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日常魔王  作者: 熊ノ翁
34/36

魔王様、魔イッター始めるってよ(その3)

とんこつコック

『史上最強だった親父のコネで魔王になっただけのザコ脳筋が、偉そうに指図すんなや』

❤️3万


ふくよかナース

『このバカ魔王、前にウチの病院来た事あったけど本当に迷惑だった。うるさいし下品だし単純に見てて不快。女性に絶対モテないタイプだね』

❤️1.5万


黒ごまエルフ

『発言の端々から知能の無さを感じる。7の段で掛け算つっかえてそう』

❤️2.7万


ウクレレリッチー

『え、これ本当に魔王様? マジで? ウッハwww案の定クソリプだらけwwwどんだけ嫌われてんだってのwwwwww』

❤️13万


 魔イッターの通知欄を、震える指で魔王が操作しスライドさせる。

 画面には、先ほど魔王が投稿したコメントに山のようなクソリプが届いていた。


 額に血管を浮かび上がらせながら、魔王が食い入るように画面を見つめる。

 怒りにわななく指でポチポチと文字を打ち込み、フシューと口の端から沸騰したヤカンのような吐息を吹き出した。


魔王様

『魔界一強い俺様を目の前にしたら何も言えなくなるチキン共が、跳ねっ返りやがって。強い奴に弱い奴が従うのは魔族のルールだろが。貴様らザコカス共は、最強魔王な俺様の言う事を大人しく聞いて、バカみたいに首を縦に振ってりゃ良いんだよ』

❤️1


 打ち込んだ自分の投稿に自分自身でいいねを押し、魔王がほくそ笑む。


「そうだ。このバカどもが何と言おうと、俺は魔界一武闘会で優勝して魔王になった事に変わりは無いんだ。弱い奴が何を吠えようが、気にする必要なんて、ね、ねーし。き、効かねーし、こんなビビり共の悪口なんか」


 ポーン、と時報のような音がス魔ホから響いた。

 画面を見ると、先ほど魔王が行った投稿に、このような書き込みが追加されている。


・閲覧したユーザーが他のユーザーにとって役に立つと思う背景情報を追加しました。


 魔王が魔界において最強である、という評価に対しては、以下のような反論が存在します。


1、魔界一武闘会の試合内容

 次世代の魔族の王を決定する為に行われた魔界一武闘会において、確かに魔王は優勝しました。

 しかし決勝戦の試合内容は、相手である死神リッチー(現、魔王軍メイド長)が終始有利な試合展開を進めており、実力には差が見られる物でした。

 魔王が勝った要因はラッキーパンチが偶然当たり、体勢崩してコケた死神が場外に落ちたというもので、結果はともかく内容的には魔王の最強を裏付ける物ではありません。


2、ダークエルフからの呪い

 魔王は、ダークエルフの王ザンフラバから娘ラウレティア殺害に関与した件を責められ、致命の呪いを受けて殺されかけた事があります。

 また、そのかけられた呪いの症状である死ね、バカ、アホ、童貞、といった文言が全身に浮き上がっている様子は、地帝国ダグサの侵攻直前の各社新聞記事(黄泉売新聞、惨刑新聞、浅卑新聞、魔異日新聞等)の写真や本人へのインタビューからも確認できます。

 

3、全裸勇者からの逃亡

 とある無名な全裸の勇者が城に攻め込んできた際、戦わずに対応を参謀に丸投げしたという報告が、当時の魔王城勤務者及び当代の参謀本人より業務日誌になされています。


4、天魔大戦時の戦果

 天魔大戦時の勇者キルカウントでは、第一位が先代魔王で2万6千人、次いで2位の死神リッチーが1千2百人。対して魔王は4人だけです。また、異世界より転生してきたシモ・ヘイヘという勇者から、魔銃モシン・ナガンによって全身を蜂の巣になるまで撃ち抜かれ、逆十字病院に緊急搬送された記録が当時のカルテに残っています」


 これらの点から、魔王が全魔族の中で最も強い存在であるかどうかは、単純な魔界一武闘会の結果だけでなく、全般的視野で見て慎重に判断する必要があります。

 役に立ちましたか?


「な、な、な、なんじゃあこりゃあ!? 役に立ちましたか? じゃねえ喧嘩売ってんのかオイ!?」

 

 勝手に自分の投稿に追記された事に腹を立て、魔王がス魔ホを床に叩きつけようと握った手を振り上げる。


「魔王様。ス魔ホ壊した所で現状は何も変わりませんのでおやめ下さい。どうせまた壊したら、私に新しいのねだるのでしょうし」


 今にもス魔ホを叩きつけようとしている魔王を、白手袋を嵌めた手で参謀が止める。


「ぬ、くく……」


 悔しげに魔王がうめく。

 その苛立ちをぶつけるが如く魔王が怒鳴った。


「おい参謀! 何なんだこの書き込み! 俺の投稿に、勝手に書き加えられやがったぞ! どういうこった!」


「それはコミュニティノートという機能ですね。投稿者がデマや誇張を言っていると多数の人から判断された場合、このように補足書きを追記できる機能になります」

 

「ふっざけんな! 誰が望むんだこんな機能! ハタ迷惑な!」


 腰掛けていた玉座から立ち上がった魔王が参謀ににじり寄り胸ぐらを掴み上げる。


「いや、これかなり好評な機能なんですよねぇ」


 魔王のぶっとい腕で捕まれ、足が浮くほど持ち上げられた参謀がいつもの無表情で告げた。


魔王様、魔イッター始めるってよ(その3)……END

最後までお読み頂き有難うございます。


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よろしくお願いします!

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― 新着の感想 ―
エピソード34、拝読しました。 不憫すぎるよ。魔王様…… コミニティノートまで…… 俺たちの魔王様は、ものすごく強いはずなんだ……
[良い点] さあ、今回は! 魔イッターから衝撃の事実か暴かれるのか!? 言われてみれば…魔王様って弱いの…か? いや、弱くはないだろうけど…魔界最強が疑わしいことが明らかに…まあ、勇者の件はしょーが…
[良い点] SNSっぽい感じが再現されていて面白いです。 [気になる点] 魔王様が全然実力行使しない点。当然一人ずつ半殺しにして回ると思っていたのですが。 [一言] よく考えてみるとピザが顔に当たっ…
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