逃げた女神と小さな希望
「えっと……アタシ、友達待ってるから……ごめんね……?」
絵美里はそう言って健彦の元から立ち去る。
あ〜あ、これ絶対嘘だよ。
絶対嘘で、気持ち悪いお前から逃げたんだよ。
絵美里は小さく会釈して踵を返す。
金髪が朝の光に揺れて、遠ざかる背中は一枚の絵みたいに美しい。
「あっ、ああっ……」
健彦、膝から崩れ落ちる。
両手がつき、視界ぼやける。
涙じゃない。ただ血が引くような虚脱感。
うるせぇ!
当然だろうが!
お前は恋愛本読んでたって言うけど、なぁ〜んの本を読んでいたんだよ!?
どうせ、出会って5秒で合体みたいなスケベな本を恋愛本として読んでたんじゃねぇの!?
だから、失敗するんだよ!
バーカ、バーカ!
下半身脳の猿野郎!
ーー一方、絵美里は歩きながら心の中で呟く。
(本間君か……あれ、アタシ自己紹介したっけ?)
足を止めて、首を傾げる。
友達の元へ向かう中、突然の嵐のような少年の事を思い出す。
ん?
待て待て待て
お前、嘘じゃなかったのか?
友達の元に向かうのは、バカ健彦から逃げる言い訳じゃなかったのか?
ガチだったのか!?
(まっ、いっか。高校生活始まったばっかだし……また会う機会あるっしょ)
唇に小さな笑みが浮かぶ。
頰がほんのり熱を帯びる。
ちょっと待てちょっと待て
なんでなんでなんで!?
僕なら、会いたくないよ!?健彦みたいな頭のおかしいヤツとはもう関わりたくないです!
お前、なんで頬赤めてるんだよ!?
(面白い人だったな。ちょっとビックリして逃げちゃったけど……同じクラスになったらいいな……)
風がスカートを軽く持ち上げ、白い肌が朝陽に晒される。
今度はただの風景じゃなく、微かな予感みたいに。
もう、意味わかんねぇ!
なぁ〜んで、あんなヤツとちょっといい感じになってるの!?
何、これ!?
強盗成功したって事!?
ーー若人達の新たな出会いの季節が始まる。
恋とは頭ではなく、体が動く瞬間から始まる物。
結果は、ただただ後からついてくるだけ。
読んで頂き、ありがとうございました。
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