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1話 灰羽凛太郎

高校1年生の春、何度体験しても慣れないこの感じ。

構築して来た人間関係すべてがリセットされるような感覚。

周りは誰も知らず、上手くやって行けるだろうかと言う不安。

ドキドキしながら教室に入り、周りをきょろきょろ見渡していると一際目を惹かれる顔の整った男の子と目が合う。目はくっきりした平行二重、髪はサイドからバックにかけて短く、全体で見るとマッシュっぽい。テレビでトレンドの髪型が取り上げられていたときにこんな髪型を見た気がする、ツーブロラフマッシュみたいなやつだ。纏う雰囲気は何となく柔らかく、身長は170後半はありそうだ。

「すっごいかっこいい男の子だね」

思っていたセリフが真後ろから聞こえて慌てて振り返る。

そこには先程のイケメンと並んだらきっと映えるだろう美人な女の子___蓮見果穂がいた。

「果穂!?うそ、私立行ったんじゃなかったの!?」

「ふふふ〜、驚かせようと思って!」

笑うとより一層華やかに見える女の子は幼稚園からの親友だ。同じ高校を受けたけど私立に行くと聞いていたのに。ビックリして呆然としていると、チラチラと視線を感じて視線の方に目をやる。やはり果穂は目を惹く存在らしく、胸下まで伸びる綺麗な黒髪、ハッキリとした目鼻立ち、165センチの身長のおかげかスタイルはスラッとしている。動物に例えるなら高級な猫のような果穂に男の子たちは頬を赤らめて見惚れていた。

すっごく可愛いもんな〜、分かる分かる。なんて考えながら腕を組み、後方彼氏面を気取る。

「何やってんの菫」

「んーん、誇らしいなーって思ってただけ!それより本当に果穂が居てくれて良かったあ」

腕を組むのをやめて果穂に抱きつく。果穂もまた嬉しそうに私の背中に手を回す。黒板にふと目をやると席の書かれた紙が貼り出されているのが見え、果穂と黒板を見に行く。

「お!やっぱり席近いね〜!」

私、丸井菫と、親友の蓮見果穂は名字が“まるい”と“はすみ”で、言葉にするのが難しいけど五十音の距離が良い感じなのだ。だから果穂と同じクラスになったとき席が近いことが小学生の頃から今まで良くあった。自分の席を交互に指さす果穂の指先を見て、果穂が廊下側から3列目の前から3番目、私は廊下側から2列目の前から2番目であることを確認する。

(あれ、果穂の前…私の隣の灰羽って人、もしかして!)

「あのかっこいい人、菫の隣だね」

勢いよく果穂を見ると果穂も私が何を言いたいのか分かっていたのか手を口に当ててコソッと私だけに聞こえるように、にまにましながらそう言った。

別に一目惚れした訳ではないがイケメンは心の栄養になるのだ。近くて損は無い。

「美人な親友とかっこいい男の子が間近で見れるなんて、私は幸せ者だね〜」

「ふふ、何それ」

自分の席に着くとクラスの視線、男の子は果穂に、女の子は灰羽という男の子に集まっているのがすぐに分かった。

私だって甘口で顔を審査してもらったら上の下くらいはある…と思うし、果穂の長く綺麗な髪に憧れてようやく鎖骨下まで伸びた髪だって、一応気を使ってオイルやら何やらしてるのに、身長も果穂よりに数センチ小さいくらいで別にスタイルも悪いわけではないと思う、でもまあ高級な猫のような果穂と比べるとドッグランを駆け回るポメラニアンが私だろう、実際にそう言われたこともある。そんなことを頭の中で考えながら不服そうに口を尖らせて前を向いて、早く先生来ないかな〜、なんて考えてるとずっとソワソワしながら座っていた前の席の男の子が立ち上がり果穂に声をかけていた。

(お!やるなあ、私も流れに乗って声かけちゃおっかな)

頬杖を着いていた私は腕を机の上で組んで横を向くと、灰羽くんと目がバッチリと合ってしまい驚いて肩が上がった。

それを面白そうに灰羽くんはクスクスと笑って私に体を向ける。

「驚かせてごめんね、声かけようと思ってたんだけどタイミング分からなくて」

「い、いえ!そんな、全然!」

良かった、なんて微笑む姿はさながら王子様のようだ。こんな男の子が存在するんだな、なんて感心しながらぼーっとしてると、灰羽くんが口を開く。

「俺、灰羽凛太郎。違うクラスに双子の弟がいるから名前で呼んでくれたら嬉しいな。席隣だし仲良くしてね」

にこにこして話す凛太郎くんに見惚れそうになりながら、私も自己紹介をする。

緊張して丸井菫です、以外に何を話したか覚えてないが初めてにしてはよく話せたと思う。もしかしてコミュ力高いのでは!?なんて浮かれそうになるが、凛太郎くんが圧倒的に話し上手で聞き上手なので勘違いしてはいけない。

担任になる先生が教室に入って来てからはあっという間に時間は過ぎて、クラスみんなの自己紹介から始まり色んな書類が配られ、先生のさようならの言葉で自由時間になった。

(ここだけ人口密度すごいな)

真横の凛太郎くんと、その凛太郎くんの後ろの席の果穂の周りに女の子と男の子が群がっていた。連絡先交換タイムである。私もある程度周りの子と交換して交流を深めたが凛太郎くんや果穂ほどLINEの友達の人数は増えないだろうな、ていうかコレが落ち着かないと帰れないな〜なんて大混雑している二人の周りを見ながら考えていると、私の後ろから声がした。

「てかさ、クラスライン作らね?そっから各自で追加した方が早いだろ!」

パッと声がした方を見ると茶髪で短く切られた髪の男の子が声を上げていた。そこからの流れは早かった。早々にクラスラインが作られ、凛太郎くんは弟が待ってるからと教室から抜け出し、果穂も私の腕を掴んで抜け出した。

クラスラインを作ろうと言った男の子は村上直哉くんと言うらしい。教室から脱出するときに村上くんの方を見ると、私に向かって親指を立ててウィンクをしてきたのでお調子者なんだろうなと思いつつ、助かったと言う意味を込めて私も親指を立ててウィンクした。

「人凄かったね、さすがのイケメンパワーだよ」

「いやいや、果穂に集まってた男の子も女の子もいたよ」

すっかり疲弊しきった顔の果穂にお疲れ〜と言いながら背中を軽く叩いた。2人で横に並んで、今日のことと明日から本格的に始まる高校生活の話をしながら家に向かって歩き出した。

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