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一章(一年目四月の三)

あれ?人のいない教室に落ちているメモを発見した。走り書きで読みにくいが、ちらっと見る限り見過ごせない単語が含まれていたため、読解を試みよう!


乱闘騒ぎ 噴水前 第一王子とダルク


ふむふむ。え?もしや今おふたりが喧嘩するシーンなの!?それは一年後では?あ、そうか釈放が何故か早まったから…。覚えておいでだろうか。ダルクは、よくわからない罪で捕らえられていたが、無理やり脱獄しようとしてワインを割った青年の名である。いや、この省略の仕方じゃ意味わかんないな。


第一王子は、今、平民(「あの物語」の主人公)が最も仲の良い、ハンサムな青年である。華奢で体力はないが、魔法に秀で、また顔も良い。女装したら似合いそうな大人っぽい顔。はい。この調子だと、平民は後で苦しむでしょうね。


それはともかくとして、水に濡れる第一王子とダルクは間違いなく美しいので、行きましょうね。もう、ダッシュしています。何かメモの裏にも書いてありそうだったが、そんなことはいいから移動です。


学校前の噴水に人だかりが!始まっちゃった?ちょーっと通して下さいな。


「俺の家を愚弄するか!王子とはいえ、許せねぇな」

「私は真実を述べたまでだ。だが、喧嘩をお望みならば、いいだろう。これだけギャラリーもいることだ、豪勢にいこうじゃないか」


あーっ!最初の方聞き逃した!釈放の噂をもっと気に留めておけば…いや、それにしても早い。釈放からのこの乱闘が早すぎる。いや、今は目の前のことに気を払おう。王子は火の輪を二つ展開。一つ一つは細いが、それは確かな熱量を秘めている。風魔法で散らせるかな?王子は複雑な魔法陣を展開したものの、放つ気配はない。あえて後手にってことか。


ダルクの周りに風が発生する。しかし、彼が取り出した杖により、それも収まった。あの杖、ネタばらしすると魔力を吸い上げやすいんだよね。ギャラリーのうち何人が気づけたか。血気盛んなダルクは第一王子相手でも躊躇わない。簡単な詠唱で迷わず単純な風おこしの魔法を放つ。


−−−壱の風・起動−−−


王子は輪の一つでそれを消滅させ、


「大した威力だな」

「そうやすやすと防がれちゃぁ、嫌味にしか聞こえないな!なら、これはどうだ!」


噴水の水を風魔法で王子に飛ばすダルク。目つぶしを狙う。しかし、王子はそれをやすやすと蒸発させきった。何を隠そうこの王子、校内では、短時間の戦闘に限りだが火属性最強の一角なのだ。


風魔法を幾度か放ったダルクが、


「このままじゃラチがあかない、な!」


言葉の終わりと同じタイミングで大きく吹き上がった噴水の水流を、全力で曲げる。自身にかかるのも構わずに。それに対して王子は口元で笑い、自分の魔法を打ち消した。びしょ濡れになるふたり。逃げ惑うギャラリー。私?なけなしの風魔力で防御しました。靴は除く。


「なぜ避けなかった」

「なに、今日は天気も良い。君と共にびしょびしょになるのも、学生らしくて悪くないと思ったまでさ」

「ああ、そうかよ!」


しかし、ダルクの次撃は放たれなかった。彼の杖を王子が風魔法で奪ったんだなぁ〜。流石王子、だがそれは悪手だよ。ダルクの魔力が暴走気味に。そう、彼は杖がなくても魔法を発現させられる。


「王子をお守りしろ!」


王子の友人やら護衛やらがダルクに向かっていき、風で弾き飛ばされたりなんとか組みつきをしたり。これこそ、まごう事無き乱闘騒ぎ。学院の醍醐味…いや、王子も風で飛ばされて噴水に片足突っ込んでるし、水飛び散りまくりだし、散々ですね。


私は少し遠くで再封印を行いながら、それを見ていた。何の封印か?今回の乱闘で、地面の一部が壊れて、危険な地下への道が開いちゃうっていうのが「あの物語」の展開なんだよね。この地下まで解放されると、本から相当外れちゃうはず。時系列的に。ただ、私の封印ではもって一ヶ月とかかな、うーむ。


後日、王子とダルクが行動を共にしている姿が見られるようになった。ジュリー様の感想は、「まったく適当な方々ですこと」だった。あと、ジュリー様、他になにか変なことをおっしゃっていたが、何だったっけ。

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