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警護

さて、今日は仕事である。われらがボスの身辺警護だ。どうやら、30階建てビルの最上階でSISの会議をするらしい。ビルの最上階で、窓は防弾ガラス張りである。中には円卓と幹部10人ほど。その部屋の中でドアの横にじっと立って護衛してろという話らしい。お偉いさんばかりだというので、スーツとサングラスをかけ、髪形をワックスで整えている。SISの会議ということは、英国紳士ばかりなのだから。ついでに耳にイヤフォンも。


とは言ったものの、自分自身、ろくな装備があるわけではない。日本で銃はご法度だ。ということで、支給された小型拳銃、"SIG SAUER P228"を密かに携帯している。悪い銃じゃない。むしろスイス製の値が張る銃だ。何が不満か。それは、拳銃がライフル銃に対抗できるはずがないということである。映画のように、現実は甘くない。拳銃ひとつで、何人もの重装備の兵士を倒すことは不可能だ。つまるところ、心もとない。


英語同士の会議でもろ内容がわかるのだが、特に大したことは喋っていないらしい。懇談というか、親睦を兼ねた会議というか。まあ国家機密チックなことを話していたら、まず部屋に入らせてもらえないだろうが。


もうすぐお昼時にさしかかり、会議がもうすこしで終わろうとしたその時、

「在你的面前!当心!狙击手!」

イヤフォンから佐藤の声が漏れてきた。狙撃手、前を見ろ!?なんでこんな時に限って中国語なんだ!

「Get Down!!!!(伏せろぉ!)」

反射的に声を出していた。お偉いさんと言っても全員元スパイ、全員躊躇なく伏せて、机などに身を隠す。


俺も身を隠して、佐藤と通信する。

「佐藤、敵の状況は?」

といった瞬間、弾が飛んでくる。誰にも当たらなかったが、ガラスを突き抜け、ドアにあたってつぶれていた。最初の無線が来てから、この間わずか数秒。

「敵は撤退したよ。」

と彼の流暢な日本語が無線機から耳に流れてくる。


臨時で会議を解散したその後、ビルの入り口で待っていた佐藤のところへ駆けつけた。

「お前の無線がなかったら、誰かしら死んでいた。ありがとう。」

「ほかのビルでシギントをしていたんだ...。お前のサポートのために。そしたら...ロシア語が聞こえてきた。日本語なまりの女性のロシア語が。で、双眼鏡で360度見渡したら、はるか遠くに狙撃手がいた。」

「はるか遠く...?」

はるか遠方から、防弾ガラスをライフルで破った...。

「約2㎞。使っていた銃はおそらく...。」

『"PTRD1941"』

お互い同じタイミングで同じことを言った。

"PTRD1941"、ロシア製の大口径ライフル。一般のライフルは、せいぜい射程距離が1000mである。だがこの銃は...数km先から装甲車を破壊することができる恐ろしいライフルだ。口径は14.5mmと非常に大きく、人体に当たれば着弾箇所の周りが消し飛ぶ。殺すべくして生まれた銃だ。

「ロシア語ってことはFSBか...?」

俺は忘れかけていた疑問を問いかける。

「ああ、たぶん間違いない。どうやらFSBのシギントに盗聴されてたらしい...。こっちもあっちを盗聴してやったんだけど。英語や日本語じゃダダ漏れになると思ってとっさに中国語にしたんだけど...。効果はあったようだね。」

その数秒が命を救った。いったいFSBは何のために...?


その女は、カチューシャなのか...?

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