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アリーサ嬢の肉祭り

私は、また図書室に籠っていた。

屋敷では、執事たちが肉祭りの手配を行っていた。


プロジェクトが自分の手を離れたのはいいが、

待っている間は退屈なものだ。


世の中のオーナー社長や、貴族や王族というのは、

皆こんな感じなのだろうか。

計画を立てて、任せる。

あとは見守る。

それを繰り返す人生。


私は工場勤務だったし、働く側だった。

せどりにしたって、

自分で仕入れて、売れるのを待つ。

そして発送も自分。

ここでも働く側だった。


思えば、

いろんな事を全て自分でやってきた。

それに疑問を感じなかったし、それで良いと思っていた。

でも金に働いてもらうというのは、こういう事なのだろう。

異世界に来て、労働者から資本家に変わったのか。


気持ちはいいが、少し退屈でもある。

とはいえ、トラブルが起きて忙しくなるのは勘弁してほしい。

不安と希望が、同じ場所に居座っているような、そんな感覚だった。


……

肉祭り当日。

私は侍女のメリッサを伴い、街に出かけた。

初めて目にする街のはずだが、なぜか記憶がある気がする。

これはアリーサの生前の記憶なのだろう。


広場では、使用人たちが準備をしていた。

屋台では見習いが肉を焼いていた。

香辛料とニンニクのニオイが食欲をそそった。



「お嬢様。こちらが屋台です」

と見習いは言った。


「ご苦労様。どう美味しくできている」

と私は尋ねた。


「今焼いたばっかりで、味見はしていません」

と見習いは言った。


「じゃあ。私も食べるから皆も食べて」

と私は答えた。


皆も串焼きにかぶりつく


「これは美味い」

と見習いは言った。

メリッサや、使用人たちも、美味しそうに食べている。

私も一口食べる。

これは美味い。


「これは美味しいわね」

と私は言った。


(俺にもくれ)

(私にも)

(ワシにも)

と声がかかる。


「はいよ。いらっしゃい」

と使用人たちは屋台を稼働させはじめた。



「お嬢様が食べた途端、すごい勢いで売れだしましたね」

とメリッサは言った。


「そうね。ビックリしたわ。あっちでゆっくり食べましょ」

と私はその場から離れた。


屋台は3つ用意したが、どこも長蛇の列になっていた。


「これ。すぐに売り切れちゃうのでは」

とメリッサは言った。


「まさか。牛一頭よ」

と私は笑った。


「お嬢様。これからどうされます」

とメリッサは尋ねた。


「そうね。長蛇の列を見てても退屈なだけだものね。なにか面白いところあるかしら」

と私は答えた。


「お嬢様がお気に召しそうなところでしたら、図書館とか」

とメリッサは言った。


私はうなづき、図書館に向かう事にした。


図書館は街の離れにあった。

屋敷の本も多かったが、図書館にも多くの本があった。

どちらかというと、図書館の本のほうが、よりこの世界のリアルに近いところにあるような気がした。

屋敷の本は、どちらかというと貴族向けの本で、こちらはより庶民向けの本だった。


「良いわね。私の知らない世界がある」

と私は言った。


「私もお休みの時には、たまに来るのです」

とメリッサは答えた。


「メリッサは本が好きなの」

と私は尋ねた。


「そうですね。お屋敷で文字を教えてもらいましたので、本を読む練習をしようと」

とメリッサは照れくさそうにいった。


「それは良い事ね」

と私は微笑んだ。


「お嬢様は、ずっと本を読んでおられますね」

とメリッサは言った。


「そうね。世界を知ることができるからね」

と私は答えた。


私たちは2時間程、図書館で過ごした。


(お嬢様!)

誰かの声が聞こえる。


「お嬢様。なにかあったみたいです」

とメリッサは警戒している。


使用人が図書館に飛び込んできた。


「どうしたんですか」

とメリッサは言った。


「それが肉が売り切れてしまって」

と使用人は答えた。


「それで?良かったんじゃないの」

と私は言った。


「それが、客の一部が肉を隠しているだろうと文句を言ってるんですよ」

と使用人は答えた。


「そう。じゃあ私が言うわ」

と私は言った。


「お嬢様危険です」

とメリッサは止める。


「そうです。危険です」

と使用人も止める。


「これは私の屋台ごっこよ」

と私は言った。


私たちは現場に直行する。

すると柄の悪そうな男たちが、使用人に文句を言っている。


「私はローズワール家の次女アリーサよ。

この店は私の店なのだけど、なにかあったのかしら」

と私は言った。



「いや……、

楽しみにしてたのに、売り切れてたから、腹がたって」

と柄の悪そうな男は言った。


「そうなんだ。ゴメンね。思った以上に人気が出ちゃった」

と私は答えた。


「いや……、

だいじょうぶです」

と柄の悪そうな男は頭をかいた。


さすが貴族、

小娘と言えど、丁寧に接してくる。


「またできるから。今度は早めに来てね」

と私は笑顔で答えた。


「ありがとうございます。

また来ます。

失礼します」

と柄の悪そうな男は深く礼をして去っていった。


私たちは屋台を畳んで、屋敷に戻った。

途中

「また食べたいからしてくれよな」

という声援に答えつつ、帰った。


結局残ったのは、皮と内臓の一部と骨と角と頭蓋骨。

皮は革に加工して、内臓は捨てる。

骨はスープに使うらしい。


結局売り上げは、牛の価格の1.8倍くらいになった。

そこから、お父様に半分渡したので、お父様は実質いままでの1割の金額で牛を食べれた事になる。

残り皮を売った金額とかはお父様が全部取るとして、ほぼ無料で食べれた計算だ。

これにはお父様も執事も喜んでいた。

毎年の肉代は貴族にとっても、悩みの種だったからだ。

美味いし、見栄の為の消費もある。

しかし冷凍庫がない、この時代の肉は、1日で腐ってしまうので、

この方法は画期的だったようだ。

レストランも一瞬思ったが、レストランだと場所が必要になるし、

量がさばけない。

祭りにして定期的にやれば、特別感が出て、量もさばける。

なにより使用人も1日限定なら、仕事に支障をきたさない。


そして私は牛一頭分くらいの利益を、ほぼなにもせずに貰った。


それからお父様と私と執事で、お話をし、月に1度肉祭りをする事が決まった。

つまり毎月牛1頭分の利益がなにもせずに入ってくる。

8歳の少女の稼ぎとしては十分だろう。


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