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オズ  作者: みえさん。
四章 魔法使いは孤独に嗤う
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「さて、食事も終わったが……これからどうする?」

 目の前にはほぼレオに寄って食べ尽くされた空の皿がある。カードが使えるのを確認し、ユマは自分のカードで支払いを終えた。アキヤマの姓で作ったカードの為、レオにはサインをしているところを見られないようにしたが、隠していてもあまり意味のない気もしていた。

 席に戻ったユマはレオに問われ答える。

「ドロシーのパーツを揃えたいの。ジャンクパーツ探せば丁度いいの見つかるかもしれないし。だから、貴方とヴィズは簡易栄養食と水の補充をお願い出来ないかしら」

「ちっ、面倒だな」

「貴方も色々必要なものがあるでしょう? 煙草とか、お酒とか、色々」

 レオは頭を掻く。

「まぁ、そりゃな……」

「適度だったら何を買っても文句は言わないわ。ヴィズに渡してあるカードを使って構わないから」

 彼には万一に備えてチャージ式のプリペイドカードを渡してある。さすがにユマのカードを彼にまで使わせる訳にもいかないし、公式では破壊登録がしてあるヴィズ自信の認証も使わせる訳にはいかないのだ。

「一応聞いておくがいくら入ってる?」

「ええっと、リミッター解除してもらってあるし、第三口座のを全部移してもらったから……世界共有ドルで一万ドルくらい?」

「一万!?」

 金額に驚き、レオは椅子から転げ落ちそうになる。

 気軽に口にしていたが世界共有ドルで一万ドルと言えば暫くの間豪遊出来るような金額だ。本当に慎ましく生活すれば三人家族が二年くらいは生活出来る金額だ。とてもプリペイド式カードに入れている金額ではない。

 ドロシーも驚いた様子で目を瞬かせる。

「随分と持たせているんだねぇ」

 ユマは少し肩を竦める。

「ロボットの維持やパーツ交換となると結構金額かかるでしょう? 銀行口座と違って利息が発生しないのが駄目なところだけど、万が一私に何かあっても暫くの間ヴィズ一人でも何とかなるでしょう? 定期的に別口座から入金するようにもなっているし」

 ヴィズはユマを見る。

「ユマは僕が守ります。万が一のことなどあり得ません」

 ユマは微笑む。

「そうね、貴方の反応速度なら大抵の厄災から私の身は守れると思うわ。でも、何が起きるかは分からない。私の命を守るため一度貴方と私が離れると言うことは起きない訳ではないわ。その時貴方が暫く単独で動く為には必要な場合もあるでしょう? ドロシーだって持たされているでしょう?」

 問いかけると彼女は頷く。

「ヴィズみたいに高額じゃないけどね。私の場合は認証チップの中に入っているけれど」

 言って手のひらを見せる。

 小型のチップが内蔵されているのを示すように青白い光が四角い形を示して消えた。

「……育ちのいい嬢ちゃんだと思っていたが、金銭感覚がおかしくねぇか? ロボットに持たせる金額じゃねぇぞ」

「物価の高いダクスで豪遊する貴方には言われたくないわよ」

「俺のトコの場合は有望な経理が居るからだろ。つか、殆ど自給自足みてぇな生活だぜ?」

「……お金や女の人は自給自足って言葉でまかなったらいけないものじゃないかしら」

 レオはユマの言葉を否定せずに声を立てて笑った。

 ダクスはレオの作ったルールの上で動いている街だ。法律というものもまともに機能していないと言っていい。レオのルールから逸脱した行動を取った者には当然の制裁が加えられ、そのルールを守る代わりに一応の安全を保証する。レオの元へ金を集める代わりにレオは街の整備や必要な事を行ってきた。上納金が払えない場合、時に女性が支払われていた。

 必要なものを自らの手でまかなうという意味では自給自足と言えるだろうと、レオは屁理屈を言う。

「まぁ、いいわ。とにかくそれでお願い」

 レオは悪巧みをするような笑みを浮かべる。

「ヴィズを騙して持ち逃げするかもしれねぇぞ?」

「あら、ダクスの猛獣さんの目を眩ませられる金額じゃないと思うんだけど? 大体私を脅した方が大金得られるわよ。私の弱点、知っているでしょう? 勿論、戦闘能力で私の弱点に勝てるとは思えないけれど」

「つまり嬢ちゃんを人質にヴィズを脅して、ヴィズを人質に嬢ちゃんと交渉する必要があると」

 冗談なのか本気なのか、彼は薄暗い笑みを浮かべた。

 少女は笑って答える。

「そういうことよ」

「だったら恩を売って正当報酬を得る方が利口なやり方だな。いくら俺でも優秀な護衛ロボット二体相手に嬢ちゃん人質にはできねぇからな」

「あら、やってみないの?」

 少女の言葉に今まで黙って聞いていたヴィズがたまらず声を上げる。

「ユマ、冗談でも止めて下さい。彼が本当に行動を起こしたらどうするんですか」

「あら、レオはそんなことしないわよ。ねぇ、ドロシー? 貴方もそう思わない?」

 うーん、とドロシーが唸る。

「どうだろうね、面白そうという理由だけで問題を起こしそうな気もするけど」

「……お前の中で俺は愉快犯の類なのか?」

「興味本位で危険な賭けに出そうって言ってるんだよ。お金の為じゃなく、実力や立てた作戦を試す為に」

「まぁ……ねぇとは言えねぇが」

 にこりとユマが笑う。

「でもしないでしょう?」

「今のところはな」

 これから先する予定でもあるとでも言いたげに、彼は肘を突いて笑う。

 満足そうにユマが微笑んだ。

「彼の言質がとれたところで、私とドロシーは出かけてくるわ」

「二人で大丈夫ですか?」

「安心しな、ユマに危害加えるような輩がいたら私が即行排除するから」


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