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親友な僕ら  作者: えるもんて
再結成
1/12

再結成、傘部

「なぁなぁ、明人明人」

「なんだよ」

 漢字の小テスト中に小声で話しかけてくる、違反行為をしているコレの名前は合田一輝ゴウダカズキ

 クラス一、いや、下手すれば学年一の頭の悪さの持ち主だ。

「『みさお』って、誰だ?」

「それは人の名前じゃなくて、『操』って漢字だよ…!」

「ほうほう。おめぇ、やっぱすげぇな」

 何か、一輝に褒められてもまったく嬉しくないのは何でだろう。

 一輝は質問が終わると、また紙と睨めっこを始めた。

 一輝のがたいの良さは周囲を圧倒出来るが、勉強中の一輝からはまったくもって圧倒出来るほどの威圧感がない。

 僕の学校ではブレザー使用の学校で、一輝も着ている。だが、ボタンは全開でシャツは出たまま、という風紀委員の格好の狙い目となっている。

しかし一輝は、ブレザーの下に着るシャツのボタンは全て留めている。

第一ボタンは開けて良い、という規則があるにも関わらず。

 一体何をしたいのか分からない。

「なぁなぁ、明人明人」

 また小声で話しかけてきた。

 僕は静かに返事をした。

「『おかん』って誰のオカンだよ」

「『オカン』じゃなくて『悪寒』ね」

「ほうほう。おめぇ、やっぱすげぇな」

 本気で感心してくる一輝は、馬鹿そのものに見えた。

 これが馬鹿なのかと。



「明人!昼休みだぜ!」

 小テストから開放され、一時間弱ある昼休みに突入した。

 一輝からそう声を掛けられ、食堂に行く準備をしていると。

「翔平!お前も来るだろ?」

「あぁ」

 翔平と呼ばれたこの男。フルネームは篠原翔平しのはらしょうへい

 一輝と同じようなでかさがあり、この二人と一緒にいると、なんだかとても心強くなる。

 しかし翔平は一輝とは違い成績優秀で、女子層からの人気も少なからずあるらしい。

 一見クールで気むずかしそうな感じが出ているが、意外とそういうわけでなく、優しい。まぁ、僕らに接している所しか見たこと無いんだけど。

 それくらい翔平とは一緒にいる。頼れる友達だ。

「あれ?孝助はまだかよ」

 食堂に着くと、生徒が大量に群がっており、我が我がと定食を争っていた。

 ちなみにここの食堂の定食は、なかなか美味しい。

この前初めて食べてみたけど、こんなものが学校で出て良いのかというくらいの美味しさだ。それに、お手頃な値段だった。

生徒が奪い合うのも分かる。

 そんな中、空いている席が4つあった。この大勢いる中、ちょうど4つ空いていた。そこへ一輝が向かう。

「知らない」

 その4つの席を確保していたのは、一人の女子である。

 彼女の名前は松坂愛理まつざかあいり

小学生の頃から、なかなか人と打ち解けない性格の持ち主で、僕を始めとした、一輝や翔平以外には心を開かない。

なんかそれはそれで何かしらの優越感は感じるのだが、将来への不安はある。愛理がこのまま一人でやっていけるのか。たまに深く考えることがある。

 愛理は不器用ではあるが、見た目は可愛いためか、女子、男子共に優しく接してくれる人が多い。(まぁデカイ二人といるから近づいてこないけど)

「知らないってだな…」

 一輝がイスを引き、座ろうとしたときだった。

「っ!!?いってぇぇぇ!!なんかケツに刺さった!痛い!グサってきましたグサって!」

 一輝はまた飛んでイスから跳ね退いた。お尻を押さえながら。

「危ないぞ」

「遅ぇよ!!」

 愛理の遅すぎる警告にキレる一輝。

 よく見るとそのイスには、大工が使うような7cmくらいあるような釘がセットされていた。どんな木でも貫通しそうな先端を上に向けながら。

 そりゃあ他の生徒が座らないわけだ。というか座れないわけだ。

 翔平は何も言わず釘を抜いてから座っているけど。

僕もそれを見て、釘を抜いてから座ることにした。

「孝助遅いね」

「まぁ、孝助の事だから、また何か企んでいるんだろう」

 翔平は静かに弁当箱を開くと、手を合わせた。

「まぁ、孝助の事だから、また何か企んでいるんだろうな」

 愛理も手を合わせると、弁当に手を付けていった。

 二人とも、学校の食堂なのに堂々と、家で作ってきたであろう弁当を食べるところがすごい。

この二人には『食堂では学食しか食べてはいけない』という暗黙の了解は通用しないようだった。

「おいおい何だ二人して。俺がそんなに何か企んでいそうか?んまぁ企んではいるけどな」

 僕もご飯を食べようかとした時に、孝助は来た。

 篠原孝助しのはらこうすけ。翔平の兄で、今年で高校3年生である。

 昔からリーダーシップを発揮しては、この纏まりのない僕たちを纏め上げる、ある種の天才だった。

遊びの発想もすごく、誰もが気を引く遊びを提案する、遊びの天才でもあった。

 孝助は何でも出来るスターのようなもので、僕の憧れる人だ。

 運動ができ、勉強もでき、そして女子から大人気。

本当に少女漫画で出てくる理想型とも言える。愛理からも心を開かれている。

「孝助っ!」

「おう、明人」

「何企んでいるんだ?孝助…」

 怪しい目で孝助の見つめる一輝。まぁ、確かに孝助の考える事だから怪しいけど。

「それはだな…」

 『んん゛っ!』とわざとらしい咳払いを入れると、人差し指をピンと立てた。




「本日をもって!傘部を創設することにした!」


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