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神の使いのお手伝いを任されました。〜やることはやってのんびり過ごしたいと思います。〜  作者: 常盤椿


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01 穢れを浄化する力が強いとか

挿絵(By みてみん)



 

 父親を交通事故で亡くし、ひとり親家庭で育った。

 立花誠(たちばなまこと)の母親は最近病で倒れてしまった。医師の見立てでは過労であるから基本的に安静にしていれば治るとのことだったが半年経っても治らず、慢性疲労症候群だという病名がでた。回復には数ヶ月〜数年かかるらしい。


 神頼みなんかいつもはしない。

 けれど今はそれをするしかなかった。

 神頼みをする一番の理由として、母の元気な姿が見たいからだ。二番目の理由として生活保護を受けて生活をしていることが後ろめたいから。


 小学生、電車に一人で初めて乗りこの神社に来た。

 この神社は隠世ノ(かくりよのみや)神宮と呼ばれていて、境内には数百柱もの神様が祀られている。数において最多の神様が祀られているためとても有名な神社だ。

 ご利益はたくさんあればあるほどいいだろうという精神でここを選んだ。


 立花誠が手を合わせて考えるのは母のこと。あとは中学生になってからバイトをしたほうがいいかという自問自答。


 お参りをし終え、帰りの門をくぐった。

 目の前には見知らぬ光景が広がった。

 境内に似ていて違う。神社というよりはお屋敷。

 何か間違えたかと後戻りすると見知った神社の光景に戻る。

 そしてまたもう一度出口から出ると先ほどと同じ見知らぬお屋敷。


「どういうことだこれ」


 そして繰り返す。


「神隠しってやつか? ていうかまだ神隠しされてないけど」


 自らここに入れば神隠しされることになるのか。それって許容したことになるのか。


「どうかされましたか?」


 神社の出口で悩んでいると突然話しかけられた。話しかけてきた相手の姿から考えるに神社の神主のようだ。


「あの、出口から出られないんですけど」


 何を言っているかわからないだろう。と思っていたが。男性はああ、とわかったように。


「神隠しだね」

「そうなんですか?」

「どうやら気に入られてしまったようだ」

「神に?」

「神というより神の使い。神使または眷属などと呼ばれる存在に」


 何度も神社の敷地に戻るのはそういうことなのかと内心ため息をつきながら思う。


「気に入られた理由もわからないんですけど、どうして僕がこんな目に合わなければいけないんですか」

「神の使いは何か望みがあるようだ」

「何をすれば良いんですか?」

「おや乗り気のようだね」

「乗り気というか……出るにはその望みを叶えないといけないんじゃないかって思うんですけど」

「出られる、と思っているようだね?」

「出られないんですか?」

「神隠しなのだから普通は出られないよね」


 納得してはだめだ。


「どうしたら出られますか?」

「一緒に行こうか」


 手を繋いで出口に入るとまたもや神域と思われる場所に出る。そしてそのまま慣れた様子で屋敷に入る。


「やあ、この子を惑わせているのは誰だい?」


 待っていたかのような相手に神主は声をかける。

 まるで相手は待っていたかのような佇まいである。そして変わったところがひとつ、兎のお面を被っているところ。


「僕だよ」


 沈着冷静にそう言われてもである。


「なぜ? 理由は」

叶兎(かなと)についた穢れがはらえない」

「だからと言ってなんで」

 だからと言ってなんで。

 声に出ていた。


「君の、穢れを浄化する力が強いからだ」


 なんだその能力は。


「だから頼む、浄化してほしい」

「浄化してほしいと言われても僕にはなにも」

「添い寝してくれるだけでいい」


 どうしたらいいものか神主を見上げる。目が合うとうんと頷かれる。


「それなら言われる通りにしてみるといい」


 なので、仕方なく頷いた。


 招きいれられた部屋には布団の上に小さな子ウサギが寝転がっていた。叶兎というのは兎のことだったのか。


 添い寝をするが安心して眠れるはずもなく。

 どのくらいの時間が経ったか。動いた子ウサギがこちらを向き鼻をチュッとされた。


「ありがとう」


 そう兎の仮面の彼に言われ、神域を出ることに成功した。

 子ウサギを助けた(?。自分ではなにもしたつもりはない)見返りに母のお祓いを無料でしてもらえることになった。そして母はお祓い後、元気な姿を見せてくれた。


 穢れを浄化する力が強いとかで、結果的には万々歳であった。

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