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オズ  作者: みえさん。
一章 まだ何も終わってはいない
7/32

 何が起こったのかを判断するのは簡単なことだった。

 最初の音が聞こえた瞬間、彼は悟った。

 連続殺人犯‘フラワー’が誰なのかを。

「無事か、少年」

 少し離れた位置から呼びかけられヴィズは淡々とした口調で答えた。

「異常ありません」

 男もまた淡々とした口調だった。

「凄い反応速度だ。助ける必要も無かったな」

 手には拳銃が握られている。撃たれたのはエースの手元。

「……何だか嫌な事を思い出しましたよ。こんな事はもうごめんです」

 そう言ったのは建物の口元にいたアヌルだ。その手にも白い煙を吐く拳銃がある。エースが落とした拳銃のシリンダーが抜け落ちているのを見ると、アヌルはその部分を打ち抜いたのだろうと推測出来る。

 二度の爆発音の正体は銃声。

 三度目の音は拳銃が暴発した時の音だ。

「何はともあれ、ヴィズくんもユマさんも無事で何よりです」

「何故……!」

 連続殺人鬼‘フラワー’ことエースは忌々しげに吐き捨てた。

「どうしてここに、っていう質問ならお前をつけていた。何でお前が犯人だって分かったかっていう質問ならお前が一番怪しかっただけだ」

 そうです、とアヌルは頷く。

「自警団と私たちが警備を強化していた。にも関わらず事件が起こった。警備の状況を知っている誰かが疑わしいと考えるのは当然の事です。あなたはユマさんを見た時、何の反応も示さなかった。逆に見れば怪しまれるのを恐れて動揺を隠していたのでしょう。危険を冒してでも早いうちに彼女を始末しに来ると思っていました」

 ちらりと見やって男は溜息をつく。

「犯罪者の考えることは良く分かってしまうんですよ、経験上ね」

「残念だよ、俺はお前のこと結構気に入ってたんだぜ」

「………」

 エースは何も言わずに彼を睨んだ。

 同時にヴィズも彼の事を睨んだ。

「ユマを囮にしたんですね?」

「そういうことになるな」

 ヴィズの質問に悪びれもせずレオは答える。

 今回はヴィズが自ら動いたことでたまたまこういう形になったが、そうでなければ色々と理由を付けて囮になるように仕向けたのだろう。そのために親切にしたのだろうか。

 腕の中で少女がくすりと笑いを漏らした。目が覚めていたのか、と彼女の方に目をやると、か細い声が返ってくる。

「……犠牲者が無くてよかったじゃないの、ヴィズ」

 あなたが、そうおっしゃるのでしたら。

 ヴィズは「はい」と短く頷いた。

「兄弟愛か。泣けてくるな」

 からかうように言われてユマはレオを軽く睨む。

「……あなたも人のこと言えないじゃない」

「あん?」

「慕ってくれる子がいるじゃない」

 ユマに言われて男は振り向く。血相を変えたラギがこちらに向かって走ってくるところだった。

 瞬間、ヴィズが反応した。

 戦闘態勢が切れていなかったせいだろうか、身体の方が自然に反応していた。ユマを地面に降ろしラギに向かって走り出す。

「これで終わったと思うな!」

 彼の手にはナイフ。

 引き止めているのでは間に合わない。

 この身体ならば、止められる。



 だん、と強い衝撃が走る。

 エースの頭部から血が噴き出した。身体が崩れ、生命反応が消える。

 頭部に被弾し、死んだのだ。あっけなく。

「なるほど、胸の方が良いとはこういう事でしたか」

 自分の胸に突き刺さったナイフを見て無機質な口調でヴィズは呟く。

 ナイフを引き抜くとがちゃりと音を立ててもう一本のナイフが落ちてくる。それはユマが買い与えたナイフだった。

「ケガはありませんか?」

 問うと少年はようやく我に返った様子でヴィズに近付いた。

「俺は大丈夫。けど、あんたは……」

「問題ありません」

「嘘つけ。ナイフが盾代わりになったとはいえ、あの衝撃だ。ただで済む訳がないだろう。見せてみろ」

 新しい煙の立ち上る拳銃を投げ捨て、レオはヴィズの方へ駆け寄ってくる。ヴィズは困ったように身をかわした。傷一つない身体を見られてしまっては彼が人間ではないとばれてしまう。

「大丈夫です」

「そんな訳ないだろう? いいから、大人しくみせやがれ!」

「レオさん、それではまるで彼を襲っている変た……」

「誰が変態だ!」

 アヌルの言葉に覆い被さるようにしてレオが噛みつく。

 ヴィズの事を本気で心配しているのだろう。囮にしておきながらも、実際にケガをさせてしまうと本気で心配する。レオは思っていたよりずっとお人好しで気が弱いのかもしれない。

 アヌルに抱き起こされていたユマは小さく笑う。

「……大丈夫、心配しないで」

 レオの気持ちが収まらなければいずれ分かってしまうことだろう。

 ユマはあっさり種明かしをする。

「その子はあれくらいで怪我するほどヤワじゃないわ」

「どうして?」

 アヌルの問いにユマは一度目を瞑ってから答えた。

「彼、ロボットだもの」

 ロボット、と皆の視線が一斉にヴィズに集まる。ユマ自身から真実を明かされた事で演技の必要の無くなった彼は無表情のままユマの方を見た。

「だって、こんな……」

 さすがにレオも驚いた表情を見せた。

 これだけ精巧に作られたロボットなど他にないだろう。正確には世界で最も特種なアンドロイドなのだが、もっと困惑させることになりかねないので黙っている。

「勝手な行動をとりました。すみません」

「……いえ。あなたは正しい行動をしました。おかげで人の命を守れました。ご苦労様、ヴィズ」

 そう言い残して少女は意識を失った。


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