驚愕!三人先輩部屋共有
伏線とかそういうの考えずにただくだらないコメディーにしたいです。
この世には、この地球には様々な生物が様々な暮らし方で日々を過ごしている。
蟻は毎日、女王蟻のために働き、猫は人間の家でゴロゴロと、ライオンは動物園の檻の中でだらだら、同じように今の人間社会では魔法生物が人間に隠れて生きている。
あるときは、心霊現象、ある時は未確認生物...我々人間も気づき始めている。魔法生物は...もうあなたのすぐ近くに!!
「いいかい?お前の役割は分かっているね?忘れてはならないよ。それからお前の先輩たちがすでに人間世界に多く溶け込んでいる。うまいこと助けてもらうんだよ」
こうして俺は旅立った。
歩いたり、飛んだり、泳いだり...ようやく目的地となる街へと到着した。
「ええっと、、まずは、、、」
この地域にすでに溶け込んでいる先輩に挨拶をする。俺たちのような少数派は周りとの関係を深めておくことが生きるうえで重要になるのだと昔の偉い人達からの教えだ。
そこから、あらかじめ契約していた不動産へ行き、家に借りるところまでが第1段階となる。
そんなふうに頭の中でシュミレーションをしていると最初の目的地である、先輩たちの家へと到着した。
初めて出会う自分とは別の生物...
「あのー、すいませーん、、この社会に先に溶け込んでいらっしゃる先輩方に挨拶をしに来たんですけど!」
そういうとひとりでにドアが開く。恐る恐る中へと入るとそこには3人の先輩方がいた。
「いや、だからさ、俺はゲームがしたいの!テレビなんて後からサブスクで見れるじゃんかよ」
「なんで、いつでもいいゲームを今やって後からサブスクで私が見なきゃいけないのよ!それに最近はネタバレとか多いの!いいからあんたは散歩にでも行ってきなさいよ!」
「ああ!!いま、オオカミ人間を犬扱いしたなーー!くっそ!お前だって雪女のくせに熱くなってんじゃないぞ!!なあ、お前もなんか言ってやれよ!!」
「.........客来てるよ」
その一言でようやく視点がこちらに向いた。
「...え?誰?宗教?新聞?」
「あっ!分かった!隣に引っ越してきたとかじゃない?だとしたら第一印象最悪ね。それとも、ここから巻き返せるかしら?」
どうやら、なにも聞かされてないらしい。それに聞いてくれる感じでもないようなので自己紹介した。
「ええっと、この度、この地域に住むことになった吸血鬼のデューク=レガートって言います。よろしくどうぞ」
そういうと先ほどまでのほんわかとした空気が突然しゃきっとした。吸血鬼というのはいわゆる魔法生物、妖怪などと呼ばれる種類の中でもかなり有名な部類。知名度がそのまま力となり、権力となる。故にちょっとしたお偉いさんみたいな扱いをされがちなのだ。
「吸血鬼...ああ!!そういえば、ちょっと前になんか手紙が来てたわ!近々エリートの後輩よこすって!あんたのことね。それで、あいさつにってことね、なるほどなるほど、こりゃ失礼なところをお見せしました」
「...俺、その手紙...知らない...」
「諦めろ、こいつの自分が中身読んだら満足して、捨てる癖は一生治らん」
このよくしゃべる女の人が雪女。そして、この人とテレビの争いをしている人がオオカミ人間。そして、さきほどからほぼしゃべらないガタイのいいひとがゴーレム。そう自己紹介してくれた。
しかし、俺は1番先輩のゴーレムさんのお宅にお邪魔したはずなのだが後の2人はなぜ、いるのだろう?今はちょうど夜の12時。遊びに来たという感じでも、お泊りというわけでもどうやらないようだ。
「そうなの。私たち3人は一緒に暮らしてるの。シェアハウスってやつね。お互いの欠点を補いあってともに力を合わせて生活する。これが私たち魔法生物の基本その1ってわけよ!」
「力を合わせてって掃除も料理も何もかもゴレに任せっきりでなーんにもしてないじゃんよ」
「速攻で高級レストラン入って所持金0で泣きついたのはどこの馬鹿野郎だっけねーー!!」
ざっと見た感じ、一人暮らしするにはちょっと持て余すかなぐらいのスペースしかないがこの三人はうまいこと生活しているらしい。しかし、別々の魔法生物同士が仲良くしているところなど初めて見た。
先ほどの説明の通り、魔法生物は多くの人間に認識されることで力を手にする。要するに様々な魔法生物は様々な手段で人間に恐れられ、あがめられ、可愛がられる。そうしなくてはその種族そのものが弱体化してしまうからだ。つまり、他の種族は商売敵であり、基本的に仲が悪い。
「いるんですね、実際に協力し合う魔法生物」
「まっそうね、あと商売敵っていう殺伐とした関係は別にこの場でも変わらないわ。私たちは常に残りの二人を出し抜いてやろうと日々考えているわ。そう!あくまで一時的な協定であり、心の中では常に激しい競争を繰り広げているのよ!」
決め台詞みたいにビシッと決めた横を先ほどから作っていた夜食を持ったゴーレムが通る。すかさず、食いつき、そのまましゃべらなくなってしまった。
心の中では激しい競争...?
「それじゃあ、また、何かあったら相談とかしに来ますのでその時はよろしくお願いします!」
そう言い残して、家を後にした。そうか...そういう生活をしている人たちもいるんだ...
そのままの足取りで不動産屋へ向かう。この不動産屋は代々、裏で魔法生物たちに人間社会で生きるための家を紹介してくれている。ゆえに、こんな本来は空いていないような時間帯でも営業している。
「すいませーん、今日来ることになってたものですけどー」
そういうと、今、手が離せないから!とだけ言われ、部屋の合鍵と地図だけ渡されてしまった。仕方ないので地図を見ながら家へと歩き出す。
まずは、身分証を偽造しなくてはならない。吸血鬼なので見た目はある程度だが、操作ができる。おそらく中学生から大学生の範囲なら違和感なく溶け込むことができるだろう。しかし、吸血鬼の知名度を増やすという目的がある。そうなると、活動しやすさでいえば、大学生か?いや、警戒心が弱い中学生がベストか?
そんなことを考えながら歩いていたため、目の前に来るまで自分が来た道を戻っていることに全く気が付かなかった。
「あれ?さっきの家だ...」
部屋番号は106号室。部屋の前まで来た。先ほど訪問した家は105号。どうやら俺の新居は先ほどの先輩たちの隣の部屋らしい。そういえば、さっき家に入ったとき、隣の部屋の人と間違えられていた。ということはそれは間違いではなったということらしい。
家に入り、荷物を下ろした。思いっきり隣の部屋の声が聞こえる。
どうやら俺の人間社会生活最初の問題は騒音問題らしい。