
「望み通りにしてあげるわよ! レリカスプラッシュウウウウゥゥ!」
望愛はそう叫んで、満に向けて、電撃を飛ばしたのだった。




