報酬はいらない
「望愛……どんな事がやりたい?」
登校中。今は周囲にはビルが立ち並ぶ歩道を歩いていた。涼成が望愛に向けて聞いたが、望愛はそれに気のない返事を返す。
「別に? 私は、この世界の事を調査するのが目的だし、見たままの事を調査するつもりだよ?」
そう言う望愛。特に何も勧めなければ何もする気はないだろう。
女の子が喜びそうな部活といえば何だろうか? そう考える涼成に玲一が声をかけた。
「茶道とかどうだ? お菓子を食べれるから結構人気あると思うぞ」
「そう考えると、料理部とかはどうだ? お菓子とか関係なく、いろんなものが食べれるし……」
「それなら……これならいいんじゃ……」
涼成と玲一は、望愛が楽しそうと思うだろう部活を次々にあげていった。
当の望愛が、何かをする気が無いようでは、考えようがないというのがある。
「とにかく、運動部はダメだ。運動部の女子たちからは、お前は嫌われてるし、お前が一緒に入って近くでサポートをできないと……」
「そうだよな……」
そう言って、望愛に人間の素晴らしさを伝えないといけない涼成と玲一は、必死になって考えた。
「えへへー。いったいどんなものを見せてくれるのかな?」
望愛は言う。それに玲一はむっとした顏をした。こっちが必死になっているところに、高見の見物を決め込む望愛。
だが、望愛はまったくそんな事を考えているような雰囲気ではなかった。
純粋に、涼成と玲一が何を見せてくれるか? 楽しみで仕方がないという顏だ。
「しっかし、世界を救って、報酬も無しって事はないんじゃねえの?」
玲一が言う。この世界の危機に、そんな事を考えるのは不謹慎だと思うだろう。
だが、それは、人の本音だ。ここまで頑張っても、何もないじゃ、すぐにやる気が萎えてくるだろう。
そこに涼成の電話が鳴った。
「また、サラからだ……」
涼成はそう呟いて、電話を取る。
『すまない涼成。重要な話をし忘れていた』
サラがそう言う。
「何の話だ?」
涼成はそう聞く。そう涼成が聞くと、サラは話し始めた。
『報酬の話……望愛に人間の素晴らしさを教える事ができたら、百万単位の報酬を払う。頑張っても何も見返りなしじゃ、頑張れないだろう?』
そう言ってくるサラ。玲一はそれを聞いて言う。
「もらっちまえ。別に、向こうが報酬を出すって言ってんならいいじゃねぇか」
玲一の言葉に、涼成は苦い顔をした。
「報酬なんていらない。俺は世界の崩壊を止めるために動いているだけだ。それで、報酬をもらうのは、なんか違う気がする……」
涼成は言う。玲一はキョトンとした顏をした。電話の向こうで、サラも同じような顔をしているのだろうというのが、涼成には分かった。
少しの間の無言の後、電話の向こうでサラが、「くっくっく……」と笑っていた。
「まったく、君が望愛に好かれる理由が少し分かった気がする。こんな考えを持つ人間がいるなんて思っていなかった。純粋だな……」
その言いようには嫌味だって含まれているだろう。それに気づきながらも、涼成は首を横に振った。それはサラには伝わっていないだろう。だが、サラはそれを分かっているようにして言う。
「本当に無報酬でこんな面倒な事をする気? 世界を救った英雄にもなれるというのに?」
それでも涼成は、報酬はいらないと言った。
サラはそれで気持ちよい返答をした。
「最初はなんでこんな奴に羽が見えるんだ? って、思って疑問だった……まあ、一応言っておく。もし、気が変わって報酬がほしくなったのなら、いつでも言ってくれ」
そう言った後、サラは電話を切った。
「気なんか変わるか……」
そう言った涼成。そう言い、電話をしまった後、玲一から背中を叩かれた。
「やっぱ、お前って最高だぜ」
玲一が、そう言うのに、涼成は、頭の上に疑問符を浮かべた。
「ふつう言えねぇよ、あんな事。なんかスカッっとした気分だ」
そう言い、玲一は、前へと歩いていく。
「こんな事くらいで、そんな事まで言うもんじゃない」
涼成はそう言い、学校にまで歩いて行った。




