表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/8

シュガー

さて、バイトは終了1時間前が勝負だ。体力、集中力を奮い立たせなければならない。どんなに疲れていようが、レジ係は大きな声で接客、そしてあふれんばかりのスマイルが必要だ。

「ありがとうございました!」


午後10時前。ありとあらゆる人が来る時間帯だ。ヤンキー、仕事帰りのおじさん、OL、学生、そしてわれらがイギリスのSIS。うん...待て?なぜSISの要員がここにいる?


とりあえず仕事を終え、コンビニを出たところでSISの要員と話す。

「佐藤、どうした、またなんかあったか?」

「明石、まあちょいと話しこもうじゃん。」

ちなみに、こいつは日本語が達者である。イギリスにいたころの相棒で、語学の天才だ。中国系イギリス人なので、背が低く、肌も黄色人種がかっている。よって、日本でもそこまで目立たない。...ダボダボのズボンにパーカーで、結構ちゃらいが。こいつの本当の名前は知っている。だが、日本では偽名だ。


「場所を変えよう、"ハムレット"にしないか?」

と佐藤。"ハムレット"=隠れ家。隠れ家までの移動中は、ただの友達のような会話をする。日本語は大人になってから獲得したらしいが、こいつは完璧なアクセント、驚異的な語彙力で話す。他にも十数ヶ国を話せるらしい。


隠れ家は、SISが何人か必ずいる一軒家である。別に男だけってわけでもなく、いろんな人種が男女混ざっている。周りは塀にかこまれているが、一見すると普通の家だ。

「さて、本題に入ろうじゃないの。中国語でいけるか?」

「まあ何でもいいが...。」

俺は一応中国語は話せるが、話すのには結構エネルギーを使う。英語か日本語だったら幾分楽だが、盗聴も怖いしな...。

「FSBが最近動いてるのは知ってるよな?」

FSBってことはロシアのスパイかよ...。

「ああ、この前ボスから聞いたが。」

「最近、ツェントルの優秀なエージェントが日本で動いているらしい。」

FSBはいったい日本で何をする気だ...。しかもみんなFSBのことをツェントルという。本当はソ連時代の言葉なのだが。

「特徴は?人種とか、国籍とか。」

「一切わからない。ただ、シギントだ。」

「シギントォ!?」

思わず俺は大声を上げてしまった。シギントとは、"SIGnals INTelligence",つまり電子的な情報を扱うスパイのことを言う。人的諜報ならまだしも、シギントはシギントに任せるべきだろうよ...。

「どうした、そんなに驚くことか?」

と冷静に佐藤が言う。

「シギントなら、俺じゃなくてシギントであるお前が対処すべきだろ...。というか中国語で話すのも精いっぱいなんだからエネルギー使わせるな...。」

感情的になった自分を抑える。

「なんにせよ情報があったら教えてくれってことだ。そいつのコードネームは"カチューシャ"な。」

「Расцветали яблони и груши♪」

ふと、カチューシャから連想された歌を口ずさむ。ロシア語の歌だ。佐藤の含み笑いに気づき、おれはあわてて歌うのをやめるが、

「Поплыли туманы над рекой♪」

と彼は続けた。

「どうした、中国語よりロシア語の方がよかったか?」

「いや、結構です。」

中国語よりロシア語の方がもっと大変である。まあ、なんでもかまわないのだが。


「カチューシャってことは女なのか?」

「いや、なんもわからん。単にロシアっぽい真っ赤なイメージだから。ほら、さっきのカチューシャの歌みたいに。」

違うんかい。もっとましな名前つけろよ...。

「まあ、以上!」

と彼。

「うぃ。」

と俺。


「佐藤、お前外国語他に何しゃべれるの?」

ちなみにもう日本語で喋っている。

「日英露中のほかには...、韓、独、伊、西、亜、印、葡、泰、後は...。」

「もういいよ、よくわかった。ありがとう。」

こいつ俺より年下なんだよな...?いったいどこでそんなに習得したんだ...。というかシギントじゃなくて、普通のスパイになった方がよかったんじゃ...。


ここにいる要員たちも、特殊部隊上がり、天才的なハッカー、もちろんやることは想像できるであろう絶世の美女など、各分野のエキスパートたちだ。つくづくMI6の名は伊達じゃないなと思う。


"Катюша"、よく覚えておくか...。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ