一章(一年目四月の四)
えーと、メモを落としました。あの、情報の早いメモです。あれ何だったんだろう?
まあいいや。今回の反省をふまえて、現状を整理しようかな。「あの物語」と違うのは、ダルク釈放、ジュリー様謹慎、乱闘騒ぎ、封印のほころびの4つ、そして私。前の4つの違いはなぜ生まれたのか?私が脱獄ダルクを見に行ったから?「あの物語」に書かれていた、蝶のはばたきが竜巻を発生させるようなこと、が起きたのかな。うん。そうだったらどーしようもない。もっと原作通りに行動しないと。
あ!あの王子が水をかぶったのって、もしや、あの場にはいなかったけど主人公に同調するためなの!?かっこいい!そしてジュリー様が主人公に水をかけたのが、まわりまわって主人公らの仲の良さを示すことに繋がっている。恐るべし、ジュリー様。
時間があれば、今日はアンティークマーケットに行きたい気分なのですが、それはお預け、またの機会に。サロン…ではなく、ジュリー様の家に招待されたので、行きます。おしゃれもばっちり。ただし、あくまでジュリー様を立てるものでなくては。といっても、ジュリー様ご本人が非常に華麗なので、ね。
取り巻きB、Cとジュリー様の邸宅の前で合流して、メイドに案内される。ジュリー様のお世話、私もしてみたいです。
ジュリー様と4人で音楽や絵画について語り合っていると、ケーキスタンドが用意されて、たっぷり入った紅茶と共に食事。会話もいい感じ。大抵皆がジュリー様に話しかけるので、3人とも敬語しか話せない人みたいになってる。いや、Bは実際にそうかもだけれども。
「ジュリー様、第一王子はお美しい方ですよね」
取り巻きBが、人間関係に関する話を振った。お?
「ええ、そうですわね。母親に似たと言っていましたわ」
「ジュリー様は、どのような見た目の人に美しさを感じますか?」
B、ぐいぐいいくね〜。普段と変わらない敬語も、心なしか早口だ。幼いようで、こういう話題が好きなんだよね。
「そうですわね、美しさですと、一見した様子はどうであれ、何か心の中に芯のある方は美しいと思いますわ」
「見た目じゃなくて中身なのですね…」
取り巻きCはそう言ってケーキを一口。そして、美味しそうに微笑んだ。いや、今の言葉、ジュリー様に言ったの?それともケーキに対して(そんなことないよね)?
「芯ですか、学院の貴族の中にもまだ若い者は多いですからね」
「文学に関心を持てば、彼らの心もきっと育ちますわね」
私の発言に対し、ジュリー様も同意して下さった。いや、私、中身はともかく喋るとこんな感じだし、見た目も落ち着いてるよ?まあ、ちょっと性格悪そうで、ジュリー様より地味な感じです。
「見た目だったら、第一王子がかっこいいですよね」
B、がんばるなぁ。
言わずもがなな第一王子、秀才のメガネ、ワイルドなダルク、などなど、学院には仕組まれたかのように男子が揃っている、キャラ被りしていない。
「なんなんですの…先ほどから殿方の話ばかりですが、私は、皆様のことも大好きですわ!」
え、ちょっジュリー様!
ああ、幸せだなぁ。こんな時間が続くといいなぁ〜。