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世界滅亡少女  作者: 岩戸 勇太
望愛を楽しませよう
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コミケを開くこと

「コミケの事さ。サラちゃんが、コミケを開いてくれるんだろう?」

 熏晴が言うのに、涼成も思い出した。確か、『コミケのことを調べてくる』とか言っていたっはずだ。

『その話……ちょっと調べてみる』

 そう言っただけだ。サラはコミケを開くなどと、一度も言ってない。

「部長……はやまった事を言うと、自分の首を絞めますよ」

 涼成は、そう言う。

「何の事を言っているんだい? もっとわかりやすい日本語を言わないと分からないよ」

 そう言う熏晴。最後に涼成の事をバカにするようにしてニヤリと笑った。

「ちょっと、他に人のいないところで話そう」

 そう言い、涼成は、熏晴の手を掴んだ。

「なんだい? ここじゃダメなのかい? なんで、いちいち移動をしなきゃいけないのかな?」

『この、クズハルは……』

 涼成はそう思う。サラが、手を回しているとか、望愛が世界を滅亡させる力を持っている事まで話さなければならなくなるだろう。

「本当に空気がよめねぇな……こいつ……」

 涼成はたまらずそう言った。

「コミケがいきなり開催される事になったのについて、部員達には、なんて説明したんだ?」

 涼成が聞くと、熏晴は言う。

「おいおい、ここでそんな話をしちゃいけないだろう……本当に空気の読めない奴だな」

 これみよがしに、小声で言ってくる熏晴に、涼成は拳を握りこんで答えた。

「空気が読めないとか……お前に言われたくないぞ……」

 涼成がそう言うが、熏晴はまったく意味がわかっていない感じであった。

「もういいわい……」

 涼成はそう言い、熏晴に背を向けてコスプレ研究会から外に出ていった。そして、望愛も、それについてきたのだ。

「部長……何を怒らせてるんですか?」

 熏晴の背後から、満が声をかける。

「望愛ちゃんの体を、合法的に触れるチャンスだったのに……」

 満はメジャーを持ちながら言う。

「衣装を作るのに、どうしても、仕方なく、望愛ちゃんのサイズを図らなければなりません。部長らしく、望愛ちゃんをこっちに連れてきてください」

 熏晴に、ぐっっと顔を近づけて言う満。

 熏晴はそれに押されていた。熏晴は、どうやら満には弱いのだろう。

 満にそう言われると、熏晴はすっ飛んで、望愛の事を探しに行った。


 コスプレ研究会から出ると、涼成の携帯が鳴った。

「サラからだ……」

 涼成がそう言うと、望愛は、涼成を疑うような目で見た。

「サラと仲良いの?」

 涼成は別に仲がいいというほどのものではない。

 ラサは、涼成に、世界の滅亡を止める役割を与えているし、涼成はサラのアドバイスを聞いて、望愛のご機嫌をとる。

「お前も聞くか?」

 望愛が涼成の事を疑うような目で見るのに、たまらず涼成は、近くにあった棚に携帯を置いた。

 望愛がコクリと頷くと、涼成は、携帯を繋いだ。

『涼成……あれから、コミケってものの事を調べてみたけど……』

 そう声が聞こえるのに、望愛はじっと携帯を見た。

『コミケってすごい大きなイベントだね。あんな大掛かりのものを、わざわざ開かなくても、コスプレ大会でも開けば十分じゃないの?』

 サラは続ける。

 あれだけ多くの人を動かすイベントだ。一人一人に、根回しをするような事はできない。だが、もっと小さくまとまったイベントにすればやりようはあるのだという。

『だから、コスプレ大会を開いて、望愛に優勝してもらうとかどう?』

 サラは言う。審査員を買収して、望愛を優勝させて、ご機嫌をとってみるというのはどうだ? と。

「それは悪くないアイデアだと思うが、今回は使えない」

 涼成が言う。涼成は望愛の様子をチラリと見るが、望愛は『不本意』といった、感じの顔で、しかめっ面をした。

「望愛がこの話を聞いているからだ」

「なっ……なんで望愛も聞いているの……?」

「まあ、成り行きで?」と、適当に答える涼成。普段、物静かなサラであるが、さすがに驚いていた。

「サラ、お前、望愛から疑われてるぞ、もっと、普通に望愛を接する事はできないか?」

 涼成がそう言う。電話の向こうのサラは黙考するようにして黙った。

「これが、私の接し方……」

 少しの逡巡の後に、そう答えた。サラはこれ以上この話を続ける気はないといった感じだった。

「私、そんな方法で優勝なんかしても嬉しくないよ」

 望愛がそう言う。望愛も空気を読んだのだろう。話題を変えようとしたのだ。

『望愛も、結構優しいやつだな……』

 などと、涼成も思う。サラはこれを機に話を、元に戻した。

「とにかく、コスプレ大会の件は、諦める。その代替案は、またこれから……」

 そこで、熏晴が言ってきた。

「だから、コミケだって! こんな非常時に何を金をけちっているんだい?」

 電話を持って言う熏晴。

「おい熏晴……お前はどこから湧いて出た……?」

 涼成が言うが、熏晴は涼成の前に、手を出して、涼成の言葉を止めた。

「オタクの本懐を知るには、絶対にコミケだよ! あの中での一体感を感じたら、もう病みつきになるしかないよ!」

 そう言い出す熏晴。それを聞いたはずのサラであるが、全く反応がない。

「熏晴の演説は厳しすぎたか……」

 涼成がそう言うと、小さいながらも声が帰ってきた。

「コミケを開くしかないんだね……」

 サラから、渋々といった感じで声が帰ってきた。

「どうせ資金の事が心配なんだろう? そんな心配はいらないって! 元は十分取れるはずだから!」

 そう言う熏晴。サラは熏晴の話を聞き、黙考をした。

「もう一度申請してみる……」

 サラは、難しそうな感じだった。それを後押しするようにして、熏晴が言う。

「大丈夫、絶対に後悔はしないって、サラちゃん達の衣装だって用意してくるよ? だから、君の身長とスリーサイズを……」

 その直後に電話が切れた。

「なんでいきなり電話を切るのさ! これからが大事なところなのに!」

「いや、当然だろう……」

 なにがいけなかったのか? 全くわかっていない熏晴を、涼成は冷たい目をして見つめていた。

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