5 代替わりの衝撃
聖女の代替わりの日となりました。新たな聖女のお披露目のため、貴族や富裕層の平民、新聞記者などが王宮の大広間に詰め掛けています。
新たな聖女の人選については、ファドミーレ様からの神託により、大神官様に告げられております。知っているのは本人と大神官様以外に、現聖女であるわたくしと国王様のみ。
皆さま、あの方かこの方かと噂しておりますが……ふふふ。今回ばかりは、どなたの予想も当たらないと思いますわ。
大神官様も国王様も、最初は女神様の人選ミスであろうと大いに疑っておりましたが、ファドミーレ様から時代の流れに合わせたとのお告げを受け、散々渋りながらも認められました。そして、ようやく本日を迎えたわけです。
「えー……では、これより、新たな聖女……の、発表を行います」
わくわくと皆が見守る中、大広間の入り口から、その人物がやってきました。
健康的な小麦色の肌にまばゆい金髪。吸い込まれそうな濃紺の瞳。
そして……鍛え上げられた胸筋と上腕二頭筋。
ざわっと大広間がどよめきます。それもそのはず。そこに立っていたのは、辺境伯令息、リオネル・ナバーロ様でした。
護衛騎士? 聖女はどこだ? とキョロキョロする群衆を大神官様が制します。
「え~皆さま……ここにいらっしゃるリオネル・ナバーロ様こそ、ファドミーレ様が認定した次代の聖女であります……」
「いや、そいつ男だろ!!」
的確なツッコミですね、ラクンボ様。そう、リオネル様はれっきとした男性です。
ですが……。
「皆さまの仰りたいことは分かりますが、女神ファドミーレ様はこう告げられました。下界に男女同権の思想が広がっていることを考慮して、今回の聖女は男性にしたと。それに伴い、今後は聖女の呼称を聖人と改めるようにと」
「はぁぁぁぁぁっ!?」
大神官様のお言葉に、ラクンボ様が間抜け面を晒します。ぷぷっ、変な顔。
わたくしが笑うのをこらえていると、ラクンボ様がきっとこちらを睨み付けました。
「シャーミィ! お前の仕業だな!?」
「おかしな言いがかりをつけないでくださいな。聖女の認定は女神ファドミーレ様のみが行えること。わたくしに何ができると?」
「お前が女神を唆したんだろ!」
「嫌ですわ、人聞きの悪い」
ですが正解ですよ、ラクンボ様。わたくしがファドミーレ様を唆しました。
思いついたのは、イエンサ様とお茶会をした時。次代の聖女が男なら――ラクンボ様と結婚させられる不幸な聖女が出ないとひらめいたのです。
そのため、わたくしは祈りました。騎士団に女性の入隊が認められたことや、これまで女性が多かった治療師補佐役に男性が増えたことなどを切々と訴え、男女同権の名の下に次の聖女は男性にしてほしいと願ったのです。
聖女は次代を指名することはできませんが、ふわっとした要望であればファドミーレ様は聞き届けてくださいます。そこに賭けたのです。
やってやりましたわ!!




