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深い森に足を踏み入れた雌狼  作者: 遊戯-ユウキ-
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第3章 バロンの決意

アッシーパーク @Barefoot_park


雌の獣の皆さん、自分の足にコンプレックスを抱えたりしていませんか?でも、そのコンプレックスが逆にウケる事だってあるんですよ。ご興味がある方はぜひ、当店へ!

昨日、サンに「バロンさん、もう、他のスタッフにカミングアウトしちゃいましょうよ。その方がバロンさんにとってもやりやすくなるでしょ」と自分が「足フェチ界隈の獣」だと言うことをカミングアウトするように促されたバロンは決心がつかないまま、今日の開店準備をしていた。ちょっと早めに夕飯を食べ、とある薬を飲む。


これは獣達には絶対に必要な薬、「フケノン」。獣達には「フケ(発情)の時期が年に1回」必ず来る為、この時期に性犯罪が多発し、無駄な獣口じゅうこう(=人口のこと)を増やさない為に国から飲む事を義務づけられている。


だが、バロンはこの薬を多用している。何故かと言うと自分が「足フェチ界隈」に身を置いているため、スタッフ達の裸足姿を見てしまったら欲望が抑えられなくなるからだ。バロンはこの店を開業する迄に色んな苦労をしてきた。


~過去の映像、開業前~

当時、バロンは自分の店を開業するにあたって「足フェチ界隈」から縁を切る決心をし、病院にある「矯正科きょうせいか」と言う外来に通っていた。「矯正科」とはタバコ・酒・ギャンブル・薬物乱用等の依存症になった獣達が断ち切るための外来だ。もちろん、性犯罪を犯した獣達も判決によってはここに強制的に通院させられ、性欲を減退させられる事もある。バロンは「フェチ」と言うのも一種の「依存症」だと思い通ってみた。だが、通院はバロンにとっては過酷だった。


バロンは診察の結果、個室入院棟に入院する事になった、部屋内は全て「足フェチ」資料であふれかえっている。この部屋を見た瞬間バロンはすぐに欲望が抑えられなくなり、息を荒くし、うずくまる。


「矯正科」は「矯正」に重きを置いているため、ある程度のラインを超えると入院手続きの際に「お仕置き契約」をしたお仕置きが執行されるルールとなっている。


バロンは部門的には「性犯罪矯正」扱いになっているので専用の機器が着けられており、専用の機器がとあるラインを超えたら「お仕置き」が執行される。すぐに室内放送が流れ「デデーン、アウトー。」と鳴った。


直後に担当医が2匹ほど入ってきて、1匹はバロンの足首を床に押しつけ残った1匹は回転ブラシを白衣の内側から取り出し、まずはバロンの耳にモーター音を聞かせる。バロンは身震いして「お願いだ!止めてくれ!!」と懇願する。ブラシを持った担当医はバロンの裸足裏にブラシを押しつけ足の裏を責める。「アヒャヒャヒャ、止めてくれぇー!」叫び声を上げる。


実はバロン、かなりの擽ったがりさんだったのだ、特に足の裏は寝るときまで裸足にならない程、裸足裏を見せたくない獣で、「雌の足の裏のイジメるのが好きなわりに自分は絶対に裸足にならないズルい獣」だったのだ。


バロンの契約は「入院中は靴下を履くの禁止、お仕置きは足の裏擽り」にしていたのだ。バロンはこの契約にしたのは「俺に足の裏をイジメられた雌達の気持ちに敬意を表して」と言う気持ちを込めていた。


少しして、執行が終わり、バロンは息も絶え絶えでグダっとしていた。バロンは「俺にイタズラされた雌達、本当に悪かった…。」と心の中で反省する。だが、この罰は今日だけでかなり食らってしまい、就寝時間となれば死んだように眠った。


2週間が過ぎた後、バロンは医師に呼ばれた。診療室に入り医師から告げられたのは「バロンさん、これ以上続けると危険です。今すぐやめたほうが身のためです。」と告げられた。医師の見解によると「執行回数が未だに少なくならない、しかも笑いによる負担が重すぎて、死ぬ可能性の方が高い」と言われた。バロンは諦めることが出来なく「他の治療法は無いか」と尋ねると、医師は「薬物療法しかない」と答える。バロンは詳しく聞く。


医師は「まず、資料を見ただけでフケ反応が強く出すぎてしまうのは「フケを獣為的じゅういてき(=人為的)に起こしちゃう発作」みたいなもので、難病を患っているとの事。「フケノン」自体の薬物配合量を少なくして体への負担を軽くし、そういう場面に遭遇する時に飲むしかない」とのこと。


~現在~

バロンは受け入れ、特注の薬を処方してもらい今に至っている。その薬が無くなりそうになったら通院し、薬を処方してもらう日々を続けている。バロンは薬を飲んだあと、瓶の中に目をやって「近いうち通院しないとな…。」と呟き、開店時間までに住宅価格兼店を整え始める。


だが、サンの言葉が頭をよぎる。「バロンさん、もう、他のスタッフにカミングアウトしちゃいましょうよ。」彼女の明るい声が、バロンの決心を揺さぶる。確かに、店長としてスタッフたちと信頼関係を築くためには、正直になるべきなのかもしれない。自分が「足フェチ界隈の獣」であることを隠し続けるのは、いつか限界がくるだろう。裸足のスタッフを見ないように目を逸らし、事前に薬を飲み、欲望を抑え込む日々。それでも、こんな生活をいつまで続けられるのか、バロン自身にもわからなかった。


開店時間まであと少し。バロンは薬瓶を自分のデスクの引き出しにしまい、控え室の最終確認に入る。その間も、彼の頭の中では葛藤が渦巻いていた。「カミングアウトするか、しないか」。もしスタッフたちに打ち明けたら、彼女らはどう思うだろう。俺に幻滅してここを去るのか、それとも理解してくれるのか。


控え室の窓から外を眺めた。夕陽が街をオレンジ色に染め、通りを歩く獣達がちらほら見える。彼は深呼吸をして、もう一度サンとの会話を思い出す。「その方がバロンさんにとってもやりやすくなるでしょ。」彼女の言葉には優しさが込められていた。


「俺は足フェチ界隈に身を置く獣です。」そう言える日が来ることを信じて、バロンは店の鍵を開けた。


今日も「アッシーパーク」の1日が始まった。今日の出勤者の中で、俺の本性――つまり足フェチ界隈にどっぷり浸かった獣であることを知ってしまったのはチシャだけだ。だが、チシャは口が硬いスタッフだから、平静を装えば何とか切り抜けられるだろう。


今日は珍しく全員が常勤スタッフで構成された日だ。メイ、リャン、テナ、アーモンド、そしてチシャ。だが、1匹要注意獣ようちゅういじゅうがいる。…テナだ。アカギツネの彼女は靴下脱ぎたがりで、控え室に着くなりすぐさま靴下を脱ぐ癖がある。初めて面談に来た時、裸足にサンダル履きで現れた時は心臓がギュッとなったが、何とか耐えた。彼女曰く「靴下は呪物」で、「靴下を履くと自然と足が暑くなり、足が臭くなる。足にこんな呪いをかけられるなんてゴメンだ」と、靴下履き信者の俺には衝撃的な発言だった。


最初に出勤してきたのはメイだ。「おはようございまーす」と軽やかに言いながら控え室へ入っていく。メイは19歳のヤギで、実家は老舗の和菓子屋を営んでいる。子供の頃から繊細な手仕事に慣れ親しみ、器用さが自慢だ。この店には1年前、18歳の時に非常勤として入ったのがきっかけで、今年から常勤スタッフに乗り換えた。接客態度の柔らかさがあり、今では若手の中で頼れる存在だ。


次にやってきたのはアーモンド。「おはようですぅー」とのほほんとした口調で俺に面と向かって挨拶してくる。23歳のホワイトタイガーで、のんびりした性格だが意外と体力があり、2時間コース指名の連闘も平気にこなす。この店には3年前に入り、客からの指名もそこそこ多い。


続いてリャンが登場。「おはようございます」と丁寧に挨拶してきた。30歳の白毛馬で、彼女は元レース馬。この国では馬限定スポーツ「ホースレーシング」があり、大きく分けて「トラック競技」と「パワーヒル競技」の2部門がある。専用のレース場は全国の一部に存在し、月ごとに全国のレース場をローテーションしていくのだ。彼女はレース馬初の白毛馬として一世を風靡した。格付の高い賞レースは勝てなかったが、白毛馬がこのスポーツに参戦出来るような雰囲気を作った道しるべ的存在。今は「スノー」と言う雌が20歳限定の雌三冠G1の1つ「桜花賞」等、マイル路線での活躍が目立っている。彼女は引退後にこの店に転職し、5年前から常勤スタッフとして働いている。最高齢の彼女は、再契約の時期が迫っており、近いうち足の裏の状態を確認しなければならない。当店は基本的に30歳まで勤務可能としているが、皮膚のコンディションを保てれば延長も可能だ。リャンは毎晩クリームでケアしているらしいが、果たしてどうなるか。


次は要注意獣、テナだ。「おはよーっ!」と元気いっぱいの口調で現れた。20歳のアカギツネで、彼女は当店のスタッフの中では珍しい中卒。卒業後、職を転々としてやっとここに行きつき2年前から働いている。職を転々としていた理由。俺は恐らく、靴下嫌いが祟って、身だしなみの観点から会社からクビにされたんだと思う。面談時、身だしなみは最悪だったし、普段生活は靴の裸足履きとかしていたんだろうから、常に足から臭ってて悪い意味でたまらなく、体験入店で使ってみて不採用にしようと思ったが、天真爛漫さの接客と足の悪臭さが逆に客ウケし、お客様評価が高かった為採用に至った。…が彼女には「靴を履いている時は靴下を履く事。」っと言う条件を何とか飲ませた。憎たらしい事に今では指名率トップクラスだ。靴下履き信者の俺と靴下邪魔信者の彼女は常に敵対関係にある。…が、こういう文句が出るのは無意識に彼女を俺は評価しているかもしれない…。


最後はチシャ。「おはようさん」とさらっと挨拶し、スーッと控え室へ入っていった。


全員が揃った控え室からは、早速テナの声が響いてきた。「はぁー、やっぱり裸足が安心するなー。みんな暑くないの!?」と、いつものように裸足になるよう仕向けている。俺はデスクに座り、指名連絡を待ちながらその声を聞いていた。すると、チシャが突然口を開いた。「なぁ、昨日サンと言う子に初めて(おう)ったんやけどさ、他のみんなまだ会ったことないやんな?ちょっと話聞いてくれへん?」


チシャは昨日を振り返りながら続ける。「昨日な、サンちゃんすごかったで。1回の接客で26万も売り上げてたんや。控え室で待ってる時も落ち着いててさ、なんか普通のスタッフとはちゃう雰囲気あったわ。仕事に対する姿勢がガチやし。ウチ、ちょっとビックリしたくらいやねん。」


メイが目を丸くして反応した。「えーっ、26万!?アタイ、そんなん聞いたらビックリするわぁ。サンさんってそんなすごい獣なん?『えらいおおけもの(=お人)』やねぇ。」アーモンドはのほほんと首をかしげて、「26万ってすごいよねぇ。アモ、想像もつかないよぉ。サンちゃんってどんな感じなんだろぉ、会ってみたいなぁ」とぼんやり呟く。


リャンは少し考えてから口を開いた。「ほぇー、1回で26万とは驚きだねぇ。サンさんって真面目そうだし、足の裏もきれいなんだろうなぁ。チシャちゃんが言うなら間違いないねぇ。」テナは目をキラキラさせて飛びついた。「えーっ!26万!?すっごいじゃん!まっ、でもアタシの方が稼いでいるけどね!でもサン姉には会ってみたいな!絶対カッコいいよね、ついでに靴下をすぐ脱ぐタイプだったらアゲー↑な感じ。」と笑いものびのび。


チシャはさらに話を膨らませた。「なぁ、みんなで考えてみて。サンちゃんは何で26万も稼げたかわかるか?」と質問を投げかける。メイが「うーん、接客が上手いんちゃう?お客さんをノセるのが得意とか」と答える。アーモンドは「アモ思うにぃ、足がすっごくきれいだったんじゃないかなぁ」とぼんやり提案。リャンは「わたくし思うに、特別なサービスでもしたんじゃないかねぇ」と慎重に予想し、テナは「絶対指名時間が長かったんだよ!アタシみたいに元気いっぱい接客したとか!」と勢いよく言う。


だが、チシャは首を振って笑い、「全部ちゃうわ。実はな、昨日19時半頃ににわか雨降とったやろ。たまたま、サンちゃんがお客さんのとこに向かってる途中でその雨にあたったらしく、体全体びしょ濡れになってたんやと。もちろん足元もね。その濡れた状態の裸足裏のニオイに夢中になってしまったお客さんが嗅ぎに嗅ぎまくって、『嗅ぎ』料金が多かったらしいで」と明かす。


さらにチシャは続ける。「サンちゃんの方が先に店戻ってきてたんやけど、ウチがここに戻ってきたら何と裸足のままやったんよ。理由聞いたら、乾燥機にかけたはずの靴が乾ききってなくて、気持ち悪いから裸足履きで帰ってきたんやって。で、サンちゃんが控え室に入ってきて『嗅いでみる?』って足差し出してきたから、ちょっと鼻近づけたら、臭かったわー。ほんまビックリしたで。」


それを聞いて、メイが「うわっ、そりゃお客さん興奮するわぁ。彼女の濡れた足のニオイってそんなすごいん?」と驚きつつ笑う。アーモンドは「えぇー、アモも嗅いでみたいかもぉ。どんなニオイなんだろぉ」と興味津々。リャンは「ほぇー、雨で濡れた足かぁ。わたくしならクリームの香りしか出さんけど、サンさんのは自然な感じだったのかねぇ」と感心した様子。テナは「えーっ!アタシなら絶対負けないニオイ出せるよ!でもサン姉の足、どんなニオイか気になるー!」と大騒ぎ。


すると、チシャ以外のスタッフでサンの足のニオイ予想論争が勃発。メイが「アタイ思うに、ちょっと酸っぱい感じちゃう?雨で濡れたし」と言い出すと、アーモンドが「アモはぁ、なんか甘いニオイが混ざってる気がするぅ」とほわっと返す。リャンは「わたくしなら、土っぽい感じじゃないかねぇ。」と冷静に分析し、テナが「アタシは絶対スパイシーなニオイだと思う!サン姉ならそれくらいパンチ効いてるよ!」と笑いながら主張。控え室は楽しそうな笑い声で溢れていた。


チシャはみんなの反応を見てニヤリと笑い、話題を自然に切り替えた。「まぁ、サンちゃんの話はそんな感じや。…ところでみんな、バロンさんの店長としての評価ってどう思う?印象とかさ、ぶっちゃけどうなん?」と軽い調子で聞き出す。


メイが最初に答えた。「バロンさん?ええ獣やと思うわ。仕事きっちりしてるし、アタイらにも優しいしねぇ。ちょっと足のこと気にしてるっぽいけど、そこはまぁご愛嬌やろ。」アーモンドはのんびり続ける。「アモ、バロンちゃん好きだよぉ。なんか頼れるし、優しいよねぇ。足のことよく見てるとこあるけど、アモは気にならないなぁ。」


リャンは穏やかに頷きながら、「バロンさんはしっかりしてるよなぁ。わたくしみたいな年寄りにもちゃんと気遣ってくれるし、店長として立派だと思うねぇ。足にこだわりあるみたいだけど、まぁこの仕事に就いている以上は必要な指導だしねぇ」と冷静に補足。テナは勢いよく、「バロン兄、超いい獣だよ!仕事も教えてくれるし、最高の店長だと思う!でも、足の事についてはうるさいけどねー。いちいち干渉してくんな!って感じ。」と明るく締めた。


俺は聞き耳を立てつつ、心の中でホッとした。チシャ以外に俺の本性がバレる気配はなく、「足フェチ獣」と決めつける話も出なかった。チシャの切り出し方は絶妙で、自然な流れでスタッフの本音を引き出してる。さすがだ。


俺は平静を保ちつつ、スタッフに指示を出し、指名が入れば対応を割り振り、何事もなく閉店時間を迎えた。控え室の会話が頭に残りつつも、チシャ以外に俺の本性がバレる気配はなさそうだ。スタッフ同士の仲の良さが逆に助けになったのかもしれない。


次の日の午前中、バロンは病院にいた。目的は例の薬――特注の「フケノン」を処方してもらうためだ。前回の通院から3ヶ月が経ち、前回は薬だけを受け取りに来ただけだったから、最後にちゃんと診察してもらってから半年が経過している。今回はただ薬をもらうだけじゃ済まない。診察が必須だ。看護師に名前を呼ばれ、まず血液検査を命じられ、「採血室」に行った。少しして、採血が終わると、「矯正科」の窓口にカルテを戻し、次の呼び出しを待つ。


少し待つと、また看護師に呼ばれた。今度は別の部屋に案内される。そこは手術室がある立ち入り禁止ゾーンで、少し緊張が走る。手術室を越え、「経過観察室」と書かれた部屋にたどり着く。看護師に促されて中に入ると、観察医と呼ばれる雄の獣が待っていた。50代くらいのシロクマだろうか、眼光が鋭い。俺に「入院着に着替えてください」と言うので、私服を脱いで渡された薄い入院着に着替える。すると観察医が近づいてきて、上に着ている入院着を少し脱がし、心電図検査機器をつけ、更に下に履いている入院着を軽くおろし、専用機器が装着された。いくら雄同士だからといって裸を見られるのは恥ずかしいものがある。機器を着けられ、あの時の記憶――足フェチを絶つための入院生活が一瞬フラッシュバックする。あの苦しみと屈辱が頭をよぎり、胸が締め付けられる。観察医はその間に、入院着を整え、鼻の穴に空気を送るための管を挿入し、頭には脳波を測定する機器を装着する。準備が整うと、「では、中に入ってください」と個室のドアが開けられた。


俺はその個室に入る。扉が閉まると、白い殺風景な壁に囲まれた空間が広がり、中央に不自然に置かれたリクライニング椅子が目に入る。他には何もない。指示に従い、その椅子に座ると、両手首と両足首が自動で拘束され、身動きが取れなくなる。室内に観察医の声が響く。「バロンさん、これから経過観察を始めますので、深呼吸してください。」俺は大きく息を吸い、吐き出す。観察医が続ける。「まず、経過観察にあたって、事前にいつもの薬は摂取していませんね?」俺は「はい」と短く答える。「バロンさんにとっては苦しい時間になりますが、頑張りましょう。では、例の資料を流しますので、リラックスしてください。」放送が切れると同時に、リクライニング椅子の背もたれが倒れ、足かけが上がり、ベッドに寝転がったような姿勢になる。部屋が映画館のように薄暗くなり、目の前に有機ELの薄い画面がスッと現れる。


画面に映し出されたのは、「とある雌狼を背後から追うカメラ映像」だ。カメラが揺れながら彼女の後ろ姿を捉え、たまに脚にズームインする。ブーツを履いた細い脚が一瞬映っただけで、俺の心臓がドクドクと鳴り始める。映像は続き、カメラを持った獣が彼女を手で呼び止める。彼女が立ち止まり、話を聞いている。カメラは顔を映さず、時折脚にレンズを下げてすぐ戻す仕草を繰り返す。「恐らく足の撮影交渉をしてるんだろう」と俺には分かる。脚が映るたび、「うっ!」と声が漏れる。頭の中ではその雌狼がサンに置き換わり、彼女が2日前にスニーカーの裸足履きに俺が気付いた所がフラッシュバックする。罪悪感がチクリと刺さるが、抑えられない。


映像が切り替わり、雌狼のアゴが一瞬見え、「快諾したんだな」と確信する。次のシーンは室内――扉に向けたカメラに彼女が手を振って入ってくる。カメラが下に振られ、足元を映す。ブーツを履いていた彼女がベッドの縁に座り、「えー」と気まずそうな表情で指をブーツに差し込む。カメラが足元に寄り、ブーツを脱ぐ瞬間をじっくり映す。革が足から離れる瞬間、「はぁっ!」と俺は唸る。心臓の鼓動が速くなり、息が荒くなる。いつの間にかブーツが脱げ、右足の靴下が指先だけ残った状態のシーンまで進んでおり、彼女が「えいっ!」と靴下を脱ぎ捨てる。裸足が露わになり、指でグーパーを繰り返す。カメラがあらゆるアングルでその足を捉える――横から、斜め上から、足裏を真正面から。湿った足裏は雨に濡れたような光沢があり、俺は「ハァ、ハァ…」と興奮が抑えきれなくなる。2日前、カーペットから嗅ぎ取ったニオイ――「雨に濡れた靴下で蒸れた濃厚さ、湿った布のような生臭さ、汗と皮脂が混じった酸っぱさ、靴下の繊維が発酵したような下水道を思わせる重たい香り」が甦り、映像と混ざり合って俺を苦悶させる。


気がついたら、映像が切り替わっていた。今度はランニング中のベンガルトラ獣だ。カメラが彼女を背後から追い、汗で光る脚が映る。彼女が立ち止まり、交渉が始まる。室内に移動し、彼女がスニーカーを脱ぐシーンへ。靴下を脱ぎ、足裏が露わになると、蒸れて赤らんだ皮膚がドアップで映し出される。指の間には汗が溜まり、赤みがかった足裏がカメラのあらゆるアングルで映される――真下から見上げたショット、斜め横から捉えた曲線、指先をアップにした映像。鼻の管からニオイサンプルが流れ込む。熱を帯びた汗の酸っぱさと、蒸れた靴下のこもった湿気臭が混じり、濃厚な香りが鼻腔を襲う。


俺の心臓は再びドクドクと鳴り、「うぅっ!」と唸る。蒸れた赤い足裏が視界を埋め、息が乱れ、「たまらねぇ…」と呟きながら、体が熱くなる。ニオイがさらに強まり、汗と皮膚の混ざった生々しい刺激に耐えきれず、嫌悪感が同時に押し寄せ、俺は目をぎゅっと閉じる。


次は雨宿り中の女子高生ウサギ獣。カメラが彼女を追い、傘の下で交渉する。室内で彼女が黒い学生靴と靴下を脱ぐと、ふやけた足裏が露わに。黒い靴下の毛玉がびっしり付着し、湿気で皮膚が白っぽくふやけている。カメラが足裏を多角的に映す――毛玉がこびりついた指の間のアップ、ふやけたかかとのクローズアップ、全体を俯瞰した不潔感溢れるショット。鼻に流れてきたニオイは、濡れた靴下の雑巾のようなカビ臭さと、ふやけた皮膚の甘ったるい腐敗臭が混じったものだ。


俺は「うっ…くっせぇ…」と呟きつつ、目を離せない。心臓がバクバクし、「汚ねぇのに…何だこの魅力は…」と混乱する。カーペットで嗅いだニオイとは違う、不衛生さが逆に興奮を煽る。ニオイが喉に引っかかり、咳き込みそうになるが、何とか耐えきる。だが、自己嫌悪に苛まれる。


次は日サロで出会ったギャル風キツネ獣。カメラが彼女を追い、サンダルを履いた脚が映る。室内で彼女は片足をシャワーサンダルに指先で引っかけたまま、もう片方の日焼けした足裏を見せつける。こんがり焼けた足裏は、指先まで均等に色づいている、カメラが角度を変え続ける――指先でサンダルを揺らす動き、日焼けした踵の硬そうな質感、足裏全体のコントラスト。ニオイサンプルは、焼けた皮膚の焦げたような香ばしさと、サンダルのゴム臭が混じった刺激的な香りだ。


「うぉっ…焼けてる…」と俺は唸る。日焼けした足に目を奪われる。ニオイが鼻を突き、頭がクラクラする。「暑さと香ばしさが…ヤバい…」と呟き、俺は歯を食いしばる。


最後は温泉街の足湯で出会ったOLヒツジ獣。カメラが追い、足湯から上がる彼女を交渉。大理石で出来た浴槽の縁(座る場所)に縦に座らせ、足が置く部分の下にタオルを敷き、その上で足湯で濡れた足を見せる。お湯が滴り、柔らかそうな足裏が光沢を帯びる。カメラが足裏を捉える――滴る水滴が指の間を流れ落ちる様子、濡れてツヤツヤの踵、足全体の柔らかい質感。時々レンズが湯気によって曇っては布で拭くシーンもあり、実に足湯からあがりたてだと言うことが強調されている。ニオイは、温泉の硫黄臭と、温まった皮膚のほのかな甘い香りが混ざったものだ。


「うぅ…濡れてる…」と俺は呻く。お湯で柔らかくなった足に目を奪われ、硫黄臭が鼻を刺激し、「温かくて…たまらねぇ…」と興奮が高まるが、すぐに罪悪感と欲望が混じる。


経過観察が終わり、リクライニング椅子が元の位置に戻る。俺は深呼吸していると、観察医が入ってきて、脳波、心電図検査の機器を外しながら「お疲れ様でした。やはり、汗がすごいですね…。奥にシャワールームがありますので、体の汗を洗い流してください。」と言う。俺はシャワールームに移動する。


脱衣所でまず、靴下を脱ぐ。何度も興奮してしまった影響で汗だくとなり濡れてしまっている。興味本位で嗅いでみると柔軟剤のニオイは残っているがほんのりと汗のニオイを感じられる。「うっ。」と一瞬反応してしまった。「自分のニオイにも興奮しちゃうのかよ…こりゃ重症だわ。」と自虐した。服を脱いでいき、裸になる。機器を着けられている部分は汗のテカリが見え、若干痒みが出ている。脱衣所に「使用済みの検査機器はこちらに」と書かれたゴミ箱に残りの機器を放り込み、シャワーを浴び始め、汗を洗い流す。ぬるめのお湯で、少し冷静になれた。


一般病棟に戻り、再び看護師に呼ばれて診察室へ。椅子に座り、医者――40代くらいのヒグマの獣がデータを見ながら話し始める。「まずは、最初の脚が映った瞬間にかなり強い反応が出ていますね。その時の感覚は?」俺は「心臓の鼓動が早くなってきました」と正直に答える。医者は頷き、「やはり、ここから既にホルモンが分泌し始めているか…。次はこのシーン、脚が映されるところですね。んで、ここ…足裏をずっと映されていたシーンでは、常に強い反応が続いてますね。そして、ここで反応が一気に落ちてるから、ここで一回目か…。」グラフを指しながら分析する。


医者は「反応が一気に落ちたのは合計10回。1つの映像で2回ずつか…。」医者は眉を寄せ、「引き続き処方を続けましょう」と判断。「バロンさんは、自分の趣味を生かした店を開業してましたよね?こんな病気を患ってるのに、よく経営してますね。実に荒療治ですよ…。」と続ける。


俺は「耐性をつけるためにやってるんです。もちろん、薬には頼ってますが…。」と返す。医者は顔を曇らせ、「でも、未だに解決に至ってない…。辞めた方が身のためのような気がしますが…」と言う。俺は慌てて「いやっ、この仕事は楽しいんです。絶対にこの病気を治して見せますから!大目に見てください…。」と懇願する。医者はため息をつき、「とりあえず、3ヶ月分出しておきます。引き続き続けてください。ただし、最悪の場合、ドクターストップをかけざるを得ませんからね。」と警告し、PCで処方箋を作成。「はい、いいですよ。お大事に。」と言い、俺は診察室を出た。しばらくして、薬を受け取り、自宅兼店に向かって車を走らせた。


今日も「アッシーパーク」の営業が始まった。今日は常勤スタッフ2匹、非常勤スタッフ3匹の面子だ。常勤はチシャとテナ、非常勤はエルム、カエデ、エリーザ。


最初に出勤してきたのはチシャだ。「なぁ、昨日の話聞いてたよね?」と俺に近づいてくる。「バロンさんも早くスッキリするのがいいと思うで。まっ、テナ以外のスタッフには今日も巧く誘導するから、聞き耳立てといてよ」と軽く言い放ち、控え室へ入っていく。


次に来たのはカエデだ。「おはようございます」と丁寧に俺に挨拶してくる。カエデは18歳のキツネで、彼女は去年、高校を卒業したばかりで、この店の非常勤として働き始めた。元々は田舎育ちで、丁寧な言葉遣いが染みついているらしい。面接に来た時、緊張で声が震えていたのを覚えてるが、その若さと素直さが客に好評だ。彼女が控え室に入っていく後ろ姿を見ながら、俺は「若いのにしっかりしてるな」と感心する。


次に来たのはエルムだ。「おはようございまーす」と少し高貴な口調で流しながら控え室へ。


次はテナだ。「バロン兄、今日も来てやったぞ、感謝してよね!」と元気いっぱいに言い放って控え室へ入っていく。俺は「あー、はい、はい」と適当に流すが、内心少しイラッとする。だが、昨日、俺を評価しているっという話を聞いてしまってるから、複雑な気持ちだ。


最後に来たのはエリーザ。「おはようございます。」と高貴な口調で俺に挨拶し、控え室へ向かう。彼女は元々資産家の娘で、若い頃はセレブ生活を送っていたが、家業が傾き、生活のためにこの店で非常勤として働くようになった。30歳で今年契約更新が迫っており、足のコンディション次第では満了もあり得る。高貴な振る舞いで、お客様を罵り倒しながらメニューを受けるハードスタイルがウリで、更に美意識の高さも客にウケてるが、俺は彼女の遠回しな物言いが少し怖い。彼女が通り過ぎるのを見ながら、「どうするかな…」と少し考える。


控え室では、案の定、テナが靴下を脱いでいた。「マジで靴下履きキモいわー。バロン兄うるさいからなぁー」と不満を口にする。それに対し、エルムが冷静に返す。「気持ちは分かるけど、足のコンディションが重要視される職場なんだから、そこは我慢しないと。まず靴の裸足履きは水虫になるよ。私の知獣ちじゅう(=知人)に患った子がいたけど、毎日痒くてたまらなくて、掻けば血が出てくるんだって。爪も白く変色し、皮膚はガッサガサ。30歳未満なのに既にそんな状態だから、万が一ここを受けても不採用だろうね。「治療中は菌が飛ぶから掻くな」と言われるらしく、ものすごいストレスを抱えたらしいわ。それから彼女は靴下を履くようになったんだって。あなたもそんな生活したくないでしょ?」


テナは負けじと反論。「アタシはしっかり風呂で『ひゃー』って言いながらゴシゴシ足洗ってるから水虫なんか無縁だしー。エルムさんの知獣は足が不潔だったんでしょ?」と論破してくる。そこにエリーザが割り込む。「あら、あなた意外に『風呂キャンセル界隈』じゃないんですわね。でも、たまにあなた、出勤時に足が気になるときあるんですわ」と遠回しにテナの心に刺さる一撃を放つ。テナは「はぁ!?靴下を履くように促してくるバロン兄のせいで足が臭くなってるんだ!!」とムキになる。カエデが大声で制止する。「2匹共やめてください!控え室の環境をギクシャクさせないでくださいよ」と仲裁に入る。


俺はデスクで聞き耳を立てながら、「エリーザって意外に怖いな」と改めて思う。高貴な口調の裏に、心を抉るような遠回しな物言いが潜んでる。彼女と話す時、いつ「足フェチだろ?」と核心を突かれそうでビクビクしてる自分がいる。


チシャが話題を変える。「エルムさんはサンちゃんと一緒になったことあるやんな?あなたから見て彼女の印象はどう思ったん?」と振る。カエデとエリーザが「誰?」みたいな顔で前のめりになり、エルムの言葉に注目する。エルムが少し考えて答える。「サンさんは、とても素晴らしい方よ。仕事に対する姿勢が真剣で、落ち着いた雰囲気を持ってる。私と一緒に出勤した時、すごく信頼できる獣だと思ったわ。」と高評価する。カエデが「へぇ、そんな方なんですね」と興味津々で頷き、エリーザも「それは素敵な方ですわね」と感心した様子。


少しして、今日1匹目の指名が入った。お客様が指名したのはテナだ。「まぁーた、靴下履きかぁ。ねぇ、バロン兄、裸足履きの許可してよー」と要求してくるが、俺は「ダメだ」と突っぱねる。テナは「本当に堅いなぁー」と頬を膨らませ、接客に向かう。


するとチシャが仕掛ける。「みんな聞いて、最近私、ふと思った事があってさ…みんなバロンさんの事どう思ってる?私は評価してるで」と聞き出す。残ったスタッフが考え、口を開く。


エルムが最初に答える。「バロンさんは、とても頼りになる店長だと思うわ。仕事に対して真剣で、私たちスタッフへの指示も的確だし、何よりこの店の雰囲気をしっかり保ってくれてる。足のコンディションに厳しいのも、この仕事のプロ意識からきてるんだろうね。私としては尊敬してるわ。」


カエデが続く。「私も、バロンさんを高く評価しています。初めて出勤した時、緊張してた私に優しく接してくれて、仕事のやり方を丁寧に教えてくれたんです。少し厳しい時もあるけど、それは私たちのためなんだなって分かります。すごく良い店長だと思います。」


エリーザが少し間を置いて言う。「アタクシも、バロンさんを評価しておりますわ。店を切り盛りする手腕は見事ですし、スタッフへの気遣いも感じますもの。足のことには少しこだわりがあるようですけど、それがこの店の品質を保つ秘訣なのかもしれませんわね。素晴らしい方ですわ。」


チシャが締める。「ウチもそう思うわ。バロンさんは真面目で、スタッフ思いやし、店長として申し分ない。足のこと気にしてるみたいやけど、それが仕事に影響するわけちゃうし、むしろ個性やろ。」


俺は聞き耳を立ててて、心の中でホッとする。今回のメンバーも「足フェチ獣だ」と勘づいてる様子はない。チシャの誘導が上手いのもあるが、みんなが俺を評価してくれてることに少し安堵する。何事もなく、閉店時間まで仕事をこなし、今日も店を終えた。


静寂が店を包む。バロンは夜食を食べながら今日と昨日のことを振り返っていた。チシャが巧みに引き出したスタッフたちの俺への評価が頭を巡る。


~過去の映像~

メイ「バロンさん?ええ獣やと思うわ。仕事きっちりしてるし、アタイらにも優しいしねぇ。ちょっと足のこと気にしてるっぽいけど、そこはまぁご愛嬌やろ。」


アーモンド「アモ、バロンちゃん好きだよぉ。なんか頼れるし、優しいよねぇ。足のことよく見てるとこあるけど、アモは気にならないなぁ。」


リャン「バロンさんはしっかりしてるよなぁ。わたくしみたいな年寄りにもちゃんと気遣ってくれるし、店長として立派だと思うねぇ。足にこだわりあるみたいだけど、まぁこの仕事に就いている以上は必要な指導だしねぇ」


テナ「バロン兄、超いい獣だよ!仕事も教えてくれるし、最高の店長だと思う!でも、足の事についてはうるさいけどねー。いちいち干渉してくんな!って感じ。」


エルム「バロンさんは、とても頼りになる店長だと思うわ。仕事に対して真剣で、私たちスタッフへの指示も的確だし、何よりこの店の雰囲気をしっかり保ってくれてる。足のコンディションに厳しいのも、この仕事のプロ意識からきてるんだろうね。私としては尊敬してるわ。」


カエデ「私も、バロンさんを高く評価しています。初めて出勤した時、緊張してた私に優しく接してくれて、仕事のやり方を丁寧に教えてくれたんです。少し厳しい時もあるけど、それは私たちのためなんだなって分かります。すごく良い店長だと思います。」


エリーザ「アタクシも、バロンさんを評価しておりますわ。店を切り盛りする手腕は見事ですし、スタッフへの気遣いも感じますもの。足のことには少しこだわりがあるようですけど、それがこの店の品質を保つ秘訣なのかもしれませんわね。素晴らしい方ですわ。」


~現在~

だが、俺は箸を止めて呟く。「今は評価してるけど、カミングアウトしたら一気に評価が悪くなりそうだしなぁ…」疑心暗鬼が頭をもたげる。もし俺が「実は足フェチなんだ」と打ち明けたら、どうなるか。想像が膨らむ。


~バロンの想像~

控え室で俺がスタッフ全員に告白するシーンが浮かぶ。「みんな、実は俺、足フェチなんだ…。」と正直に話す。すると、メイが目を丸くして「えぇっ…それ本当なん?気持ち悪いとは言わんけど、ちょっと引くわぁ…」と遠慮がちに距離を置く。


アーモンドは「えぇー、アモ、びっくりだよぉ…バロンちゃん、そういう獣だったんだぁ…」と呟きつつ、明らかに困惑した顔。


リャンは「ほぇー、それは驚きだねぇ。わたくしは気にしないけど、正直気持ち悪いって思う獣もいるかもなぁ…」と冷静に言うが、その言葉に冷たさを感じる。


テナは大声で「何!?バロン兄、マジで!?うわっ、キモっ!足にうるさいのもそれが理由かよ!近寄んな!」と一気に拒絶。


エルムは静かに「バロンさん…それは衝撃的ね。私、尊敬してたけど、それなら少し距離を置きたいわ。仕事は別だけど…」と知的な口調で信頼が揺らぐ様子を見せる。


カエデは「私…そんなこと聞いて、どう接したらいいか分かりません…気持ち悪いとは言いませんが、ちょっと怖いです…」と遠ざかる。


エリーザは「あら、そんな下品な趣味をお持ちだったんですの?アタクシ、がっかりですわ。信頼してたのに残念ですわね!」と高貴な口調で冷たく切り捨てる。


チシャだけが「まぁ、そういうこともあるやろ。ウチは気にせんけどな」とフォローするが、他のスタッフの反応に埋もれてしまう。


俺は想像の中で、みんなの視線が冷たくなり、信頼が崩れていくのを感じる。「やっぱり、カミングアウトしたら終わりだ…」と心が沈む。


~過去の映像~

医者「でも、未だに解決に至ってない…辞めた方が身のためのような気がしますが…」「最悪の場合、ドクターストップをかけざるを得ませんからね」


~現在~

俺は呟く。「もしかしたら、この店を畳まなきゃならないかもしれない…でも、そうなったら、彼女たちはどうなる!?特に常勤スタッフ…」


~バロンの想像~

最悪の想像が広がる。店を畳むことになり、俺は全スタッフを控え室に集める。「みんな、申し訳ない!この店を廃業するしかなくなった…」と伝える。


チシャが「何!?マジかよ…ウチ、どうすりゃええんや…」と顔を曇らせ、メイが「えぇっ、そんなぁ…アタイ、この仕事好きやったのに…」と涙目になる。


アーモンドは「アモ、悲しいよぉ…バロンちゃん、どうしてこうなっちゃったのぉ…」と泣き出し、リャンは「ほぇー、残念だねぇ。わたくし、ここで働くの楽しかったのに…」と肩を落とす。


テナは「っざっけんなよ!最悪だわ!」と怒りをぶつけてくる。


非常勤のエルムは「廃業…信じられないわ。私、この店で頑張ってたのに…」と呆然とし、カエデは「私、どうしたらいいんでしょう…新しい仕事探すの怖いです…」と不安げに呟く。


エリーザは「こんな素敵なお仕事が終わるなんて、信じられませんわ。アタクシ、悲しみに打ちひしがれておりますわ」と高貴に嘆く。控え室は悲しみと混乱に包まれ、俺はその中心で無力感に苛まれる。「俺のせいで…みんなをこんな目に…」と罪悪感が胸を締め付ける。


~現在~

だが、俺は別の考えに辿り着く。「もし、カミングアウトしても残ったスタッフたちで俺の病気を治す要員として使っていく手もあるか…」悪い考えが浮かぶ。チシャや一部の理解あるスタッフに協力を仰ぎ、治療の一環として足の誘惑に耐える訓練を続ける。それで医者のドクターストップを回避できれば…。俺は決心を固める。「だったら、洗いざらい話して、ドクターストップが来るまで後悔なくやり切れば、俺もこの業界から素直に手を引いて、治療に励むとしよう…」と考えを改め、夜食を流し込んだ。


寝る準備をしながら、バロンは昨日履いていた靴下を洗濯カゴから持ってくる。病院で「自分のニオイ」でも反応が起きることが分かったから、まずはそれで耐える練習だ。枕の近くに靴下を吊り下げ、鼻を近づける。ニオイは強烈だ――一日中靴の中で蒸れた汗と皮脂が混じり、濃厚な酸っぱさが鼻を突く。靴下の繊維が湿気を吸って発酵したような、チーズのような重たい臭気が広がる。さらに、俺のオオカミ特有の獣臭が絡み合い、嗅ぐだけで頭がクラクラする。「あぁ!うっ!」と耐える声が漏れ、心臓がドクドク鳴る。耐えろ、耐えろ…!」と自分を叱咤する。欲望と戦いながら、俺は眠りに落ちた。


ここはサンの職場。某企業の事務室だ。サン含め4匹のスタッフが静かに働いている。紙をめくる音、キーボードを叩く音が響き、時折電話のベルが鳴る。壁掛け時計のアラームが12時を告げると、緊張が解けたように職員たちが和気あいあいと隣のデスクに話しかけ始める。サンの同僚、雌の丹頂鶴クシロが「ねぇ、サン、外でランチしない?」と誘ってくる。サンは「あっ、ごめんね。弁当用意してるんだ」と断りを入れる。クシロは「そっかー、じゃあしょうがないね」と少し残念そうに笑い、外食に出かけた。すると、デスク上のスマホが一瞬震える。サンが見ると、「アッシーパーク」のスタッフが共有するLINEグループチャットに通知が来ていた。


「お疲れ様です。バロンです。

本日、店は臨時休業とし、ミーティングを行う事と致しました。全員19時には店に来て下さい。

来ないとお仕置きを食らうかもよ?(笑)」


サンはいち早く察した。「バロンさん、腹を括ったね…」内心、嬉しさと、バロンさんの秘密をチシャさんと自分しか知らない状況が終わりを迎えるワクワク感が込み上げ、ついニヤリとする。だが、すぐ気持ちを切り替え、弁当を持って休憩スペースへ向かった。


19時頃、「アッシーパーク」の控え室。サンにとって初めて顔を合わせるスタッフもいるため、少し楽しみだった。普段は少匹数でシフトを回しているため、控え室だけでは全員を収容しきれず、写真撮影室との間の襖が外され、広い空間が作られていた。スタッフたちが座って待っていると、バロンが入ってくる。咳払いをして、「急な予定変更、すまない。もちろん、今日出勤予定だったスタッフには給与を渡す」と言うと、出勤予定外のスタッフから「ブー!」とブーイングが上がる。バロンは「分かった、分かった!10万は出せないが、1万くらいは出すから」と笑ってなだめ、話を続ける。


「今日、ここに集まってもらったのは他でもない…」と切り出すが、すぐには本題に入らず、前置きを始める。「実はさ、この店を始めてから色々あってね。最初はスタッフ集めるのも大変で、どうやってこの業界でやっていこうか悩んだ時期もあったんだ。足のコンディションにこだわるのも、客に喜んでもらうためだし、俺なりに試行錯誤してきた結果なんだよ」と少し脱線気味に語る。スタッフたちは最初は興味深く聞いていたが、話が長引くにつれ、ダレた空気が流れ始める。テナが「ねぇ、バロン兄、早く本題入ってよー」と呟き、アーモンドが「アモ、眠くなってきたよぉ…」とぼんやり言う。


その空気を断ち切るように、ブルボンが口を開く。「バロン殿、前置きだけで既に10分05秒を割いております。スタッフたちもダレ始めているので、いい加減、本編に入っていただけないでしょうか?」サンは心の中で「細かすぎるスタッフだなぁ…秒まで伝えるなんて、公務員出身かなんかなのかな?」と少し笑う。バロンは「おおっと、話が過ぎた様だな…では本編に入ろうか…」と切り出した瞬間、深呼吸をし、意を決して口を開く。


「わたくし、バロンは『足フェチ界隈』に身を置いています。この店を開業したのも、単純に皆の裸足姿を拝めるんじゃないかという淡い期待です…」とカミングアウト。スタッフたちは一瞬静まり、お互いに顔を見合わせ、状況を把握しきれていない様子。サンとチシャは「やっぱり、ダメだったか…」と心の中で反省する。バロンは続ける。「もし、辞めたいと思うならそれでもいい。こんな獣の下で働きたくないよな、ハハッ!」と自嘲気味に笑う。


サンが我慢できず、「この変態オオカミが!」とヤジを飛ばす。すると「さぁ、皆で言おう!せーのっ!」と指揮を取ると、スタッフ全員が「この変態オオカミが!」と一斉に罵る。バロンは「やっぱ、そうなるよね」と明るく返すが、エルムが立ち上がり、「バロンさん、今更遅いですよ。だって私たち、この職場に入ってバロンさんによってしっかり調教されちゃってるんですから。今更言ったって、既に耐性はありますよ。なぁ、みんな!」と聞くと、他のスタッフが「もちろん!」と口を揃える。


ハルが続ける。「むしろ、私たちにとっても更にやりやすくなるよ。接客の仕方で困った時、練習相手として頼めるし!」エリーザも「もし、『足フェチ』というものに苦手意識があるんだったら、1日で辞めるでしょ。ここまで残ってるスタッフたちはそんな意識がないから続いてるんですから」と補足。


テナが勢いよく、「アタシは許さないよ!だって、常に裸足にさせてくれないし!確かバロン兄、アタシが面談に来た時、体験入店で済まそうと仕向けてたよね?実はあの時、アタシの足のニオイに不潔感を覚え、遠ざけようとしてたんでしょ!でも、本当はバロン兄がそのニオイに欲情しちゃう体になってるから近くに置きたくなかった。靴下を無理やり履くように仕向けたのは、アタシの裸足姿を見たくなかった…見ちゃうとあのニオイが甦るからだったんでしょ!よぉーし、こうなったら接客後に汗だくになったくっさい足のニオイ、バロン兄の鼻の穴に突っ込んでやる!」と嫌いを装うが、内心はついていきたいと思っている。バロンは「それでも靴を履く場合は裸足は禁止だ」と返す。他のスタッフが「それは当たり前」と支持し、テナは「もぉー!何でよー!!」と頬を膨らます。


バロンはさらに続ける。「俺、実はこの店を開業する前に『足フェチ』を卒業しようと色々やってきたんだ。やっぱり雇う側になるから、自分の欲望が抑えきれず皆を傷つけるリスクもあるからね。だから、せめて裸足姿を拝めれば満足って気持ちでここまでやってきた」と過去を語る。メイが「そんな長いこと苦しんで、辛くなかった?」と聞くと、バロンは「もちろん、辛かった時はあったが、今は辛くない。この仕事に携われて楽しいからな」と答える。


するとテナが「バロン兄、靴下を脱いでよ!」と言い出す。バロンが困惑すると、「だって、バロン兄、この店を開業するまでは私たちの足の裏をイジメる側だったんだよね?でも、アタシ、バロン兄の裸足姿見たことないもん!去年のくっそ暑い夏でも常に靴下履き」と畳み掛ける。バロンは「それは別にいいだろうよ」と反論するが、テナが「ぬーげ、ぬーげ、ぬーげ…」と「靴下を脱げ」コールを始める。ビィが「確かに一理あるじゃけぇな」と感化され、加担する。コールがスタッフに伝播し、大合唱に。サンもチシャもノリノリで参加する。


エルムがトドメを刺す。「そうね、私たちは常にお客様と相対したら裸足姿を晒すハメになるのに、バロンさんはその機会が全くないし、昔はお客様側にいたんだからズルいっちゃズルいわね。ここは対等の立場になりましょ」と冷静に言う。バロンは「分かった、分かったから!脱ぐ、脱ぐって!」と観念し、靴下を脱いで足の裏を晒す。スタッフたちは「大っきい足」「オオカミらしいね」とまじまじと見つめる。バロンは「終わりだ、終わり」と言いながら靴下を履き直し、「今日は集まってくれてありがとう。給料を用意するから待ってて」とデスクに戻る。


サン、チシャ以外のスタッフが帰った後、バロンは「ハァー、疲れたー」とデスクに体を突っ伏しながら疲労を見せる。サンが「お疲れ様でした、バロンさん」とねぎらい、チシャが「これで楽になったでしょ?」と聞く。バロンは「とりあえず、受け入れられてよかった…」とホッとする。チシャが「でも、テナさんを採用する前、そんな事があったんやな」と言うと、バロンは「あの時のテナのニオイ、マジでヤバかったんだって」と振り返る。サンが「でも、クセになりそうだったんでしょ?」と意地悪く言うと、バロンは「そんな事なかった。彼女の場合は身だしなみがなってなかったから、第一印象で採用したくなかったんだ」と弁明。


サンが「でも、採用してるじゃん」と突っ込むと、バロンは「お客様評価が高かったんだ。仕方なく…」と返す。チシャが「確かにテナもムキになりすぎてたと思う。その復讐としてバロンさんに靴下脱ぐよう迫ったんやろ」と分析。バロンは「そういうキミたちだって加担してたじゃないか」と言い返す。サンが「雌を甘く見ない方がいいですよ」と笑う。バロンが「俺、スタッフたちに何か悪いことした?」と聞くと、サンは「私は少なからずありますけど、他のみんなはただのノリじゃないですか?」と返す。チシャが「それだけみんなバロンさんを慕ってるって事や」とまとめる。


サンが「じゃあ、次出勤した日の閉店後に、バロンさんに私の足の裏をイジメてもらおうかなぁ?」と冗談っぽく言う。バロンが「いやっ、それはちょっと…」と断ろうとすると、「バロンさんの本性もっと体験したいからね。いいでしょ?他のスタッフには言わないから。ねっ!」と満面の笑みで迫る。バロンは「あっ、あぁ…」と押し負ける。チシャも「一番最初に『足フェチ』だと知った者同士の密約ってことで、私もたまにちょっかいかけに来てやるわ」と宣言し、まもなくお開きとなった。


~第3章 END~

今章の登場獣

~アッシーパーク関係者~

・リャン(白毛馬/30歳/常勤)

・メイ(ヤギ/19歳/常勤)

・テナ(アカギツネ/20歳/常勤)

・アーモンド(ホワイトタイガー/23歳/常勤)

・カエデ(キツネ/18歳/非常勤)

・エリーザ(メリノ種ヒツジ/30歳/非常勤)

・ブルボン(ゴールデンレトリーバー/26歳/非常勤)


備考

・ホースレーシング(俗に言う「競馬」)

-部門-

1.トラック競技(通常の「競馬」)

2.パワーヒル競技(俗に言う「ばんえい競馬」)

-G1レース【トラック競技】-

・ゴールデンカップ(1月末/21歳上/芝1600m)

・フェブラリーステークス(2月末/21歳上/ダート1600m)

・ピーチ杯(3月第1週/雌限21歳上/芝1800m)

・梅花賞(3月第3週/20歳上/芝1200m)

・鶯記念(3月第4週/20歳上/芝2000m)

・桜花賞(4月第3週/雌20歳限/芝1600m)

・皐月賞(4月第4週/20歳限/芝2000m)

・甲冑ステークス(5月第1週/雄限20歳上/芝3000m)

・クラシックチャンピオンマイル(5月第2週/20歳限/芝1600m)

・オークス(5月第3週/雌20歳限/芝2400m)

・ダービー(5月第4週/20歳限/芝2400m)

・ガールズマイル(6月第1週/雌限21歳上/芝1600m)

・アジサイスプリント(6月第2週/20歳上/芝1400m)

・ジューン記念(6月第3週/20歳上/芝1600m)

・スプリンググランプリ(6月第4週/20歳上【グランプリ】/芝2200m)

・ダートダービー(7月第1週/20歳限/ダート2000m)

・帝王賞(7月第1週/21歳上/ダート2000m)

・ノルテ記念(8月第3週/20歳上/芝2000m)

・スプリンターズステークス(9月末/20歳上/芝1200m)

・ダートクラシック(10月第1週/20歳限/ダート1600m )

・秋華賞(10月第2週/雌20歳限/芝2000m)

・菊花賞(10月第3週/20歳限/芝3000m)

・オータム賞(10月第4週/20歳上/芝2000m)

・クラシックファイナル(11月第1週/20歳限/ダート2400m)

・カエデ杯(11月第1週/雌限21歳上/芝2200m)

・スプリントチャンピオンシップ(11月第2週/20歳上/芝1400m)

・マイルチャンピオンシップ(11月第3週/20歳上/芝1600m)

・ワールドチャレンジカップ(11月第4週/20歳上/芝2400m)

・チャンピオンズカップ(12月第1週/20歳上/ダート1800m)

・ジュベナイルフィリーズ(12月第2週/雌19歳限/芝1600m)

・フューチュリティステークス(12月第3週/19歳限/芝1600m)

・ダートビギナーズ(12月第3週/19歳限/ダート1600m)

・ホープフルステークス(12月第4週/19歳限/芝2000m)

・イヤーファイナルグランプリ(12月第4週/20歳上【グランプリ】/芝2500m)


-偉業-

・クラシック三冠→皐月賞・ダービー・菊花賞全て1着


・ティアラ三冠→桜花賞・オークス・秋華賞全て1着


・ダート三冠→ダートダービー・ダートクラシック・クラシックファイナル全て1着


・オータム三冠→オータム賞・ワールドチャレンジカップ・イヤーファイナルグランプリを同年に全て1着


・マイル完全制覇→フューチュリティステークス・ゴールデンカップ・クラシックチャンピオンマイル・ジューン記念・マイルチャンピオンシップ全て1着


・マイル三冠→ゴールデンカップ・ジューン記念・マイルチャンピオンシップを同年に全て1着


・スプリント四冠→梅花賞・アジサイスプリント・スプリンターズステークス・スプリントチャンピオンシップスを同年に全て1着


・春秋ダート→フェブラリーステークス・チャンピオンズカップを同年に全て1着


・春秋グランプリ→スプリンググランプリ・イヤーファイナルグランプリを同年に全て1着

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