白い年賀はがき
この作品は「なろうラジオ大賞7」参加作品です(*^^)v
なので1000文字以内に詰めるのに苦労しました(^-^;
毎年この時期になるとオレの親父は『年賀状職人』となる。
今年はハロウィンの前日に郵便局へ買いに行ったらしい。
なぜ、それを覚えているかと言うと……ハロウィングッズの買い出しに100均へ出掛けたオレは、そこで筆ペンを買いに来たオヤジと出くわしたからだ。
つまり、オヤジの買って来た年賀はがきは何の印刷も無い最もオーソドックスなやつで……オヤジはその表の宛名面も裏の通信面もすべて手書きする。
オレは年賀状なんてオワコンだと思っている。
でもオヤジはオレとは真逆で……それこそ家に居る間は寸暇を惜しんで年賀はがきに午の絵を描いている。馬なんて描きづらそうなのにこれが結構上手かったりして……オレはオヤジの隠れた才能にビックリしたのだが……母さんは「昔はお世辞にも上手とは言えなかったのよ。字も癖字で読みづらいし……」なんて言う。
オレは思わず「ええっ?!」となった。
考えてみればオレはオヤジの字を知らない。
学校へ出す書類は母さんが書いているし、何か用事があっても母さんに言葉を投げ付けるだけ。メモを渡す所も見た事が無い。
『男尊女卑』なんて時代錯誤も甚だしいのだが、これが“昭和生まれ”の特性なのだろうか? それをただ受け止める母さんも同い年だし……
そういえば二人は同中だったと聞いたけど、いつから付き合い始めたんだろう?
オヤジは他県の全寮制の男子高だった筈だから中学の時から?
「ねえ、母さん! オヤジとは同中だったんでしょ その時からあんな風だったの?」
「さあ……どうだったのかな? お父さんの事はまだ知らなかったから」
「えっ?! 中学の時に付き合い始めたんじゃないの?」
「ちゃんとお付き合いを始めたのは大学生になってからよ。お父さんが東京へ戻って来てから」
「じゃあ、同窓会とかで知り合って?」
「それも違うわ。高2のお正月、お父さんから突然年賀状が届いたの」
「突然?」
「そう! 中1の時、同じクラスだった私から年賀状を貰ったからって。それ、お父さんの勘違いだと思うけど……悪いからお返事を出したの。そこから文通が始まって……紅茶のパックとか好きな曲を集めたカセットテープとか送りっこしたわ」
ニコニコしながら話してくれる母さんを見て“やはり彼女の居ない”オレは妙案を思い付いた。
「ねえ、小学校の時に仲良しだった陽菜ちゃんの住所って分かる?」
「分かるけどどうして?」
「オレ、オヤジから年賀はがきを1枚貰おうかと思って……」
おしまい
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