病人
私はメリッサを伴って、街に遊びに出かけた。
以前より品物が多くにぎわっている。
どうも盗賊団が弱体化したのが影響しているようだ。
私は町はずれで、行列ができている家を発見した。
「ねぇメリッサ。あの家は何屋さんなの?」
と私は尋ねた。
「あそこはお医者様です」
とメリッサは答えた。
「あんなに病気の人がいるの?」
と私は尋ねた。
「病気の人が多いというか。お医者様が少ないんですよ」
とメリッサは言った。
その後、私は街でお医者様について聞いて回る。
すると、
手が足りていなくて、軽い傷が重症に、軽い病気が重い病気になるケースが多い事を知った。
私たちは、屋敷に戻ると、一人の老人が草を採っていた。
「おじいさんは何してるの」
と私は尋ねた。
「これはこれは。アリーサお嬢様。お忘れですか?主治医のジェームスです」
と老人は言った。
ぜんぜん覚えてないが、とりあえず合わせることにした。
「ジェームス先生でしたか。何をされてるのですか?」
と私は言った。
「これは薬草を採っておるのです」
とジェームスは答えた。
私はふと疑問に思った。
「街のお医者さんは忙しそうだけど、先生は暇なの」
と私は尋ねた。
「お嬢様失礼ですよ」
とメリッサは言った。
「いやいや、構わん構わん。私は屋敷の常駐ですから、暇なのですよ」
とジェームスは笑った。
「退屈じゃない」
と私は尋ねた。
「そりゃまぁ。退屈ですが、いたしかたございません」
とジェームスは答えた。
「じゃあ。忙しくなっても平気ね」
と私は尋ねた。
「そりゃ、もちろん。でもお嬢様、わざわざ私を働かせるために、ケガなどなさらないでくださいね」
とジェームスは笑った。
「もちろんよ。そんなおバカじゃないわ」
と私は胸を張った。
私は、執務室に向かう。
「お父様。また遊び見つけたの」
と私は言った。
お父様はニコニコしている。
「今回はどんな遊びだい」
とお父様は嬉しそうだ。
「うんとね。ジェームス先生をね。いっぱい働かせる遊び」
と私は答えた。
「斬新な遊びを思いついたね。それでどうするんだい」
とお父様は尋ねた。
「うんとね。街のお医者さまって一人しかいないの。
それでね。
ケガしても、病気になってもなかなか診てもらえなくって、ひどくなる人も多いんだって。
でもね、ジェームス先生は暇なんだって。
面白いよね」
と私は言った。
「面白いかなぁ。
ちょっと問題だと思うんだけど」
とお父様は答えた。
「さすがお父様。
私もそう思ったわ。
でも、ジェームス先生は、うちのお医者様でしょ。
私達とか、兵士とか、使用人を見なければいけない」
と私は言った。
「そうだね。なにか良いアイデアを思いついたんだね」
とお父様は目を細めた。
「そう。ジェームス先生には、私達とか、兵士とか、使用人を優先して治療するってルールを決める。
そしてね。軽い病気やケガだけ、ジェームス先生に診てもらえるようにするの」
と私は答えた。
「その軽い病気やケガだけ、診るのはなぜなんだい」
とお父様は尋ねた。
「軽い病気やケガなら、時間がかからないでしょ。そしたら沢山の人を診れる」
と私は答えた。
「それは賢いね。しかし、街のお医者さんは怒らないかな」
とお父様は少し心配そうな顔をした。
「聞いてみて。お医者さんが、それはいいね。って言えばやっていい?」
と私は尋ねた。
「そりゃもちろん。ジェームスにも聞かないといけないよ。調整は執事とやってくれるかい」
とお父様は答えた。
「わかった。お父様ありがとう」
と私は言った。
私は、メリッサと共にジェームスに会いに行く。
「どうされました。お嬢様」
とジェームスは言った。
「あのね。お父様とお話したんだけど、ジェームス先生には、私達とか、兵士とか、使用人を優先して治療するってルールを決めるの。
そしてね。軽い病気やケガだけ、街の人でもジェームス先生に診てもらえるようにするの」
と私は言った。
「軽い病気やケガだけなら、それなら手間がかかりませんね。それは妙案です。
旦那様は許可を?」
とジェームスは尋ねた。
「貰ったわ。調整は執事と行う。ジェームス先生がよければ、あとは街のお医者様ね」
と私は答えた。
「私のほうは問題ありません。街の医者は面識がありますので、私も同行しましょう」
とジェームスは言った。
街の医者は15時くらいまでだそうなので、その頃に、ジェームスと三人で訪問することにした。
……
「ボンド先生。いらっしゃるかな」
とジェームスは言った。
「これはこれは。ジェームス先生ではないですか。今日はどのような御用件で」
とボンドは尋ねた。
「こちらのお嬢様は、領主様の次女のアリーサ様です」
とジェームスは私を紹介した。
「ボンド先生。はじめまして、ローズワール家の次女アリーサです」
と私は礼をした。
「これはこれは、ご丁寧に。私、町医者のボンドです」
とボンドは言った。
「それでボンド先生。今、街の医者が足りていないという状況らしく、お嬢様もご当主様も心配されておられる。どういう状況なのですかな」
とジェームスは尋ねた。
「真に情けないことですが、人手不足ですね。私の腕がもっとよければ」
とボンドは答えた。
「ボンド先生の腕は評判ですわよ。薬の不足とかではないのでしょうか」
と私は尋ねた。
「御領主様が、盗賊対策をしてくださったお陰で薬は足りています。本当に人手不足なのです」
とボンドは答えた。
「なるほど。では私に手伝えることはございませんか?」
とジェームスは尋ねた。
「私達でできることがあれば、お手伝いしたいと思ってましたの」
と私は言った。
「それはありがたい。しかし何を手伝ってもらいましょう」
とボンドは少し困った顔をしている。
「どういう患者さんが多いのかな」
とジェームスは尋ねた。
「そうですね。風邪、腹痛、ケガが多いですね」
とボンドは言った。
「もし仮に、その患者さんが2~3割でも減れば、キレイに回りますかな」
とジェームスは尋ねた。
「えぇ。それはもちろん」
とボンドは答えた。




