もしその手をつかんでしまったら
温かい話しになっていると嬉しいです。
「ゆ、優里先輩っ…」
緊張した顔で私を見つめる、彼女。
彼女は一つ下の後輩。
いい子だし、みんなにいつも気をつかっていて、とても優しい子。
そんな彼女は私の家に来て、さっきまでは楽しくテレビを見て、少しお酒を飲んでいた。
だけど、いつのまにか彼女は正座して私を見つめていた。
すごく緊張しているようだ。
顔も赤い。
どうしたのかな?
「ゆ、優里先輩…」
「なぁに?」
あまりにも緊張しているようだから、明るく聞いてみる。
「ゆゆゆゆ、優里先輩はっ…好きな人とかお付き合いしているんですかっ?」
「へ?あ、いないよ」
そんなに噛まなくていいのに、と少しおかしくて笑ってしまう。
彼女はさらに顔を赤くして下を向く。
あら、怒っちゃったかな?
「怒っちゃった?ごめんね」
そう言うと、バッと私を見て「お、怒ってませんよ」とぎこちなく笑う。
そうなの?彼女の表情って難しいわ。
「…優里先輩、驚くかもしれませんけど最後まで聞いてくれると、嬉しいです…」
「う、うん…」
大切な話しが始まるらしい。
なぜだか私まで緊張してくる。
彼女はどこか遠くの方を見て話し始めた。
「…今まで優里先輩と過ごしてきた時間はとても幸せなものでした…。優里先輩が楽しそうに話しているところも、幸せそうな顔してご飯を食べていろところも、可愛くて仕方ありませんでした…あ、年上の人に可愛いとか言うのは失礼ですかね?」
そう言って少しだけ笑ってみせる彼女の手が少しだけ震えていることに気づいた。
「私は…」
そう言って私の目を真剣見つめてくる彼女にどきりとした。
彼女の顔は…あきらかに恋をしている顔だった。
私はどうしたらいいのかわからず、目をそらさずじっと耳を傾けた。
「…優里先輩のことが…好きですっ」
「わ、私のことが?」
「はい…好きです」
心臓がドキドキとうるさい。
彼女は私のことが好き…なんだかよくわからない。
この場合の好きは恋愛の方ということになるのかな、とふと思う。
頭がパンクしそう。
「え、あ、でも、私も美雪ちゃんも女よ…?」
「わかってます。それでも好きなんです…」
「えっと…好きって恋愛の方でなのかな…?」
「はい…」
今にも消えてしまいそうな声を出し、下を向いてしまう彼女。
本気…なのね。
本当に同性を好きになる人っていたのね、なんてのんきに考えている私がいる。
今まで私はそういう人に出会わなかったから驚いた。
彼女は可愛くてモテる。とっても。
そんな美雪ちゃんが何の取り柄も私を好きになるなんて…それに一番びっくりだわ。
彼女の手に何かが落ちていることに気づいた。
涙…
小さく肩を震わして泣いていた。
どうして泣くの…?
胸がギュッと締め付けららた。
「私のこと気持ち悪いだろうし、嫌いになっちゃったかもしれませんっ。だけどっ、やっぱり気持ちを伝えたくて…
優里先輩…付き合って下さいっ…こ…断ってくれても…い、いです」
気持ち悪いくないし、嫌いにもなってない。
それは言えるけど…彼女と付き合う…
どんな感じなのかイマイチ想像できない。
そもそも今起こっていることも現実なのかどうかもわからない。
たぶん現実なんだらろうけど。
「返事はいつでもいいです…それじゃ帰りますね!」
彼女は荷物をまとめて帰ろうとする。
ぼう然とする、私。
彼女が立ったとき、思考が戻ってきた。
このまま帰らせてもいいのか?
わからない。
何て言ってひきとめればいいのかもわからない。
「べ、別にまだ帰らなくても…」
「いえ、今日はもう帰りますね」
彼女はくつを履いて扉を開けようとする。
私は彼女の手をつかもうとする…けどやめた。
もしその手をつかんでしまったら、どんな意味をあらわすのか、その後一体どうすればいいのか…
わからなかった
彼女がいなくなった部屋はなんだか殺風景で色を失くしたように見えた。
あれから一ヶ月が経った。
まだ返事を出来ずにいた。
彼女のことはとても大切だ。
たぶん彼女がいなくなったら私の心はぽっかり穴があくだろう。
「優里先輩、行きますよ」
「あ、うん」
彼女は笑顔で私に話しかける。
少しドキッとして心が温かくなる。
その意味を私はわからず、彼女に駆け寄る。
今日は彼女の家に行く。
のんびりお菓子でも食べながら、DVDでもかりて見ようということになっている。
なんだかわからないけど楽しみで、昨日は彼女の好きそうなお菓子をたくさん買った。
彼女の家につくとさっそくかりてきたDVDを見る。
「先輩、お菓子買い過ぎですよ」
そう言ってにこにこ笑う美雪ちゃんに見つめる。
「優里先輩?」
「ん?」
「いや、何でもないです…。では、再生しますね」
流れる映像
頭に入らなかった
隣ににいる彼女が気になって仕方なかった
ふと口を開く彼女。
「先輩…」
少し暗い声。
心配になって顔をじっと見つめる。
すると、彼女は私を見た。
「告白したこと、もう忘れてくれていいですよ…」
傷ついたは顔をしてる…。
でも、なぜか私の心もひどく傷ついていた。
ギュッと胸が締め付けられる。
苦しい…
その時、初めて気づいた。
私…彼女を好きになっていたんだ
「美雪ちゃん…?」
「迷惑かけてごめんなさい。私は大丈夫だから…気にせず友達でいて下さぃ…」
最後の方はとても小さな声だった。
また手や肩が震えてる。
目に涙が溜まっていて、今にも零れそう。
前の私がつかんであげれなかった手をしっかりつかんだ。
「先輩…?」
「勝手に決めないでほしいな」
私は何を言おうか、頭をフル回転して考えていた。
思いつかない…。
だけど、口は勝手に動いてた。
「…好きよ」
驚いた顔で私を見る彼女。
でもすぐに悲しげな顔に変わった。
「気休めはいいですよ…」
一ヶ月も待たせてしまったからそう簡単に信じてくれないのはわかってる。
でも、彼女の心に届くといいな。
「ごめんね、こんなにも待たせてしまって。そう簡単に信じてくれないのはわかってる。けど、信じてほしい。
美雪ちゃん…好きよ」
恥ずかしくて、少し顔が熱くなる。
そんな私の顔を見た彼女の目から涙が零れた。
「こんなに待たせてしまったけど、付き合ってくれる?」
「当たり前です…」
そう言ってさらに泣き出した彼女を抱きしめる。
温かい…。
ずっと彼女のそばにいれるといいな
笑い合って、泣きあって、たまには喧嘩して
毎日、この温かい彼女の体温と心を感じていたい
私は目をつむって、今のこの幸せを体全体で感じていた。
最後まで読んでくれてありがとうございます。
よかったら、何か書いてほしい物語を教えてくれると嬉しいです。
ちなみにオリジナル、ガールズラブのみです(´・ ・`)