盗賊
肉祭りは好意的に受け止められたみたいで、私が街に出ると、あちこちから声がかかった。
その多くは、肉祭りの時に、うちも出店したいというモノだった。
執事やお父様と話し合った結果、
私たちと商材的にバッティングしないという条件+場所代の徴収で、何件かの店を許可した。
もしかすると、肉祭りが普通の祭りになるかもしれない。
目新しさはなくなるが、それはそれで良いと思う。
あとは、他の貴族から、やり方を教えて欲しいという打診があった。
お父様が、
「どうする?」
と聞いてきたので、
「どうせ、ほっといても真似されるので、相談してきた貴族が持っている稼ぎとか、コスト削減のネタと引き換えに、ちゃんと教えましょう」
と私は伝えた。
「そんな事を聞いてどうする」
とお父様は言ったので、
「今回、肉祭りをやったことで、牛代がほぼタダになったよね。こういうのをみんな知ってて黙ってると思うんだ。自分だけが得したいから。でも牛の事をちゃんと教えてくれるなら、教えても良いというと思うんだ」
と私が言うと、
「アリーサはお利口だね」
とお父様は私の頭を撫でた。
「そりゃお父様の娘ですもの」
と私は言っておいた。
お父様の顔が緩む。
私は思った。
これでお父様と執事が他の貴族の情報で調整してくれたら、私は苦労せずに幸せになれると。
全ては銭のためや~。
へへっへへへっへ。
……
そういえば、街に品物が入りにくくなっていると話を聞いた。
どうも、盗賊団が頻繁に荷馬車を襲っているようだ。
うちの兵士たちも定期的に見回りをしているが、効果は出ていない。
これは、また銭の匂いがする。
私は兵士たちが、普段何をしているのかを見て回った。
普通に仕事をしていた。
私はメリッサを供にして、商人に聞いて回る。
するといくつかの特徴が見えてきた。
襲われているのは、小規模の商人が多い。
命は取られないが、荷物や金は取られる。
奇襲が多い。
なるほど。
私は一つの可能性を考えた。
商人たちを隊として束ねて、兵士を護衛につけ、
集団で運送させれば問題ないのではと。
さっそく執務室で、
仕事をしているお父様に相談してみる。
「ねぇねぇ、また面白い遊び見つけたの」
と私はお父様をツンツンする。
「今回はどんな遊びだい」
とお父様は私を膝の上に乗せた。
「あのね、騎士ごっこ」
と私は答えた。
「騎士ごっこ。それはずいぶん勇敢だね。
でも危険な事はダメだよ」
とお父様は笑った。
「もちろんよ。お父様の娘だもん。お父様に似て思慮深いわ」
と私は答えた。
「その騎士ごっことやらは、どんな遊びなんだい」
とお父様は言った。
「うんとね。商人のね、オジサン達がね、盗賊に襲われて困っているの。
お金とかモノとかを盗られるんだって。
知ってた?」
と私は尋ねた。
「そりゃもちろん知ってるさ。だから見回りもさせてるが、効果が出なくてね。困っているんだ」
とお父様は苦笑いをした。
「私思ったの。商人のオジサン達に別々で荷物を運ぶんじゃなくって、まとめてグループを作って運びなさい、とお父さんが言ってね。それでうちの兵士さん達に、そのグループの護衛をしてもらうの」
と私は答えた。
「それは、いいアイデアだけど、うちに兵士がいないのは困るな」
とお父様は困った顔をした。
「私を誰だと思ってるの。お父様の娘よ。それはね、週に1回だけ、運ぶ日を決めるの。そしてね、商人のオジサン達には、ちゃんと護衛料を払ってもらう」
と私は答えた。
「なるほどね。それだったら、兵士たちの給料にも充てられるな」
とお父様はうなづいた。
「そんな事考えてもみなかったわ。さすがお父様」
と私はお父様の頭をよしよしした。
「そうか、賢いか。君に言われると格別にうれしいね。じゃあ、さっそくしよう。
そうそう、今回のお礼はどうする」
とお父様は尋ねた。
「お礼は別にいらないわ。名君であるお父様の手柄にして」
と私は笑った。
……
それから、お父様は商業ギルドと話を通し、週に1回兵士を使った護衛任務を引き受け始めた。
結果、1月ほどで、盗賊団は姿を消した。
どうも違う地域に移動したようだ。
盗賊団が違う地域に移動したことで、そこの領主から文句が上った。
「アリーサ。
娘に相談するのはお門違いなんだが、盗賊団が他の地域に移動して、そこの領主から文句が上ったんだ。
君ならどうするかな」
とお父様は困惑した表情をしている。
「うんとね。私なら、他の領主様達に手紙を書いてね。このやり方と、どれだけ利益が出るかを説明してあげる」
と私は答えた。
「それは良いアイデアだと思うが、王様は怒らないだろうか?」
とお父様は心配そうな顔をしている。
「えっとね。宰相様に、このやり方と、どれだけ利益が出るかを書いて送って、これを他の領主様達に教えてあげてもいいか、王様が嫌な気持ちにならないかを聞くといいんじゃないかな?もしよければ、宰相様や王様がみんなに教えてくださってもいいし。盗賊は一気に対策しないと、どこかに移動して喧嘩になっちゃうから」
と私は答えた。
お父様はしばらく考えたあと、
「そうだね。それでやってみよう」
と言った。
お父様は、
まず馬を走らせ宰相様と王様に資料を見せ、見解を伺った。
お二人は、お父様の無欲な行動に非常に感心され、
他の領主に教えてやってくれと言われた。
それから、屋敷では、文章の書けるもの総出で、資料作成にあたった。
この時代はコピーがない。プリンターもない。メールもない。
全てが手書きだった。
最終的に私まで、資料作成に駆り出された。
他の領主は、はじめ警戒していたが、実際に効果が出ているところが多いのと、
商人ギルドの要求もあって、王国全土が、この護衛システムを採用することになった。
全てが上手くいったわけではないが、
結局多くの盗賊団は、8歳の少女の思い付きで、弱体化することになった。




