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6話 期待

虎太郎side


早々に俺を置いて教室に向かう蓮見の背中と、手元にある押し付けられた丸井のラブレターを見てため息を吐く。

「渡しといてって言ったってコレ俺が渡して良いもんじゃないだろ」

ラブレターの宛名は灰羽くんへ。しか書かれてない。いつもの俺なら迷うことなくりん宛てだと思っただろうけど、蓮見の焦りようからすると俺宛てな気もしてきて、でも蓮見がいくら目立つ容姿で丸井にラブレターを返すとき周りに注目されちゃうからって理由があったとしても告白相手にラブレター預けるか?とも思う。ていうか俺宛てだったら良いなって思ってることもなかったりあったりする。

「あー分かんね」

ガシガシと頭をかいて自分の教室に向かってゆっくり歩き始める。じんわり耳と顔が熱い気がして窓にふと目を向けると耳と顔が赤くなった俺が映っていた。俺宛てだと良い、なんて浮つく気持ちと、勘違いすんな、俺宛てなワケないだろって気持ちが頭の中でぐちゃぐちゃして今にもパンクしそうだ。蓮見の言ってた俺にバレたのはやばいけどって言葉がもし渡す相手にバレたからやばいって意味なら俺宛てだよな。いやだとしても、なんてうんうんと唸っていたら周りがチラチラと俺を見てるのに気づいて慌ててすました顔を取り繕った。

「………俺宛てだったら良いとか期待してんのほんとキモイな」

でかいため息を吐いて廊下の端にしゃがみ込む。別に丸井が好きなワケじゃない…気にはなってるけど。クラス替えのときに黒板の前で俺に声をかけられて振り向いた丸井の顔がなんとなく可愛いなって思ってからは若干意識してた。でもどうせりんか俺ならりんを選ぶだろうし深入りすんのはやめようと思ってた。けど、1年の女子に執拗に絡まれるようになってからストレスが限界で誰でもいいから教室にいる女子に協力して貰おうと思って教室に入ったとき、教室には丸井がいて、心の奥底でちょっとラッキーなんて思いつつヤケクソで丸井に協力して貰うことにした。丸井は最初驚いた顔をしてたけどいざ作戦実行するってときにはノリノリだし俺のこと怖がらないし危なっかしいところもあって目が離せなかった。居心地が良くて作戦のあともたまに話すくらいにはなって、深入りすんのはやめようなんて思ってた理性がギリギリ好きになるのを抑えてるようなもんだった。抑えないとダメな時点でもう落ちてんのかもって思うけど。

「そんなタイミングでコレだもんな」

押し付けられたときに出来た小さな折れ目を伸ばしながらラブレターを見つめる。なんで俺とりんが双子なのを分かって名字しか書かねえんだよあのバカ。あんまり考えたくはないけどりん宛てだったとして丸井とりんってそんな深い交流あんのかな、いやなくてもりんはモテるから好きになることはあるよな。丸井がりんを好きだと言う想像が思ったよりもダメージがでかくて勝手に1人でショックを受ける。りんは小さいときから愛想が良くて近所のおばさんおじさんにも愛嬌を振りまくし、母親にでれでれな父親の影響で常にレディーファーストな紳士に育てられたからモテる要素は小さいときから出来上がってた。俺もレディーファーストは叩き込まれたけど何となく反抗したい気持ちがあってりんみたいないつも笑顔のジェントルマンにはならなかった。

「はー、俺も変に反抗してなかったらりんみたいになれてたんかな」

りんみたいになってる俺を想像してみるが思ってたより気持ち悪くて想像をかき消すように頭を振る。ていうか別にりん宛てって決まったワケじゃないし変に1人で考えんのやめよ。俺宛ての可能性だってなくはない…って思いたいし。ごちゃごちゃ考えるのをやめにして勢いよく立ち上がる。

「てか時間やばいな、本鈴鳴る」

蓮見に押し付けられて俺の悩みの種となった丸井のラブレターを折れないように俺のカバンに突っ込んで、すっかり人通りが無くなった廊下を走って教室に向かった。

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