体が勝手に動いた瞬間
気づいたら身体が勝手に動いてた。
まるで糸に操られる人形みたいに、女神へと一直線。
静かな通学路に、風だけが木の葉を震わせる。
そして、喉から声が零れ落ちた。
「貴方は僕の女神様です! 付き合ってください!」
デカすぎる声。
誰もいない道に言葉が反響して、空に吸い込まれる前に彼女の耳に届いた。
きっと今、天使が周りの人間を一瞬だけ遠ざけてくれている奇跡を起こしている。
そうでないと、この情熱の告白はただの地獄絵図である。
健彦はバカなのである。
教科書より恋愛指南書ばかり読んで『運命の出会い』という幻想に脳みそを溶かされてる少年。
まぁ、知識と言うより、それ以前の何かの欠落したバカに幻想という厄介な物が加わってしまったのだ。
「……は? アンタ、何よ?」
女神ーー相田絵美里は眉を寄せた。
ちなみに彼女の金髪は高校デビューじゃなく、中学からずっとの「在り方」である。
当然、警戒の色が濃い。
「僕、本間健彦と言います!」
今さらの自己紹介。
順序が狂っている。
最初に言うべき言葉を、最後に持ってきたのだ。
「あぁ、本間……さん、ね……? はいはいはい……」
もう色々と見てられない。
絵美里は健彦の言葉に答えるが、少し後退りをしている。
本間『君』ではなく、本間『さん』なのが、絵美里との距離が広がった気がするんだけど……
どうするんだ、本間!オイ!
「僕、確信しました! 貴方は僕の女神様です! お付き合いしてください!」
えっ?
お前、ここで押すの!?
いやいや、意味不明意味不明!
あのさ?
恋愛でよく『ハートを奪う』って表現、よく聞くけどさ?
本間!お前がやってる事は、正面突破すぎるぞ!
それ、完全に強盗ですぞ!?
「いやいや、本間さん……?女神って……何、言ってるの……?」
それで、ホラ!ホラ!
見てみなよ!
強盗が正面からやってきたら、皆、警戒するじゃん?
これ、完全に絵美里ちゃん、警戒モード入ってますわ!
絵美里の瞳が揺れる。
風がスカートを揺らし、白い太ももが朝陽に晒される。




