一章(一年目四月の二)
基礎魔法学Ⅰは、楽しい。
ジュリー様の手で綴られる美しい魔法式。発動するのは、小規模ながらもキラキラしてる風と水の奔流。ああ、基礎魔法学。基礎魔法学は世界の真理を紐解くための第一歩である。
「ああ、ジュリー様素敵です…」
「なんて澄んだ水なの…」
取り巻きB、Cもうっとりしている。ああ、彼女らは私以外のジュリー様の取り巻き。3人揃ってモブ取り巻きだ。私は、取り巻きAの座を他の二人に明け渡す気は無い。だって今こんなこと言ってるC、表面上取り繕ってるけど多分内心は「おいしいお水のみたい」だからね。
「あの物語」でも、私が一番(憎まれ役として)出番あったし、ナンバーワン取り巻きは私だよね。
基礎魔法学で、ジュリー様はズルをしている。その説明をするには、まずこの世界の魔法について説明する必要がある。
五大属性とされるのは雷・風・火・水・木だ。その他にも希少属性があって…など詳しい話は省く。ジュリー様はホントは5つの中で一属性しか使えないが、それを補っているのがあの似合ってるイヤリング。
あのイヤリングは実は5つの魔道具が一つになったもので、魔法の属性を変換できる。つまり、ジュリー様は五大属性全てが使えるフリをしてるってこと。これは物語内の取り巻きは誰も知らなかったことで、学院でも教師と一部の人(天才)しか知らない。教師はジュリー様の家に気を使って何も言えないし、天才は変人ばかりで世間との交流が薄いので、学院では最後の方まで明らかにならない事実である。
ジュリー様本来の属性に関しても色々あるのだが、それに関してはまた機会があれば。
私?主に無属性、そしてちょっと風だよ!なんてモブ感。でも、座学はどうとでもなるからいいもんね。そして今日は座学ではないけれど、実は私、もう課題終わってます。
「…難しいです…どうして発動しないのですか」
取り巻きBは解けてないらしい。Bは周りの子より幼い見た目なので、誰にでもな敬語がすっごいしっくりくる。まあ、家格を鼻にかけることが多い子であったりもするのだが。間違えやすいのは式の順番とかかな?よっぽど凝ったものでなければ、まだ入学してすぐなのもありそれほど難しくはないはず、教えるべき?
「私が、教えて差し上げますわ!」
えっ!ああそっか〜、取り巻きは分からなかったらジュリー様に教えてもらえるのか〜。
えええ。気がつかなかったよ!私って実は頭悪いのでは?くっ、今からでも、この書き上げた式をこの手で紙ごと引き裂いてしまおうか。いいな〜、自信満々で教えてくれるジュリー様いいな〜。私も今後は解けないふりをするべきか。今日寝る前に考えよう。
まあでもね、この教えているジュリー様を正面から見れるのは、教えてもらっている取り巻きBではなくこの私なのだよ!これもまた、良い。あ、ジュリー様のお顔が上がって、え私?
「リリー、課題に集中なさい」
「え、あいや、はい」
びっくりした!呆れたように私を注意するジュリー様も、いい。落ち着く。毎日言って欲しい。課題はもうないので、空白の紙にジュリー様と書く。ジュリー様ジュリー様ジュリー様…。