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日常魔王  作者: 熊ノ翁
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魔王様の少子化対策(その3)

「少子化の原因は女? それはどういう事です?」


 奴隷として小間使いをしている緑の肌のゴブリンからお茶を受け取り、参謀が首をかしげる。


「はい。元々、我々ホブゴブリン達は政治に携わる事の出来る市民権を男のみが有していました。それを男も女も同じ権利を持つべきだという社会的風潮が生まれ、女どもにも政治や社会に参加する市民権を寛大にも我々は渡したのですが、それがそもそもの間違いだったのです!」


 ダン、と机を叩きゴブリッヒ上院議員が忌々しげに、対岸に座るホブゴブリン達を指差す。

 同じような風貌に同じようなスーツ姿のため、はた目には見分けがつかないが恐らくあちら側に座っているのが女性議員達なのだろう。

 歯を折れ砕かんばかりに食いしばり、目を血走らせてゴブリッヒ議員を睨んでいる。


「女どもは、金と権力を手にした途端に家庭を顧みなくなりました! また、富裕層の男以外をゴミクズのように見下し、ただ自分の手にした財産を浪費し、口を開けばやれもっと割のいい仕事と給料をよこせだの不平や不満を吐くだけで、働く事すら満足にしません! ここは一つ、税を納める先である魔王国本国から身の程知らずのメスどもに裁きを与えて頂きたい!」


 気炎を上げるゴブリッヒ議員に、奴隷のゴブリンがトレイに載せてお茶を運ぶ。

 だが、ホブゴブリンの上院議員はいら立ち紛れに手渡されたお茶を払いのけ、トレイごとひっくり返した。

 尻もちをつくゴブリンに別のゴブリンが駆け寄り、心配そうに肩を貸すのを参謀がチラリと一瞥した。


 好き放題に女への不満をぶちまけるゴブリッヒ議員に、たまりかねて対岸の女性議員の一人が立ち上がる。

 机の上に置かれたネームプレートにはゴブリー・ホブラナス上院議員と書かれていた。


「ふざっけんな! さっきから黙って聞いてりゃあ適当な事を言いやがって! こっちだって番う相手を選ぶ権利はあるわ! 元はと言えばお前らオス共が……」


「その権利をくれてやったのは我々だろうが! そしたら途端に好き放題始めてこのザマだ! 恥ずかしいとは思わんのか!」


 そうだそうだ! ふざけんな! といったヤジや罵声が飛び交い、他の議員たちも怒りにかられ次々と立ち上がる。


「はいはい、静粛に静粛に。皆さんどちらも落ち着いて。たかが中級魔族のホブゴブリンの分際で、議長の魔王様や私の許可なく言い合いを始めないでください。次勝手に発言したら、ぶっ殺しちゃいますよ」


 今にもこの場でつかみ合いの大乱闘を始めそうな空気を、参謀が手を叩いて黙らせた。


「も、申し訳ありません」


 ゴブリッヒ上院議員が肩をビクリと震わせ一礼し、他の議員たちも大人しく座り始める。


「ですが……」


 皆が席に座る中、ゴブリッヒ上院議員がうつむきながら口を開く。


「今の男たちは本当にみじめな物です。懸命に働いて家に帰ってもやれ育児が家事がと文句を言われ、娘にはお父さんの後はお風呂入りたくないと言われ、嫁には稼ぎが悪いと罵られ、誰からも感謝をされない。それが今のホブゴブリンの幸せな家庭の姿なのです。ただただ誰かと比べられ、蔑まれる。そんな立場になるために我々は女に市民権を手渡したわけではありません! わかりますか、この苦しみが!」


 くわっと目を見開き、制止した参謀をゴブリッヒ上院議員がにらみつける。

 本心だったのだろう。その目からは涙があふれていた。


「あなたの苦悩や思想が正当な物だろうとそうでなかろうと、私たちの制止を無視して許可なく発言するのは死罪ですよ。女に立場だ義務だを説くのなら、その程度の道理と身の程は弁えていたかと思っていたのですが。残念ですね」


 白手袋を嵌めた手を参謀がかざす。

 ゴブリッヒ上院議員の足元に精緻な魔導式の書き込まれた魔法陣が現れ、赤く不気味に輝きだした。

 抗弁した時に既に覚悟を決めていたのか、ホブゴブリンの議員はゆっくりと目を閉じた。


「まあ待て、参謀」


 一瞬後には吹き上がる業火に骨も残さず燃え尽きる所だったホブゴブリンの命を救ったのは、魔王だった。


「ゴブなんとか議員。お前の国を憂う熱い気持ち、この魔王はよー--くわかった! つらいよな、苦しいよな、女共に相手にされないのは! あいつらホント、ちょっとイケメンと見るとキャーキャー言ってすり寄るくせに、俺が声かけても聞こえないふりするかツバ吐くからな! 許さねぇぞあのアマども! ちょっとマジで一度身の程を思い知らせてやった方が良い!」


「あの、魔王様? 自分がモテない恨みで政治的判断を下しちゃうのは流石にマズいかと思うのですが……」


「よー-し! 決定! ホブゴブリンのメスども! この魔王が命令する! お前ら今日から市民権……というか全部の権利はく奪な! 犬や奴隷のゴブリン共と一緒に男様に尻振って媚びろ!」


 力で魔族を統べる王から直々に命が下され、ゴブリッヒ達オスのホブゴブリン達が歓声を上げた。

 


魔王様の少子化対策(その3)……END


よし、期限守れたぞ!

次回更新予定が10月27日金曜日だから、これで24時間の猶予が出来たな!

ちゃんと更新できなきゃTwitterともどもアカウント削除します!

なぁに、書きゃあ良いんだよ書きゃあガハハ!


大丈夫大丈夫!

大丈夫、だよね?


んでは以下、いつもの。


最後までお読み頂き有難うございます。




もしよろしければ、こちら↓↓↓の広告下にございます「☆☆☆☆☆」欄にて作品への応援を頂けますと、今後の励みとなります。




よろしくお願いします!

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― 新着の感想 ―
エピソード29拝読しました。 これぞ、魔王様のゴリ押しジャッチメント。オスたちの支持率がうなぎ上り。参謀さん……お察しします。
[一言] >「あの、魔王様? 自分がモテない恨みで政治的判断を下しちゃうのは流石にマズいかと思うのですが……」 魔王様ェ… さすがにンなことやってると、余計モテ無くなるよーな…。
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