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世界滅亡少女  作者: 岩戸 勇太
コミックマーケット
21/40

涼成は着ぐるみの洗いに

 それから、涼成達はコミケの準備に入った。部室は、コスプレ研究会の面々の放つ、異様な活気に包まれていた。

 望愛は、できあがった衣装のサイズ合わせのために、何度も更衣室にまで向かっていった。

 そのたびに、「おおー! これはいいね!」とか、「これが真の私だー!」などと、声をあげる望愛。望愛もちゃっかり楽しんでいるようである。

「俺はなんで、こんなものを着ていなきゃならない?」

 涼成は言う。まだコミケまで九日もあるというのに、今のうちから着ぐるみを着ている。

「まったく……何も仕事をしないで愚痴ばかり。ああいう奴がいると、みんなのやる気にかかわるね」

 ジトリとした顔をしながら、涼成に向けて言う熏晴。

「一人だけぼけっと突っ立っている奴がいると、目障りなんだよ。何か? 仕事はないのかい?」

 そう言われ、涼成は縮こまった。着るものはもう決まっている。

「この、臭い着ぐるみを着るんだし、俺は仕事が終わっているようなもんだろう?」

 涼成はそう言う。それに熏晴が前に進み出てくる。

「何が、『臭い着ぐるみ』だって? 君は、相変わず余計な事を言うね……」

 熏晴が言う。

「わかった、すまん……」

 確かに借りたものを『臭い着ぐるみ』なんて言うのは失礼極まりない事だ。

 涼成は熏晴から言われた言葉に、両手を合わせて謝った。

「ふん、まあ涼成がいちいち余計な事を言うのは、今に始まったことじゃないし、そんな事くらいじゃ、この心の広い熏晴様は怒ったりしないけど……」

 それを、涼成はありがたく聞いた。

 無論、『余計なことばかりを言うのは、むしろお前だろう』と、心の中では思っているのだが……

「そんなら、涼成。ボクが部長として命令を出す」

 熏晴が言う。涼成の事を、ビシリと指さしながら言った。

「どうせなら、うちの備品の着ぐるみを洗いたまえ!」

 そう言われ、涼成は、いくつかのきぐるみを受け取って部室から出て行った。


 着ぐるみを洗うのは大変だ。

 涼成は、着ぐるみの洗い方の説明書を、熏晴から受け取っていた。まず、自分の体に石鹸を付ける。

 そして、着ぐるみに入る。

 着ぐるみの中に入ったらよく動く。自分の体をブラシの代わりにして着ぐるみの中身を洗うのだ。

「すぐに泡が死ぬ……」

 全く泡立たないのを見て、涼成は自分の体に、さらに洗剤を塗る事にした。

 洗剤を塗るため一度着ぐるみを脱ぎ、体が洗剤でヌメヌメになると、また、着ぐるみに入っていく。

「涼成。取り込み中ごめん……」

 そこにサラがやってきた。

「なっ……サラ! いつの間に!」

 今の涼成はパンツ一枚である。今は着ぐるみを着ているが、さっきまで着ぐるみを脱いで体に洗剤を塗っていたのだ。

「その時も見えた……一言で言えば、貧相」

「やかましい!」

 涼成は着ぐるみを着ながら言う。

「サラだけではなく……えーと……りんこ……いや、おっぱいさんも来たんですか?」

「凛子で合っているわよ! なんでわざわざ言い直したの!」

 その凛子の事をサラは見上げた。

「だから、私一人でいくって……」

「ええ! 言われたわよ! だけど私だけ何もしないわけにもいかないでしょう!」

 涼成から見れば、本当に凛子は何をしているのか分からない。涼成達に連絡をするのは、全部サラだし、この前だって、熏晴のセクハラを受ける覚悟で電話をしてきたり、会いに来たりしている。

「まあ、りん……おっぱいさんも、そんな事気にしないでいいですって」

 涼成が言う。これは完全にワザとだ。それを感じた凛子は、これ以上話をしていても無駄であると理解したらしく、咳払いをして話を始めた。

「どう? 望愛とは楽しくやってる?」

 凛子が聞いてくる。

「そうですね。望愛は楽しそうにしていますが、オレにとっては……いや、そんな事関係ないですね」

「そうね、望愛が楽しんでいればそれでいいわ」

 凛子が言う。今の言葉を聞いて、サラは言う。

「凛子って隠れたゲスだよね」

 サラがいきなりそんな言葉を言ったのに、凛子と涼成の二人は驚いた。

「涼成、別になにか面白くないことがあるんだったら、言ってもいいんだよ。関係ない話だって、話しちゃいけないって事じゃないんだから」

 サラがそう言う。サラは、やっぱり気を使ってくれる。

「ありがとうサラさん。それにひきかえ、あの脳にまわすための栄養が胸にばっか、まわっていった人は……」

 涼成が言う。

「それ、セクハラよ……訴えてやろうかしら」

「だから、私一人で行くって……」

 サラは言う。それに、凛子は唸った。最初から、サラだけで行くと言われていたのに、無理矢理ついてきた凛子である。ここで、文句を言っても自分の首を絞めるだけである。

「涼成と親睦を深めるために努力をしているのに、りんこ……おっぱいは余計なことばかり言って……」

「サラ! あなたまで、私の事を『おっぱい』と呼び出すの!?」

 サラは、涼しい顔をしている。

「なあ、あの人はおっぱいでいいだろう? サラはわかってるな……」

 涼成は、サラの肩に手を回した。それに合わせて、サラも俺の肩に手を回してくる。

 涼成とサラは、それに妙な一体感を感じ、同時に笑った。

 凛子は、それを不思議な顔をして見ていた。

 サラに比べれば、凛子は、どうも仲間意識が低いと、思ってしまう。

「ついていけないわ……」

 この期に及び、そう言ってくる凛子。やはり、仲間意識が希薄な人間なのだろうと思ってしまう。

「二人共、私をダシにして楽しんでいるだけでしょう?」

 凛子がそう言うと、涼成とサラは同時に言う。

「それの何が悪い?」

 そして、凛子は、うんざりしたような顔をして、涼成とサラの事を見つめていた。

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